岸田首相の所信表明演説の記事。四半期開示見直しについてふれたそうです。
「岸田首相は自民党の総裁選中から主張していた「新しい資本主義」の実現を強調。「格差がもたらす分断が危機によって大きくなっているとの指摘がある」と懸念を示し、「『成長か、分配か』という、不毛な議論から脱却し、『成長も、分配も』実現するために、あらゆる政策を総動員する」と述べた。
分配の具体的な戦略の1つとして、企業業績の四半期開示を見直す考えを示した。岸田氏は「企業が、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要」とし、「非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進める」と語った。「下請け取引に対する監督体制強化」や、「労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業への税制支援強化」にも触れた。」
内閣の方針になったということでしょうから、手続き的なことはよくわかりませんが、金融庁の金融審議会「ディスクロージャー・ワーキンググループ」の議題に追加されるのでしょう。
当サイトの関連記事(岸田首相の四半期見直し公約について)
(補足)
演説の全文。
↓
【全文】岸田文雄首相が所信表明演説「日本の絆の力を呼び起こす。それが私の使命」(東京)
開示についてふれている部分を引用しました。
「新しい資本主義を実現していく車の両輪、これは、成長戦略と分配戦略です。
...
次に、分配戦略です。
第1の柱は、働く人への分配機能の強化です。企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵が受けられる「三方良し」の経営を行うことが重要です。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備、進めてまいります。政府として、下請け取引に対する監督体制を強化し、大企業と中小企業の共存共栄を目指します。また、労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業へ税制支援を抜本強化します。...」
四半期開示は、従業員や取引先を犠牲にする短期的視点の経営を助長する、従業員・取引先を大事にする長期的な視点の経営のためには見直すべきという理屈でしょうか。しかし、長期的視点の経営であれば、従業員・取引先への分配が強化されるというのも根拠薄弱です。さらに、四半期をやめて年2回の決算にしたところで、長期的視点になるともいえないでしょう。
また、「非財務情報開示の充実」は、通常、投資家への情報提供の充実が目的と考えられますが、「働く人への分配機能の強化」に役立つ「非財務情報」とはどのようなものなのでしょうか。投資家向け情報とは別ものなのでしょうか。いろいろ考えさせられますが、たぶん、単なるキャッチフレーズで、それほど深く検討したものではないのでしょう。
(補足2)
岸田首相、企業の四半期開示「見直す」 株主優先の企業姿勢改まる?(朝日)(記事前半のみ)
「岸田文雄首相は8日の所信表明演説で、企業が3カ月ごとに経営成績などを公表する「四半期開示」の見直しを表明した。開示の間隔を長くして、短期的利益を追求しがちな企業の志向を変えるねらいがあるが、見直せば日本が情報開示に後ろ向きというメッセージを投資家に与えかねない。」
「今後、金融庁の金融審議会で議論を進めていく。」
「企業側からは負担の重さなどを指摘する声があがる。関西経済連合会は「経営者や投資家の短期的利益志向を助長しかねない」などとして廃止を長らく求めている。あるグローバル企業の幹部は「作成には多大な労力が必要。四半期開示の見直しで余力ができれば、気候変動対策などサステイナビリティー(持続可能性)開示の充実にあてられる」と指摘する。」
企業の負担を減らすために見直すと正直にいえばいいのに...
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