会計士協会が、あらた監査法人による東芝の監査に対する調査を継続しているという記事。協会会長が記者会見でそのように述べたのだそうです。
「日本公認会計士協会の関根愛子会長は28日、金沢市内で記者会見した。東芝の2017年3月期決算の監査意見が限定付き適正(一部の不適切な事項を除けば適正)になったことについて、本来はお墨付きを与えるはずの監査が異例の対応となり「残念だ」と述べた。東芝を担当するPwCあらた監査法人に対する調査を継続していることを明らかにした。」
たしかに、重要な虚偽表示がないという監査人による保証がついた財務諸表が開示されなかったという点で「残念」だと思いますが、監査人には、会社がいやだといっているものを無理矢理訂正させる権限はないのですから、「限定付適正」を出したこと自体は、「残念」でも何でもなく、監査人の役目を果たしただけだともいえます。
調査の内容は...
「現在は監査業務審査会と呼ぶ協会内のチームを通じ、東芝への監査が適正に実施されていたかどうか情報収集を進めている。詳細な調査や処分が必要かどうか結論を出す時期については「拙速にならないようにしたい」と述べるにとどめた。」
十分な監査証拠を入手しないまま意見(結論)を出したり、重要な虚偽表示があるのにないものとして無限定適正意見を出したりしたという疑いがあるのなら、監査基準に違反し、会則にも違反している疑いがあるということですから、協会として調べるのは当然といえますが、あらたのケースは、虚偽表示を発見し、監査基準どおり、そのことを監査報告書に記載したわけですから、どのルールに違反しているのかよくわかりません。あえて挙げるなら、不適正とすべきものを限定付適正にしたという違反の疑いでしょうか。
むしろ、あらたの監査報告書により、東芝の2016年3月期の決算について、前任である新日本監査法人が、虚偽表示があるのにないものとして無限定適正意見を出した疑いが浮上したわけですから、新日本の監査の方を調べる必要があると思われます。
また、協会には監査人を調べる権限しかないので、協会記者会見であらたへの調査が話題になるのはわかりますが、本来問題にすべきなのは、東芝の2016年3月期と2017年3月期の決算が適正であったかどうかという点でしょう。監査人が監査報告書で巨額な虚偽表示を指摘したのに、金融庁は、なぜ東芝を調べないのでしょうか。
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