会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

米金融、税制改革で収益減 大手6社10~12月、会計調整響く 純損益3.3兆円押し下げ(日経より)

米金融、税制改革で収益減 大手6社10~12月、会計調整響く 純損益3.3兆円押し下げ

米国の税制大改正で、米国の金融機関の決算に大きな影響が出ているという記事。ただし、一時的なものだとみられているそうです。

「18日出そろった大手6社の2017年10~12月期決算は、税制変更に伴う一時的な調整費用が収益を押し下げた。シティグループは金融危機以来の巨額赤字を計上。だが18年は一転、減税効果で収益に追い風が吹く。自己資本比率への影響も軽く、各社とも資本の目標や配当の計画は変更しない見通しだ。」

「...金融機関は、融資の焦げつきリスクに備えた引当金の絡みで法人税率の変更に伴う調整による影響が大きく出やすい。

シティの減益要因の大半は「繰り延べ税金資産」の取り崩しだ。将来、損失が確定して税負担が軽くなったときには取り崩し利益から差し引く。カギになるのが法人税率だ。

シティなどは従来の35%を前提に、繰り延べ税金資産を計上していた。これが21%に下がったため、将来に税負担が軽くなる金額が大幅に目減りしてしまい、一気に資産の取り崩しを迫られたわけだ。

この制度は、将来も安定して税を納められるだけの収益力があることが大前提だ。シティは金融危機時に深手を負った米銀の一つ。損失が大きかった分、その後の収益回復に伴い、この仕組みを積極活用してきた。米国ほど不良債権の流動化が進んでいない国を含めグローバルに融資業務を手がける点も、引当金の多さにつながり、影響を大きくした。

 一方、もともと金融危機の傷が浅かったウェルズ・ファーゴは税制改革に伴う調整が逆に利益を押し上げた。JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどは、今回の税制改革に沿って海外資金を米国に戻すことにして、その税負担が利益を押し下げた。」

この日経記事では「将来も安定して税を納められるだけの収益力」うんぬんといっていますが、今回は、繰延税金資産の回収可能性の話ではなく、税率引き下げによる影響の話なので、「収益力」は関係ないでしょう。

「海外資金を米国に戻すことにして、その税負担が利益を押し下げた」というのもあやしい記述です。アップルの例と同じように、国外にためている資金を米国に還流させるかどうかにかかわらず、税金はかかります。どうせ、税金はかかるのだから、米国内に戻してしまおうという動きはあるでしょうが、資金を戻すから税金がかかる(これは改正前の制度)わけではありません。

(この記事は米国の金融機関の話だけですが、米国に進出している日本の金融機関も、引当金に関連する繰延税金資産があって影響を受けそうにも思われます。どうなっているのでしょうか。)
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