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テレビ局前社長の退任慰労金減額めぐる訴訟、訴えられた局側は「民法・会社法の解釈に誤り」と主張(弁護士JPより)

テレビ局前社長の退任慰労金減額めぐる訴訟、訴えられた局側は「民法・会社法の解釈に誤り」と主張

(やや古い記事ですが)宮崎の地方テレビ局の前社長が、退職慰労金を不当に減額されたといって、会社を訴えている裁判の記事。

一審と二審では、前社長が勝訴しましたが、最高裁で覆る可能性があるそうです。

「テレビ宮崎(UMK)の前社長の渡邊道徳氏が退任慰労金を不当に減額されたとして、UMK側に全額支払いを求めた訴訟で、上告審の口頭弁論が13日、最高裁で開かれた。

渡邊氏は社長在任中、社内規定を超える宿泊費を会社に支出させていたことが発覚。税務当局により超過分を役員報酬と認定されると、負担すべき源泉徴収額をUMKに転嫁し、さらには取締役会に諮ることなく自身の報酬額を増額することで、社内規制に反した宿泊費の支給を実質的に永続化していた。

このことを受け、UMK側は渡邊氏の退職慰労金を3億7720万円から5700万円に減額。これに対し、渡邊氏側は減額を不服とし、UMK側を提訴し、減額分と弁護士費用の支払いを求めていた。」

「2021年の宮崎地裁判決では渡邊氏側が全面勝訴。UMK側に2億350万円の支払いを命じており、2022年の福岡高裁宮崎支部判決でも一審判決をほぼそのまま引用する形で、UMK側の控訴を棄却していた。

しかし、今年4月、最高裁が上告受理を決定。上告審の口頭弁論は二審の判決を変更する際に必要な手続きであり、今回の口頭弁論を踏まえ、最高裁判決でこれまでの判断が覆る可能性がある。」

記事では、会社側の弁護士による解説をまとめています。

そもそも、地方のテレビ局で、3億円超の退職慰労金を支払うことになっていたというのが、少し驚きです。地方テレビ局がそんなに儲かっているのでしょうか(偏見?)。

その後、前社長敗訴の最高裁判決が出たそうです。

テレビ宮崎の退職慰労金、85%減らされた前社長が逆転敗訴 最高裁(朝日)

一、二審ともに減額は違法だったと判断したが、第一小法廷は判決で、内規を踏まえ「取締役会は減額に広い裁量がある」と指摘。第三者委員会の報告なども踏まえた減額判断は合理的な根拠があり、取締役会に裁量権の逸脱はなかったと結論づけた。」

退任慰労金の減額、取締役会に広い裁量権…最高裁でテレビ宮崎の前社長が逆転敗訴(読売)

「同小法廷は、慰労金の額について「取締役会は、特に重大な損害を与えたという行為の内容や性質、会社が受けた影響などを総合考慮し、判断するべきだ」と指摘。同社の内規に減額の範囲や限度についての定めがないことから、「取締役会には広い裁量権がある」と判断した。

取締役会が、多大な損害を与えたとする調査委の報告書を踏まえた上で、前社長を刑事告訴せずに大幅減額をするに至った経緯などを挙げ、「相当程度、実質的な審議が行われており、取締役会の判断は不合理ではなく、裁量の逸脱・乱用はない」と結論づけた。

明治大の弥永真生教授(会社法)は「テレビ宮崎の内規についての個別判断だが、判決には、一般的に慰労金減額には取締役会に広い裁量権が与えられているという最高裁の価値判断が表れている」と話した。」

今回の判決は、退職慰労金減額に関する取締役会の権限についてのもののようですが、そもそも、取締役会や株主総会の決議を経ていないのに、内規だけで、前社長に慰労金を受け取る権利があるというのが前提のようなのが、よく理解できないところです(承認されていないので最初から権利はないのでは)。

本件の最高裁判例

判決文では、「上告人会社の株主総会が退任取締役の退職慰労金について本件内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議をした場合、取締役会は、退任取締役が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるか否か、これに当たる場合に減額をした結果として退職慰労金の額をいくらにするかの点について判断する必要があるところ」とあるので、内規に従って退職慰労金を決定することは、株主総会は承認しているのでしょう。

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