まずは昨年12月16日放送のNHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」
30年ほど前、ブラジル・アマゾン領域で、たった二人でいるところを「発見」された、誰にもわからない言葉を話す全裸の男たち。
その一人、仮に「アウラ」と名付けられた男は、現在推定60歳前後。
現在、政府による保護区に建てられた小屋で、与えられた衣服を着、脚が悪いため杖に頼って歩き、「保健所」の看護師から食事を受け取って食べる毎日を送っている。
アウラと、もう一人の「アウレ」とは、発見後、各地の先住民族のための「保護区」を転々としたが、他の先住民族と共には長く住むことができなかったという。
その、アウラの弟だったのかもしれないアウレは、数年前に癌で死去。アウラは、彼の部族の「最後のひとり」となった。小屋で肺炎の治療を受けている姿に、彼の負った年齢を感じる。
これまでにもイゾラドについての紹介番組は観たけれど、今回衝撃的だったのは、ブラジル中探しても、彼の言葉を理解できるものがもういない・・ということだ。
自分の言葉を語っても誰にも理解してもらえない。それどころか、同じ部族、同じ生活様式、同じ歴史を共有するものが、もう誰もいない。
そんな状況を想像すると、その胸中ははかりしれない。
アウラの隣に、言語学者のノルバウ・オリベイラ氏が住み込んでいる。他の先住民族の言葉は完璧に理解しているというノルバウでも、アウラの話す言語について、約30年かけて収集できた単語は800語程度。
会話は、単語と単語をつなぎ、その間を埋める作業にしかならざるを得ない。
そんなアウラが、昔何があったのか、なぜ誰もいなくなったのかを問われたときに発した単語は、
「死」「非先住民」「カヌー」「髭」、それに「大きな音」「火花」であったという。
そして彼が30年前に住んでいた森は、今は採掘業者のテリトリー、牧場になっている。
彼の部族に何が起こって、彼らは男二人だけになったのか。それを示す記録はない。
言語化できない記憶だけがあり、それは今や消え去ろうとしている。
「誰にもわからない言葉、誰とも分かち合えない歴史」というナレーションが重く響いた。
NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」