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Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

関節リウマチ:抗CD40抗体の臨床試験

2019-03-27 | 医学・医療・健康

Visvanathan S, Daniluk S, Ptaszyński R, et al

Effects of BI 655064, an antagonistic anti-CD40 antibody, on clinical and biomarker parameters in patients with active rheumatoid arthritis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase IIa studyAnnals of the Rheumatic Diseases

Published Online First: 22 March 2019. doi: 10.1136/annrheumdis-2018-214729

「CD40」は活性化B細胞や樹状細胞、単球、マクロファージ、内皮細胞、線維芽細胞などに発現する分子で、活性化T細胞に発現するCD40L (CD154) と結合してB細胞の増殖や分化・抗体産生などに働くほか、各細胞の増殖や炎症性サイトカイン産生などにも関与していることが報告されています。

このため、CD40とCD40Lの結合や相互作用は、関節リウマチの病態形成にも深く関わっていると考えられ、実際、これらの分子はリウマチ患者さんの血液や病変局所で強く発現していることから、この相互作用をターゲットとしたリウマチ治療の可能性が考えられてきました。

しかし、抗CD40L抗体を用いたこれまでの臨床試験で副作用(血栓)が問題となり、臨床試験は停止状態となっています。

今回、新たに抗CD40抗体である「BI 655064」(ヒト化抗CD40抗体)を用いた第2相臨床試験の結果が報告されました。

MTXで治療効果が不十分であった67名の患者さんが、Bi 655064週1回皮下注射群 (n=44人)とプラセボ群 (n=23)にランダムに割り振られて12週間観察し、ACR20で評価しました。

12週後の結果、Bi 655064投与群で、重篤な副反応はみられず、IL-6, MMP-3, RFなどのマーカーや自己抗体の価には改善がみられたものの、Bi 655064群では改善基準達成は68.2%、一方プラセボ群では45.5%(p=0.064)で、残念ながら今回の試験では有意な臨床効果は示せなかったということです。

なかなか厳しいですが、引き続き今後とも検討が必要です。


自己免疫性甲状腺炎と自己抗体

2019-03-27 | 医学・医療・健康
自己免疫性甲状腺炎(橋本病)の患者さんに、リウマチ性疾患(膠原病)と関連する臓器非特異的な自己抗体がどの程度出現するのかについて調べた2016年の論文です。原文は読めていませんが、抄録の内容を紹介します。

Elnady BM et al.
Prevalence and clinical significance of nonorgan specific antibodies in patients with autoimmune thyroiditis as predictor markers for rheumatic diseases.
Medicine (Baltimore). 2016 Sep;95(38):e4336. doi: 10.1097/MD.0000000000004336.

橋本病の患者さんではさまざまな自己抗体が陽性であったり、しばしば膠原病・リウマチ性疾患が合併したりすることが知られています。今回はそのような自己抗体の頻度と意義についてみています。

この研究では、まず[フェーズ1]として61名の甲状腺炎の患者さん(リウマチ性疾患や膠原病の症状がない方)と、甲状腺炎ではない健康な方61名とで、自己抗体の陽性率について調査。
次いで、[フェーズ2]として、その後の膠原病発症や自己抗体との関連について調べた、というものです。

結果としては、自己免疫性甲状腺炎の患者さんでは、抗核抗体が50.8%、抗dsDNA抗体が18%、抗ENA抗体がが21.3%、リウマトイド因子(RF) が34.4%にそれぞれ出現。いや抗核抗体こんなに高頻度なのか。思った以上です・・。
当然、健常人とは有意に異なる頻度であったとのことです (P<0.5と書いてあるんですが、それでいいのか・・・?)

