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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

[農協改革 物申す] 監査廃止 成長力そぐ 青山学院大学大学院教授 八田進二氏 (日本農業新聞より)

[農協改革 物申す 上] 監査廃止 成長力そぐ 青山学院大学大学院教授 八田進二氏 (2015/1/22)

農協監査問題について、青山学院大学の八田進二教授に聞いたインタビュー記事。

まず賛成できる箇所から。

「上場企業と同じようにJAも公認会計士の監査にしようという議論は、確かに分かりやすい。しかし、本当にそれで良いのか。会計監査だけで組織のガバナンスは保てるのか、そのための専門家がJAの内部に確保できているのか、そういった問題が全てクリアできるのだろうか。」

会計監査は会計士・監査法人がやるべきというのは正論であり、その方向で決まったわけですが、それだけでいいのかというのは、そのとおりです。組織のガバナンスは、会計監査の前提条件でもあります。

しかし、この箇所以外は、どうなのかなと感じました。

「・・・業務が適正かどうか検証するなど、JAのガバナンスを補完している全中監査を弱めることは、かえってJAの成長力をそぐ。政府の掲げる農業の成長産業化にも逆行しかねない。」

「21世紀に入り、米国でのエンロン事件に始まる大企業の粉飾決算が問題になり、監査には不正の摘発が強く求められるようになった。そのため、単に財務諸表の正しさを証明する会計監査だけでなく、指導性を発揮して業務の健全性を確保するとともに不正を防ぐ、業務監査的な機能を監査に求めるようになってきた

現状の公認会計士の監査は会計監査だけだが、専門家の間では、会計だけでなく業務全般を対象とする「統合監査」の研究も進んでいる。公認会計士の監査制度も、社会の期待に応じて不断に議論がなされている。翻って全中監査を見ると、指導機能を発揮し、会計と業務の監査を一体的に行っている。この仕組みは、評価に値する。」

エンロン事件以後の動向としては、それが100%正しいかどうかはわかりませんが、会計監査を、それ以外の業務からできるだけ切り離し、独立性を確保しようという方向と思われます。「業務監査的な機能を監査に求めるようになってきた」というような傾向は本当にあるのでしょうか。また、細かい言葉の問題ですが、「統合監査」は、財務諸表監査と内部統制監査を統合して行うことをいうのが、一般的なように思われます。このインタビューのように、業務監査と一体でやることを指すものではないように思われます。

全体として、地域の農協から上納金を集め、それを使って、親会社が子会社に対して行うような経営指導をやっている、信用事業の比率が高いのに、同じような地域密着の組織である信金・信組と比べても独立性・専門性の低い監査だという農協監査への批判に対して、応えるような発言ではないように思われます。
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