なんで俺が高円寺にいるんだ。なんでミッションズなんだ。俺はかつて城東地区全域でちょっとは名の通ったイベンターだった。その前はやはり城東から千葉にかけての3店舗のブッキングを歴任した。その間、当然自らのアーティスト活動もあった。その俺がなぜ、高円寺なんだ。そもそも高円寺ってなんだ。高円寺っぽいとか、高円寺のバンドがどうこうとかよくみんなが言う。その歴史は下北沢や渋谷よりもずっと古い歴史的背景がある。俺はそれを理解してるのか。そもそもこの街は俺を受け入れているのか。そう言いつつも俺はもうこの街に居ついて7年目になる。中には高円寺を俺が壊したとか、もっとひどいと日本のライブハウスシーンは辰野が壊したとか言われることもある。ひどい話だ。こんな小物捕まえてよく言ったもんだ。俺にそんな力があるわけないだろう。
誰だってナメられるのは嫌だ。自分のやってる事に誇りを持ちたい。俺はウチのスタッフを誇りに思ってる。素晴らしいスタッフに恵まれてるって思う。だから、ウチのスタッフがいるこの箱がナメられるのは嫌だ。じゃあナメられるってなんなんだ。ホントにナメられてるのかその結論は。俺が被害意識過剰なだけじゃあないのか。そんな事を思いながらも、色々な非常識を押し通して、ナメられないように企画を作ってきた。36時間LIVE。100人の弾き語り。他にもライブハウスの常識でやってたらナメられると思って必死だった。中でもこの、5月のアニバーサリーは、毎年無理してギャラをはたいて有名アーティストを呼んだり、普段出ないようなバンドに声をかけるきっかけにしたり、とにかく、無理もしてきた。
そして8周年を迎えた。毎年アニバーサリーは孤独が一層増す。ブッキングは孤独との戦いだ。人が集まれば集まるほど、盛り上がれば盛り上がるほど、俺はそのかやの外だ。そう思っていた。だが今年は俺が作ったアニバーサリーじゃなかった。今年は正直、例年に比べて大して無理はしていない。いつものメンツが大半を占めている。むしろ俺はそいつが嬉しかった。だがそれだけじゃなかった。今年のアニバーサリーには出演者1人1人が、ミッションズの一員として、自分のアニバーサリーとして、この企画に参加しているような空気があった。それは初日から感じられたし、全ての日程が本当に愛に満ちていたと思う。
高円寺は儲からない街だ。高円寺でライブハウスをやっても儲からない。ビジネスとしては不適だ。みんないい奴らだが、良い意味でも、悪い意味でも金に頓着がないからだ。貧乏人ばかり。金払いがいいとも言えない奴も多い。なんで俺は高円寺でやってるんだ。そもそも高円寺ってなんなんだ。ずっと疼いていたその葛藤に結論がでた。
みんな意識も目的も違うが、ミッションズに来てくれて、ミッションズで遊んでくれた。このアニバーサリー期間それがわかった。今まではみんな、ここが高円寺のライブハウスだから来ていた。ここでライブがしたい、ライブが見たいから来ていた。でも今年は違った。それに気づいた。みんなここがライブハウスだから来てるんじゃない。みんなここがミッションズだから来てるんだって。そうなったんだ。この場所は8年かけて。
なんで俺が高円寺にいるんだ。そもそも高円寺ってなんだ。俺はミッションズにくる仲間がいるから高円寺にいるんだな。高円寺がそもそもなんであろうか知ったこっちゃない。ここが、こいつらが、俺の高円寺じゃねえか。
みなさん本当にありがとうございます。