そして全体の約3割(32.8%)が、2年間の観察期間中にリウマチ性疾患を発症。
抗dsDNA抗体陽性であった人のほうが明らかに高いリスク(抗体陰性の人に比べ2.45倍)あり。
その他、年齢、抗dsDNA抗体、抗CCP抗体、RF、甲状腺炎の罹病期間 が発症と関連していたとのことです。特に抗dsDNAとRFが最も強い予測因子でした (P<0.0001)。

ということで
自己免疫性甲状腺炎(橋本病)とリウマチ性疾患・膠原病との関連は予想以上に強いものがあり、上記のような自己抗体が陽性であることが判明したら、早い時期から膠原病内科医にコンサルトして慎重に経過をみていくことが重要である、と結論されています。

まあおおむねそうかなと思える内容です。実際にどんな疾患をどの時期に発症したのかは、原文を読んで確認してみたいと思います。
個人的にも、何か一つの自己免疫疾患があれば、その後別の自己免疫疾患が生じる可能性は少なくないと思うので、患者さんは心配しすぎず・でも油断せず、定期的に受診していただければと思います。

ソフトドリンク飲用と喘息との関連

2019-03-22 | 医学・医療・健康

ソフトドリンクを飲むことと、気管支喘息との関連を調べた論文です。

ソフトドリンク、特に砂糖で甘くした飲料(sugar-sweetened beverages, SSBs)との関連を示唆する論文はこれまでにもあったとのことですが、今回は特に、甘いものを飲む機会が多い中東カタールから、肺機能検査も含めての研究報告です。

Association between Soft Drink Consumption and Asthma among Qatari Adults

Amna Al Ibrahim et al.

Nutrients 2019, 11(3), 606; https://doi.org/10.3390/nu11030606

20歳以上の成人986名を対象に、ソフトドリンクを飲む頻度を食事調査票(FFQ)によって調べ、気管支喘息の病歴を問診によって確認するとともに、実際に呼吸機能検査を行って、肺活量や換気障害の有無を検討したというものです。

ソフトドリンクを飲む頻度は、飲まない・ほとんど飲まない、月1−3回、週1−3回、週4−6回、1日1回、1日2回以上 を、それぞれ週に何回飲んだかに換算して集計・解析。また、元の調査票にあったフルーツジュースは除き、ソフトドリンク・エナジードリンク・ダイエットソフトドリンクについて集計したとのことです。

その結果、

対象986名中65名(6.6%) に気管支喘息が認められ、ソフトドリンク飲用と喘息との間に関連が認められたということです。

具体的には、週7回以上ソフトドリンクを飲んでいた人は、飲まない人に比べて約2.6倍、喘息になりやすかったという結果でした(OR 2.60, 95% CI 1.20-5.63)。週に1回、ソフトドリンクを飲む回数が多くなると、喘息になる確率が8.3%上がるとされています。

ソフトドリンクの種類別に見ると、統計的に有意に喘息の頻度と関連していたのは「ダイエット・ソフトドリンク」でした(OR 1.12, 95% CI 1.02-1.23)。その機序は不明。ちなみにフルーツジュースの方は、逆に喘息の頻度を低下させる傾向がありました(OR 0.95, CI 0.85-1.07)。カタールでは、いわゆるフレッシュジュース(果物から直接作られるジュース)が多いそうで、フルーツジュース摂取は健康的なライフスタイルや健康意識が高いことと関係しているかもしれない、と考察されています。それに対して、ダイエットドリンクの飲用は、果物の摂取とは関連するものの野菜や身体活動との関連はなく、健康的なライフスタイルを反映しているとは言えないとのことです。

そしてソフトドリンクを飲む頻度は、呼吸機能の1秒率(FEV1)と逆相関。ということは、ソフトドリンクを飲む人は閉塞性換気障害の可能性が高いということになりますが、各種交絡因子で調整するとこの関連は有意でなくなり、逆相関の程度はわずか、ということです。なお、サブグループ解析では一秒率と肥満に逆相関があったことから、ソフトドリンクと1秒率との関係の少なくとも一部は、Body Mass Index (BMI)、すなわち肥満が関わっていることが示されました。

今回はあくまでもソフトドリンクの「摂取頻度」だけ見ており、喘息についても自己申告なので不明な点もあります(咳が出るから水分を摂っているということでは?とか)。また、なぜ喘息と関連するかについては、これまでにも言われていた「果糖」や「炎症」、添加物などが考えられるとのことですが、詳細は不明。

いずれにしても、糖分が多いソフトドリンクを飲みすぎるのは(栄養の観点からしても)あまりお勧めできないかと。ほどほどに味わっていきたいですね。

 

 


