マザーズへの新規上場の現状を批判的に取り上げた記事。
「東証マザーズ市場は2000年に設立され、ライブドアやサイバーエージェントなど、現在では日本経済を代表する大企業に成長したベンチャーを輩出してきた。しかしそれが、現在では「成功例のモノマネをする優等生企業」か「ビッグマウスで投資家をだます企業」の2種類しか輩出できない状態に陥っているという。」
まず、「上場ゴール」不祥事への対応が証券会社の審査に悪い影響を与えたのだそうです。
「先の経営者は、相次ぐ「上場ゴール」による不祥事が証券会社に与えた影響についてこう話す。
「投資家側から東証や証券会社に『きっちりと審査しないで、投資家に損ばかりさせている』との非難が集まった結果、『とにかく堅く売れるベンチャー』が好まれるようになりました。クラウドソーシング、ポータルサイト系の事業などですでに成功事例のある企業の上場が最近目立つのもこのためです。
また、上場審査の際にはベンチャー側から事業計画を提出するのですが、半年間の上場審査期間中、売上高と利益の誤差を計画から5〜10%に収めなくてはならないのが主流となっています。
しかし、よく考えていただきたいのですが、ベンチャーには半年あれば数十%業績を伸ばせるような業態もあるのに、最初に開示した計画に沿うことが求められる以上、売り上げをわざわざセーブして調整することになるわけですから、企業の本当の実力が上場時の株価に反映されません。その結果、上場時に調達できる資金が少なくなり、事業規模を拡大するのは正直難しくなります。
上場にかかる監査法人や上場準備コストはマザーズ上場で年間1億円以上かかりますから、仮に上場しても公募による資金調達額はせいぜい数億〜10億円程度なので、その大部分は準備経費で失われることになります。
非上場の同業他社は労働基準法や法令遵守などのコンプライアンス意識も希薄ですから、彼らがルール無用で全力で利益を上げているときに、自分たちはセーブした経営を強いられ、準備コストも高い。私の周囲の経営者は、ほとんど上場に意味を見いださなくなっています。それでも、企業を一定以上大きくするためにはベンチャーキャピタルの資金を受け入れるしかない場合も多く、上場を目指さざるを得ないというわけです」」
「東証によると、企業の新規上場(IPO)案件の年間資金調達額は、13年の47件3735億円を直近ピークとして、18年に80件1560億円となり、件数は増えているが調達総額は減少し、小粒化が進んでいる。
「メルカリやLINEなどの大型上場案件と、それ以外の差が広がってきている」(大手証券ストラテジスト)。」
ソフトバンクグループ一強状態も懸念事項だそうです。
「2019年はソフトバンクグループが、LINEやZOZOを相次いで買収する動きが話題に上った。市場関係者の間では「市場価格よりも高く買ってくれるんだから、上場はもはやソフトバンク傘下になるための踏み台に成り下がった」(銀行系証券)との声もでている。」
「...全国紙経済部のベテラン記者はこう解説する。
「このIT業界の『ソフトバンク一強』の状況は、ライブドア事件以降、すでに既定路線となっていました。プラットフォームをめぐる企業間の競争で孫氏が勝利し、対抗勢力がなくなってしまったのです。...」
こちらの記事のほうが先に出ています。
↓
迫る2022年ショック、もはや上場ゴールは限界
増殖し続けたスタートアップは出口を求めてさまよい始めている(東洋経済)(記事冒頭のみ)
「「今から目指すなら、IPOよりISO」
こんなジョークが日米の投資家の間で飛び交っている。「IPO」(Initial Public Offering)は新規株式公開を指すが、「ISO」のSはソフトバンクのS。「時間をかけてIPOをするよりも、ソフトバンクに買収してもらったほうが手っ取り早い」というわけだ。
IT大手からメガベンチャーまで飲み込むソフトバンクグループの勢いは止まらない。傘下のZホールディングスはZOZOを子会社化し、LINEとの経営統合を発表。さらに経営難に陥った米ウィーワークに約1兆円を投じて、グループ全体で株式の8割程度を取得した。
企業規模に関係なく、成長に苦しむベンチャーに共通する悩みは、イグジット(出口戦略)。とくにスタートアップはVC(ベンチャーキャピタル)から資金調達した以上、IPOかM&Aで売却益を出す必要に迫られる。ISOにすがりたくなるのも無理はない。」
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