日本公認会計士協会は、「個別事案審査制度の活動概要(2018年度)」を、2019年7月19日に公表しました。
そもそも個別事案審査制度とは...
「協会では、公認会計士業務等に係る個別の問題が発生した場合に、当該個別の問題に対する指導・監督機能の発揮、また、処分懸念事案に係る調査及び審議を実施することを目的に、監査業務審査・規律調査制度を設けております。さらに、当該処分懸念事案に係る懲戒処分について審査することを目的に、綱紀審査制度を設けております。そして、これらの制度を総合して個別事案審査制度と称しております。」
監査事案に関する入り口である 監査業務審査会の状況は...
「2018 年度に新規個別監査案件として取り上げた案件は 49 件、前期からの繰越案件が 20件、合わせて 69 件であり、このうち 35 件を審査終了した結果、次期繰越案件は 34 件となりました。」
審査終了の35件のうち、次の段階である規律調査会に回付されたのは7件あります。そのほか、勧告が13件です。
規律調査会の状況は...
「今回の報告対象期間中に個別事案として取り上げた事案が11件、2018年3月末からの繰越事案が10件、合わせて21件であり、このうち7件を処理した結果、次期繰越事案は14件となりました。」
監査以外の事案も含まれているので、監査業務審査会の数字とは合いません。
処理した7件のうち綱紀審査会審査要請が3件、勧告が3件です。
綱紀委員会の状況は...
「今回の報告対象期間中に綱紀審査要請のなされた事案が4件、2018年3月末からの繰越事案が4件、合わせて8件であり、このうち8件を処理した結果、次期繰越事案は0件となりました。」
処理した8件のうち懲戒処分が7件、勧告が1件でした。
最終的な懲戒処分の状況は...
不服申し立て手続の関係で、綱紀委員会の処理数とは一致しません。
「理由」のうち、最初の2つが監査関連です(計4件)。(繰り越しがあるので正確に対応しているわけではありませんが)1年で約50件のあやしい監査を調べて、1割に満たない件数が懲戒処分になるという割合のようです。
懲戒処分について言い訳めいたことが書かれています。
「協会の懲戒処分は、金融庁の行政処分と異なり、業務停止、公認会計士登録の抹消や監査法人の解散命令、課徴金納付命令はできません。そのような観点では、当該関係会員にとっては、行政処分に比して、個別の実効性が高いとまでは言えないかもしれません。
しかしながら、協会が、会計プロフェッションの自主規制団体として、関係会員の監査実施状況等に対して、同じ会員の目線で調査をし、監査の基準に照らし合わせて、その監査手続が十分であったかを判断し、その結果、会則に照らし合わせて違反があれば懲戒処分を科す、ということは、重要な機能であると認識しています。」
業務停止などの実質的な処分を行うことができなくても、協会外への公表を行えば、実効性の高いペナルティとなるのでは(現行ルールでは会員向けにしか公表されない)。(実効性の高い処分を行うと、協会は処分先からの訴訟の嵐にまきこまれるおそれはありそうですが...)
また、調査結果は、幅広く会務に展開し、諸施策を講じていて、役に立っているという趣旨のことも述べています。
当サイトの関連記事(2017年度版について)
協会には品質管理レビュー制度というのもあります。こちらは、問題事案ごとというよりは、監査事務所(監査法人・公認会計士)ごとに調査するものです。監査をやっていなければ関係ありません。
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