タバコの臭い

2019-03-16 | 医学・医療・健康

患者さんを診察するとき、タバコの臭いが気になることがある。気になる、というだけでなくせき込んでしまうこともある。

タバコの臭いはかなり強烈で、しかもしばらく部屋に残る。ヘビースモーカーの方を診察した後の診察室には、しばらくの間は喘息もしくは気道の過敏な患者さんに入っていただくべきではない。空気清浄機必須である。

しかし最近、以前と異なる臭いが気になることが増えてきた。

加熱式タバコである。

加熱式だからまあいいかと、健診や人間ドックの受診時にも、おそらく朝からタバコを吸ってこられるらしく、診察するとなにか独特の、場合によっては金属の果物のような(?)、へんな臭いがするのでわかる。

少し離れていても臭いを感じるということは、それだけ喫煙者の方から発散されているものがあるわけで、加熱式タバコからの受動喫煙も相当あるのだろうなと思える。煙が見えないだけに、むしろより危険かもしれない。

紙巻タバコにしても加熱式タバコにしても、周囲の方々、同居のご家族、特にお子さんの受動喫煙が気になるところである。

少し前の新聞記事があったので参考までに。

「広がる加熱式たばこ「受動喫煙の心配なし」は大きな誤解」


皆様、医療機関(健診センター含む)を受診するときには、タバコを吸わないでいらしていただきたいと思います。

 

 


リウマチ治療でバイオを減量または中止できるか?

2019-02-16 | 医学・医療・健康
gooブログにもやや慣れてきたので、そろそろ、一応専門としている関節リウマチの話題について、少しずつですが取り上げていこうと思います。

今回は、バイオ(生物学的製剤)を使って治療しているリウマチ患者さんが、バイオの量を減らしたりバイオ治療を止めたりできるのかを見た最近の臨床研究を紹介します。

Brahe CH et al.
Dose tapering and discontinuation of biological therapy in rheumatoid arthritis patients in routine care - 2-year outcomes and predictors.
Rheumatology (Oxford). 2019 Jan 1;58(1):110-119. doi: 10.1093/rheumatology/key244.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30169706

今は以前と違って、関節リウマチの治療は「寛解」を目指し、そして実際に寛解に達することが珍しくなくなっている状況ですが(しかしながら、そうは言ってもやはりなかなか治療が今ひとつ効かない患者さんも一定の数いらっしゃるのがまだまだ・・というところですが)、寛解に達した後に治療をどうしていくかということについては、いまだ試行錯誤というところではないかと思います。

今回は、寛解を長期に維持できている患者さんで、バイオを減らしたり止めたりして、その後の経過を2年間追跡してみたという報告です。

調査対象は143人(91%がTNF阻害薬、9%がTNF阻害薬以外のバイオを使用し、DAS28-CRP 2.8以下でレントゲン上、前年に骨病変の進行がみられなかったリウマチ患者さんです。
バイオは、まず標準治療量の2/3に減量、16週間後に1/2に減らし、さらに寛解が維持されていれば、32週間でバイオを中止。
その間に再燃や骨病変進行がみられた場合には減量を中止して1ステップ前の量に戻し、その後は減量しないというプロトコールです。

141名が2年間追跡調査された結果、2年目において、87名 (62%)がバイオ減量成功。 26名 (18%) は2/3量、39名 (28%) は1/2量、そして22名 (16%) はバイオ中止。
一方で、54 名 (38%)は減量前の当初の量を継続されていました。
レントゲンで骨病変が進んでいたのは9名 (7%)と、一部の方のみでした。

バイオ減量がうまくいくかどうかの予測因子は、その前のバイオ使用が1剤以下、男性、MRIを用いたベースの関節炎スコアが低かったことなど。
バイオ中止についてはIgM-RF(リウマチ因子)が陰性であることが予測因子として指摘されました。

ということで、

だいたい2/3の患者さんで生物学的製剤は減量でき、一部では中止も可能であったという結果でした。

もちろん、これを参考に、実際には個々の患者さんの状況に沿った治療を考えていくことになりますが、いずれにしても、リウマチを治療するに当たっては、なるべく早い段階で寛解を導入することが、後々のためにも重要・・ということですね。