フジ・メディア・ホールディングスが、約2年間、放送法の外資規制に違反していたという記事。
「同社は、12年4月に完全子会社化した会社の出資先である番組制作会社が保有するフジ・メディアHD株について、本来議決権がないのに、誤って議決権総数に算入。正しく計算すると、14年9月までの2年間、議決権の外資比率が0・00042~0・00083%超過していた。
金光社長によると、算入ミスは14年9月に判明。さらに約2カ月後、過去2年間にわたり外資規制の違反状態にあったことに気づいた。12月上旬に当時常務だった金光社長が総務省を2度訪れ、こうした事実を報告した。
金光社長は「認定がどうなるかの感触を取りに行った」と説明。2度目の訪問の際、担当者から「二度と起こさないよう」と口頭で厳重注意を受けた。注意にとどまったことで「認定取り消しにならないと判断した」という。同省によると、対応したのは当時の放送政策課長で、上司の情報流通行政局長にも報告していたという。
同社は14年9月末時点で違反状態を解消した一方、違反状態にあったことは当時公表しなかった。金光社長によると、総務省の反応を踏まえ公表の必要はないと判断。算入ミスに伴う有価証券報告書などの開示書類の訂正も、ミスが「微少」であることを理由に訂正義務がないと判断したという。「今から振り返れば、総務省に報告が終わった時点で、公表していた数字を訂正しておけばよかった」と話した。」
フジ・メディアHD “放送法の外資規制に違反の状態”(NHK)
「総務省幹部は記者団に対し、「フジ・メディア・ホールディングスの金光氏から当時の放送政策課長が報告を受けたのは事実だ。報告を受けた時点で、外資規制違反の状態は解消されていたので、過去にさかのぼって、認定放送持株会社の認定を取り消す必要はないという法的判断をおこなった。当時の判断に問題はなかったと考えている」と述べました。」
会社のプレスリリース。
当社の過年度における外国人等の議決権比率の訂正について(PDFファイル)
こういうお目こぼしをしてもらっているようでは、政府・自民党に厳しい報道もできないのでしょう。あるいは、厳しい報道をしないから、お目こぼししてもらったのかもしれません。報告時点で是正されていればよいということであれば、「隠し得」でしょう。
朝日の記事でいっている有報の訂正に関しては、日産ゴーン事件でも明らかとなったように、粉飾などで決算数値に大きな虚偽記載があったという場合だけでなく、財務情報以外でも重要な虚偽記載であれば、訂正させ、処分も行うというのが当局の方針のようです。今回は、放送を停止しなければならないかどうかという大問題ですから、それに関連する開示に虚偽があれば、当然訂正させ、処分すべきでしょう。ただ、具体的に有報のどこが要訂正なのかわからないので、何ともいえません。(詳しい人が見ればわかるのかもしれませんが、大株主や議決権の状況を見ても、外国人株主の議決権比率が規制をオーバーしているかどうかを直接記載する箇所は見当たりません。)

(フジHD2020年3月期有報より)
直近の有報を見ると、外国人による株式の保有自体は、2割を大幅に超えているようです(「放送法に基づき名義書換を拒否した株式(外国人持株調整株式)335,289単元」を含めれば、3割超)。
今回の違反が公表される前の記事。
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「フジと日テレ」の外資比率が、東北新社を超えても許される理由(DOL)
「わが国では、電波法や放送法により放送会社の外国人等議決権割合は5分の1(20%)を超えてはならないと定められている。放送業者に対する外資規制が行われている理由は、放送が世論に及ぼす影響を考慮した安全保障上の理由による。放送業者に対する外資規制は、わが国だけでなく、アメリカ合衆国でも欧州でも類似の制限が設けられている。
電波法第5条3項は、認定放送持株会社の欠格事由として、放送法5条1項に定める外国人等の議決権割合が全ての議決権の5分の1を超えないこととしている。
だが、外国人直接保有比率が、5分の1を超えている企業は、東北新社だけではない。2021年3月26日において、フジ・メディア・ホールディングス、日本テレビホールディングスの外国人直接保有比率はそれぞれ、32.12%、23.77%と、発行済株式総数の5分の1を超えている。」
議決権を持っていなくても、会社に敵対する日本人株主に売却するぞといって圧力をかけたりすることは可能なのでは。