金融庁の公認会計士・監査審査会は、監査法人アリアを検査した結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対して行政処分その他の措置を講ずるよう、金融庁長官に2017年6月8日付で勧告しました。
以下のような指摘がなされています(一部抜粋)。
「当監査法人は、新規受嘱の判断において、被監査会社に経営権を巡る争いが発生している中で、検証可能性の乏しい手許現金による投資が短期間で回収困難となっていることなどを認識していたにもかかわらず、投資などに関する不正リスク及び過年度訂正の必要性を合理的に判断するための監査証拠の入手可能性を踏まえた判断を行っていない。なお、受嘱後の期首残高監査及び第1四半期レビューにおいて、主として前任監査人の監査手続に依拠し、監査の基準で求められている不正リスクに対応するための追加手続検討が不十分であった状況が窺われる。 」
「個別監査業務においては、特別な検討を必要とするリスクを識別しているのれんの評価に係る監査手続において、のれんの残高を誤認し、のれん残高全体の回収可能性について監査証拠を入手しておらず、また、残高確認手続により入手した回答を十分に検討していないため、有価証券報告書における関連当事者の注記漏れを発見できていない。」
「監査業務に係る審査においては、大会社等の監査経験がない者を審査の専任者として選任しており、...」
「当監査法人の監査業務の定期的な検証は、公認会計士資格を有しない補助者が主に実施...」
このほか、監査調書の記載の不備、前回指摘と同一・同様の不備があり改善に向けた取組が著しく不十分などの指摘がなされています。
新規受嘱といえば、東芝の監査人交代後の「期首残高監査」なども、金融庁検査では見られるのでしょう(金融庁に検査をまじめにやるつもりがあれば)。「前任監査人の監査手続に依拠」だけで済ませてしまったということはないと思いますが...。東芝は、虚偽記載で摘発されたばかりの会社だったのですから、リスクが低いとはいえないでしょう。
会計士・監査審査会、アリアへの行政処分を勧告(日経)
「アリアは現在、東証2部に上場しているファステップス(2338)と郷鉄工所(6397)のほか、ジャスダック上場の4社の監査を担当している。」
この監査法人のサイトには反論文書が掲載されています。
↓
「金融庁の公認会計士・監査審査会が、平成29年6月8日に公表した勧告は、大多数の事実誤認に基づく、虚構の不当な文書であり、当監査法人は、司法の場でその事実を明らかにすべく訴訟を行っております。」(監査法人アリア)
この件に関して、現在、訴訟手続中だそうです。
「真摯に業務を行っている当監査法人に対して、公認会計士・監査審査会は、巨大な公権力を乱用し、当監査法人を不当に貶めております。またこのような行為が行われることに対して、大変恐ろしく感じます。
私共は、小規模な監査法人かもしれませんが、不当な検査や虚構に満ちた「勧告」をして、当監査法人の信用を陥れる行為については たとえ、国家権力であっても、泣き寝入りするわけにはいきません。」
訴訟が好きな監査法人のようです。
2016.09.08
選択出版株式会社に対して提起した訴訟が終結致しました。(監査法人アリア)
代表挨拶(監査法人アリア)
「たとえば、交通事故にあわれた方や重病患者を投げ出す医療機関はあってはならないのと同様、当監査法人は、ケアを投げ出さないことをポリシーとしています。」
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