会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「ヤフーVS.アスクル」が問う「資本市場の信頼性」と「少数株主利益」(フォーサイトより)

「ヤフーVS.アスクル」が問う「資本市場の信頼性」と「少数株主利益」

アスクルとヤフーの間の経営権をめぐる対立についての解説記事。少しアスクル寄りのようです。

「7月18日に記者会見を開いた岩田社長は、ヤフーとの間には、アスクルの経営の独立性を維持することを目的に締結した「業務資本提携契約」が存在することを明らかにした。守秘義務があるとの理由で全文は公開しなかったが、一部条項の抜粋が明らかになった。

...また、経営の独立性を担保するために、ヤフーがアスクルに送り込む取締役は2人とし、株主総会での取締役候補の議案は「アスクルが設置する指名・報酬委員会の答申を最大限尊重の上、アスクルの取締役会において決定する」と明記されている。

この契約に沿ってアスクルは5月の指名・報酬委員会で取締役10名の候補者名簿を決定したが、6月27日になって、ヤフーの川邊健太郎社長が弁護士を伴って岩田氏を訪ね、突如として社長を自主的に降りるよう要求したという。6割近い株式を保有する大株主が言っているのだから、言うことを聞くのは当然、という姿勢だったという。」

指名・報酬委員会の構成は...

「指名・報酬委員会の委員は、元松下電器産業(現・パナソニック)副社長の戸田一雄氏、東京大学名誉教授の宮田秀明氏、前日本取引所グループ(JPX)最高経営責任者(CEO)の斉藤惇氏、公認会計士で社外監査役の安本隆晴氏の4人の社外役員と、顧問弁護士の小林啓文氏と岩田社長の合計6人。小林弁護士はソフトバンクグループの孫正義会長の右腕として長年活躍してきた人物。」

社外役員の反応は...

「ヤフーの突然の申し入れを聞いて社外役員の多くは烈火のごとく怒った。

というのも、ヤフーから2019年1月にロハコの事業譲渡を検討するよう求められた際に、3人の社外役員に3人の社外監査役を加えた「独立役員会」がその妥当性を検討する役割を担ったからだ。当然、業務・資本提携で独立性を保つ規定があることも熟知している。ロハコ事業のヤフーへの譲渡はアスクルの株主やステークホルダーの利益にはならないという結論に達し、ヤフーの申し出を拒絶していた。社長選任の拒絶は、言うことを聞かない岩田氏のクビをすげ替えようとするものに他ならないと見たわけだ。

「まさに数の論理で上場企業たる当社の指名・報酬委員会によるプロセスを踏みにじろうとしたもので」、業務・資本提携契約にあるアスクルが設置する指名・報酬委員会の答申を最大限尊重の上、アスクルの取締役会において決定するという「条項の趣旨に反するばかりでなく、上場企業としての当社におけるガバナンス体制を全く尊重していないものと言わざるを得ず、極めて遺憾であります」。

独立役員会がメンバー全員の連名で出した意見書では、そんな激しいトーンでヤフーの行動を叱責している。」

ヤフー側が株主提案を提出していないことも批判しています。

「ヤフー側は、会社側提案に代わる株主提案などを期日までに提出しておらず、株主総会で会社側提案に真正面から反対するには、修正動議などを出して岩田体制に代わる取締役を選任する必要がある。だが、それではヤフーとプラス以外の株主は議案を知ることができず、事実上、投票に参加できないことになる。上場企業の手続きとしては極めて異例で、少数株主の利益を無視していると世間から非難を浴びるのは必至だ。」

政府の成長戦略にもふれています。

「実は、政府も上場企業の少数株主の利益保護について重い腰をあげつつある。6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」の中で、「特に、支配的な親会社が存在する上場子会社のガバナンスについては、投資家から見て、手つかずのまま残されているとの批判があり、日本市場の信頼性が損なわれるおそれがある」と指摘しており、今後、上場子会社の独立性保持や、親子上場の禁止などが検討されていくことになりそうだ。」



ヤフーが子会社アスクル社長の退陣要求、アスクル側猛反発の深層(DOL)
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