会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「税調」熱き冬の攻防(NHKより)

「税調」熱き冬の攻防(前編) “裏年”のはずが

「税調」熱き冬の攻防(後編) もつれた「△」

2020年度の税制改正をめぐる自民党の税制調査会(「税調」)の動きをまとめた記事。

自民党「税調」トップと経産省の思いつきで導入される改正項目もあるようです(前編より)。

「税調会長みずから打ち上げた「オープン・イノベーション」税制の創設。これをめぐり、制度創設を求める経済産業省と、具体的な仕組みを法律で定める立場の財務省との間で激論が交わされることになった。

ポイントとなったのは、企業が投資をしやすくするための税制上の措置として、どのような手法を取るかだった。甘利氏がこだわったのは、企業が一定額を出資した場合に、法人税の税額を差し引く「税額控除」という方式。」

「財務省は、この「税額控除」方式に異を唱えた。

出資した時点で負担が軽くなるというのは、確かに、企業にとっては分かりやすいかもしれない。しかし、大企業がそれで多額の利益を上げた場合でも減税されるなんて、国民の理解が得られないでしょ。設備投資などと違って、出資という資本取引そのものを税額控除の対象にするなんて例がないし、受け入れられない」

「税額控除」方式には、甘利氏以外のほかの税調幹部からも異論が相次いだ。

「出資に対して税額を控除するなんて、補助金をばらまくのと同じようなものだ。税制として、筋がよくない」
「税調会長が言っているから丸飲みで、何でもかんでもいいという話にはならないよ。出資先を限定して、出資額の規模にも要件を掛けていかないと」」

最終的には、所得控除で決まったそうです。

「与党での税制改正大綱決定まで1週間余りとなった12月4日(水)。午後4時半すぎ、財務省に、経産省でこの一件を取りしきる新原浩朗・経済産業政策局長が現れた。行き先は、財務省の矢野康治・主税局長の部屋だ。

新原氏は、翌5日(木)も財務省へ。両氏のひざ詰めの議論が続いた。
「甘利さんの顔に泥を塗るわけにはいかない」。両氏がたどりついた結論は、「税額控除」でも、「準備金」でもなかった。

採用したのは、課税対象となる企業の所得から一定の割合を差し引くことで、それをもとに計算される法人税の負担を軽くする「所得控除」という方式だった。」

「所得控除」の25%は、「税額控除」に置き換えれば、7.4%程度に相当する。甘利氏がこだわった出資時の負担軽減を実現し、経産省が当初求めていた5%の税額控除を上回る、大胆な税制優遇が制度化されることとなった。」

後編では「5G」優遇税制を取り上げています。これも経産省(と総務省)のアイデアです。

「この冬の税制改正で、最後の最後までもつれ込んだのは、「○政」にもならなかった、「△」の1つ。次世代の通信規格「5G」の導入を促進するための優遇税制の創設だった。」

「優遇税制の創設を求めたのは、総務省と経済産業省。両省は、高速・大容量の「5G」基地局を整備する携帯電話会社などに対し、設備に投資した費用の一定割合を法人税から差し引く「税額控除」などの減税措置を講じるよう求めていた。」

「税調での議論が本格化する前、財務省は、突き放していた。

「そもそも、税制で設備の調達先を線引きして規制するようなことは無理だ」
「『30%の価格差』というが、根拠がよく分からない。なぜ、特定の携帯電話会社だけ、法外な規模で税金をまけてやるようなことをしなければならないのか

実際、与党内からも、問題視する声が相次いでいた。

「消費税率を引き上げたのに、特定の企業を大幅に優遇するなんて、国民の理解を得られない」
「大規模な減税に必要となる多額の財源を、どこから持ってくるのか」
税調幹部も、「30%の大幅控除なんて、認められない」と言い切っていた。」

この件は安倍総理がこだわっていたのだそうです。

「安倍総理大臣は経済安全保障の観点から、この「5G」の案件には、こだわっていた。」

「その日の夜、甘利氏のもとに、財務省幹部から一本の電話が入った。
2年間、15%の税額控除で、官邸も落ち着きました」」

本当にこんな税制の決め方でいいのでしょうか。また、税金で食っているはずの中央官庁の役人が、特定政党の政策立案に労力を使うのもおかしな話です。(もっとも、お役人は利口なので、自民党に税制改正要望を出したとはいっておらず、また、政府の税制改正大綱が決まってから、税制改正へのコメントをしているようです。)

改正の中身自体も変です。大企業がベンチャー企業を買うときには優遇され、個人が上場したベンチャー企業の株式を買うときには特に優遇はないとなれば、大企業が相対的にベンチャー企業を高い値段で買えることになり、個人が不利になるとともに、上場よりも大企業への売却を選ぶベンチャー企業を増やす影響が出るかもしれません。5G優遇も、ほかに優遇すべき技術はないのでしょうか。投資行動をゆがめる恐れがありそうです。
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