東京でカラヴァッジョ 日記

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アメリカン・ポップ・アート展(その2)(国立新美術館)

2013年08月24日 | 展覧会(西洋美術)

アメリカン・ポップ・アート展
2013年8月7日~10月21日
国立新美術館

第6章「アンディ・ウォーホル」について記載する。

1:キャンベル・スープ

 ウォーホルといえば、キャンベル・スープ。

 我が家にもユニクロのTシャツがあるように、ウォーホルの絵としてのキャンベル・スープは馴染み深い。
 一方、商品としてのキャンベル・スープには縁がない。一般の日本人で飲んだことがある人は少ないだろう。
 私も飲んだことはない。と思っていたら、実は家でそれと知らずに2缶飲まされていたことが今回判明した。教えてくれればよかったのに。

本展では、キャンベル・スープ作品が3点出品されている。

≪キャンベル・スープ1≫(1968)
 縦2×横5の10点組で、10種の基本デザインの缶が並ぶ。

≪キャンベル・スープ2≫(1969)
 同様の構成で、缶のデザインにちょっとしたバリエーションが加わる。
 この絵の前で、お母さんが小さな息子に尋ねていた。
 「○○くん、どれが食べたい?2つまでえらんでいいよ。」
 「これ。と、これ。」
 「やっぱり。それだと思った。」
 確かにこの10缶のなかなら、興味を惹くだろうデザインの2缶だった。

≪200個のキャンベル・スープ缶≫(1962)
 本展の目玉。
 182.9cm×254.3cmの大画面に、縦10×横20の計200缶が並ぶ。
 1962年作だから、ウォーホルがキャンベル・スープを描き始めた初期の作品である。
 パワーズ夫妻が他のコレクターから譲ってもらった作品らしい。
 
 ずっと眺める。缶が何種類あるのか数えたりする。今回のマイ・ベスト。

 チラシ1面に、“それはまさに、ポップ・アートの「モナリザ」”とある。
 「モナリザ」という言葉で、何を言わんとしているのだろう。

 なぜ、キャンベル・スープ作品がここまでポピュラーになったのか。
 そもそものスープ缶自体のデザインが優れていたことが基本にあるのだろう。

2:ケロッグ・コーンフレークの箱(1964)
 ウォーホルは、商品の荷造り用の段ボール箱を全く同じサイズとデザインに模した立体作品を制作している。
 ブリロ洗剤、ハインツのトマトケチャップ、デルモンテのピーチ缶、キャンベルのトマトジュースの箱、ケロッグ・コーンフレークの箱、モットのアップルジュースの箱。
 このなかでは、ブリロ洗剤が有名らしい。その箱自体のデザインが優れているからであるらしい。
 本展に出品されたのは、≪ケロッグ・コーンフレークの箱≫。
 日本人にとっての商品の馴染み度を考えると、より作品にとっつきやすくするという点で、極めて適切な選択と思う。

3:マリリン(1967)
 縦5×横2の10点組。ウォーホル製のマリリンのお馴染みの顔がいろんな色彩で並ぶ。
 なぜ、縦5×横2なのだろう。上の方が見ずらい。
 他の10点組作品と同様に縦2×横5だと、展示の趣旨に合わないのだろうか。

4:ジャッキー3(1966)
 ウォーホルのジャッキー作品は、全部で8種類の写真が使われているらしい。
 本作は、うち4種類を1点ずつ使った黒一色の小さな作品である。
 なお、いわき市立美術館は、5種類16点からなる大型のジャッキーを所蔵しているそうである。

5:電気椅子(1971)
 左側に1点、右側に縦3×横3の9点を並べた10点組。
 1962年から1967年に手がけられた「死と惨禍」シリーズで、最も長期にわたって制作された主題。
 電気椅子には、広い部屋の中央に電気椅子があるパターンと、トリミングして電気椅子をクローズアップしたパターンがあり、本展出品作は後者。
 きつい色彩が使われており、今一つピンとこない。

6:毛沢東(1972)
 縦2×横5の10点組。
 顔の両側に、ペンの試し書きのような黒い線が走っているのが面白い。

7:花(1970)
 ウォーホルの作品の中で、もっとも売れた作品であるらしい。

8:キミコ・パワーズ
 ウォーホルによる注文肖像画。
 誰でも一定の額、25,000ドル、2点セットなら40,000ドルを払えば、その肖像画を作るシステムであったらしい。
 注文者にとっても、ウォーホルに肖像画を制作してもらうことが一種のステータスとなった。

 本展では、キミコ氏の肖像画が複数種類があるが、和服姿のキミコ氏、和服姿も何点かあるが、縦3×横3の9点組(1972)の作品が一番印象的。今回のセカンド・ベスト。

 背景、顔、くちびる、和服の襟。
 何色にするのか。どの部分を同じ色とし、どの部分だけ色を変えるのか。9パターンが展開される。

 色彩を純粋に楽しむ作品なので、1点25,000ドルや2点40,000ドルでは充分に楽しめない。
 やはりこの位(9点180,000ドル?)の規模がないことには。

 マリリンも、同じ発想の作品にも見える。が、純粋に色彩を楽しむ注文肖像画と異なり、マリリンには何か違うものが潜む気がする。


 宮下規久朗氏の『ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡』(光文社新書、2010年刊)を参考させていただいた。
 同書には、いろんなウォーホルの代表作が紹介されている(図版が白黒の小さな写真のみなのが残念)。
 もっと作品が見たい。
 来年(2014年)2月から森美術館で開催予定の「ウォーホル展」に期待する。 



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