会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

大型減税、国民分断 拍車も 政治対立、再改正調整に影(日経より)

大型減税、国民分断 拍車も 政治対立、再改正調整に影(記事冒頭のみ)

1月18日の日経「経済教室」で、米国の税制改正を取り上げていました(立教大学関口教授)。

「昨年4月にたった1枚のペーパーで公表された提案が、曲折を経て約500ページに及ぶ法案となり、昨年末に可決された。「減税・雇用法(Tax Cuts and Jobs Act)」だ。レーガン政権以来約30年ぶりの大規模な税制改革はトランプ氏の選挙公約であり、政権発足後数少ない大型の成果だ。」

全体としては...

「昨年4月の政権案、9月の大統領府・上院・下院の共和党統一案、そして12月の成案も何らかの租税理論を背景にしたものとは到底言えない

 2016年6月の下院共和党案に盛り込まれた仕向け地主義のキャッシュフロー税構想にしても、償却資産の一括償却、利子の損金算入などが実現したにすぎない。今回の税制改革は全般的に、税率引き下げに比べて課税ベース拡大には積極的ではない。予算決議で認められた10年の累計財政赤字1兆5千億ドルの範囲内での措置に終始していた。

注目すべきは規模の大きさだ。81年改革は5年間での累計財政赤字が7473億ドルなのに対し、今回は5年間で1兆740億ドル。10年間の累計財政赤字は1兆4560億ドル拡大すると推計される。最初の5年間の累計財政赤字が7割強を占めるのも特徴だ。」

改正のポイントにもふれています。

企業関連では、以下の5点を挙げています。

・法人税率引き下げ(35%から21%へ)
・償却資産の一括償却
・海外の所得にも課税する「全世界課税方式」から所得源泉地で課税する「領土主義課税」への変更
・領土主義課税の移行時に、海外留保利益に一括課税
・大規模な多国籍企業の多額のグループ取引に対する新たな課税(BEAT、税源浸食税)を導入

国境調整税は導入されませんでした。

「通商問題の解決は税制ではなく、2国間交渉で図るとの意思表示でもある。」

個人向けの改正の影響は...

「米議会予算局の推計によれば、短期的には低所得層の受益、中長期的には中低所得層の受益が減少する一方で、高所得層の受益は継続する。例えば4万ドル未満の所得層は、19年は減税額がメディケイド支出などの削減を上回るが、21年には逆転する。また家計の中位所得(中間層)にあたる7万3千ドルの所得層も、減税の主な時限的措置が終わる27年以降には負担増となる。」

企業と金持ちの個人を優遇する改正のようですが、今後はどうなるのか...

「歴史的に米国は、所得課税中心主義の下で累進課税を維持し、それを国民統合のシグナルとして利用してきた。今回の改正はむしろ国民分断のシグナルになりかねない。公約に従って減税カードは切られたが、中間層の負担軽減効果も中長期的には失われる。

そうであるなら減税が経済成長にどれだけ早く波及するのかが問題となる。米国内の企業は資金保有額を増やすことが予想される。それを設備投資や配当の上積み、賃金やフリンジベネフィット(給与以外の便益)の増額、自己株式取得など、どのような形で配分するのかが問われる。」

欠陥だらけの「トランプ減税」が抱える問題
トランプ政権がブチ上げるような効果はない
(東洋経済)

「多くの研究が示すように、法人減税の恩恵のうち賃金に回るのは20〜25%。残りは株主のものだが、その3分の1は外国人。減税で最大の恩恵を受けるのは、発行済み株式の約半分を保有するトップ1%の超富裕層となるだろう。

代替財源は経済成長によって生み出せる、とする政権側の主張を裏付ける根拠も存在しない。法案に賛成した議員の多くはわかっているが、減税によって失われる税収のうち期待される経済成長でカバーできるのは、せいぜい3分の1。だがこれは彼らの高等戦術なのだ。

減税によって税収が減れば、低所得層や中間層に恩恵をもたらす政策のカットが今後、正当化しやすくなる。すべては財政規律や福祉改革のため、というわけだ。」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事