日本公認会計士協会は、監査意見を形成するに足る合理的な基礎を得られなかったにもかかわらず監査意見を表明したとして、不動産販売業の会社の監査人であった公認会計士に対する懲戒処分(会員としての権利停止3ヶ月)を公表しました(2008年5月21日付)。
この監査人は、2005年(平成17年)5月期の監査において、(1)重要な海外子会社について最新の財務諸表を入手せず、子会社株式の評価の検討を行っていなかった、(2)会社の社長に対する債権の回収可能性の検討が不十分であった(貸倒引当金を50%積むだけで放置)、(3)バブル崩壊後大幅な債務超過状態が継続していたにもかかわらず、ゴーイングコンサーンに関する検討を行わず無限定適法意見を表明していたなどとされています。
また、この会社は公認会計士法上の大会社等に該当していたのに、公認会計士法に違反して、この会計士単独で監査していたことも問題とされています。
非上場会社だからといって手抜きは許さないという当然の処分なのでしょう。
補足:
新聞報道によれば、この会社は住専の大口借り手だった「麻布建物」のようです。同社は、2007年6月に会社更生法の適用を申請し、同年8月に更生手続きの開始決定を受けています。しかし、住専問題は10年以上前の事件です。その当事者である会社が法的整理もなされずその後10年以上も普通の会社のように存続できたのはなぜか、昨年になって突然法的整理に踏み切ったのはなぜか、それまで会計士が漫然と関与を続けていたのはなぜか・・・、そういった点も知りたいところです。
麻布建物が更生手続き
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