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「メアリ・スチュアート」

2020-02-07 | バレエ・ダンス・ミュージカルなど
世田谷パブリックシアターで、シラーによる戯曲「メアリ・スチュアート」を観た。
オペラやミュージカルは時々見るけれど、ストリートプレイは久しぶり。

ちなみに、こちらは群像劇だが、同時期に別のシアターで、二人芝居の「メアリー・ステュアート」も上演されていたらしいので、ややこしい。
それも、この悲劇的な女王の生き方(いや、亡くなり方か)が、様々な印象を集めながら、時代を超えて多くの人々の心を捉えずにおかないことを、明らかに示している。

今回、メアリー・スチュアートを演じたのは長谷川京子さん。美しく気高く、会った人を惹きつける、しかしやはり魔性の女だったのかと感じさせるメアリーになりきっていた。
対するは、シルビア・グラブさん演じる白塗りのイングランド女王エリザベス。これは凄かった。女王の誇り、怒り、混乱、弱さ、ずるさなどを、体中から揮発させるかのよう。

史実では生涯会うことがなかった二人を、シラーはついに相対させる。そして、それぞれに権力欲、王位の立ち位置、主張を持ちながらも、当時の時代的には「下の人間」として扱われる「女性」であるこの二人の、ひりひりするような、冷たいスパークが飛び散るような芝居を、芸達者な男性陣が取り巻く。
吉田栄作さん、ネットで褒められていた通り、本当にクズだった(褒めてる)。
三浦涼介くん、セリフが早かったが女王に向かっていく熱量がすごかった。
鷲尾真知子さんの乳母も繊細な表情が素晴らしかったです。乳母として長年愛し仕えていた女性が、断頭台に向かうために別れるとか、想像を絶しますよね。

今回は、森新太郎さんによる意欲的な演出で、シンプルを極めた舞台装置で色彩も抑えられていたが、
それが、栄華を極めていたであろう王室の生活との落差、血生臭い政変のあった時代を浮き立たせていたように思う。

世田谷パブリックシアターには初めて行ったが、コンパクトながら座席の座り心地はまずまず問題なかった。
なお、「メアリ・スチュアート」は上演時間が3時間を超える作品で、終演は22時頃になりますのでご注意を(みんな時計を見て驚いてた)。
シアターには、簡単なカフェがあります。