東京でカラヴァッジョ 日記

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「みちのく いとしい仏たち」(東京ステーションギャラリー)

2024年01月28日 | 展覧会(その他)
みちのく いとしい仏たち
2023年12月2日〜2024年2月12日
東京ステーションギャラリー
 
 
 北東北3県(青森・岩手・秋田)の民間仏の展覧会。
 江戸時代メインの民間仏が約130点出品される。
 
 
民間仏とは。
 幕府や諸藩によって、寺院が「本山」とそれに属する「末寺」に整理された近世以降、日本各地の寺院本堂の形状や荘厳(仏壇の装飾など)は宗派ごとに均一化され、同時に大阪・京都・江戸・鎌倉などの高い技術をもつ工房で制作された端正な仏像・神像が祀られるようになりました。
 いっぽう、地方の小さな村々では十王堂(地蔵堂、閻魔堂)や観音堂など集会所を兼ねた場所が人々の拠り所でした。
 こうした場所や民家の神棚に祀られた十王、地蔵、観音、大黒天・恵比須などの木像は、仏師ではなく地元の大工や木地師らが彫ったもので、これを「民間仏」といいます。
 粗末な素材を使って簡略に表現された民間仏は、日常のささやかな祈りの対象として大切にされてきました。
 
 
 とんでもない姿形をした仏像・神像。
 ゆるカワ風の仏像・神像。
 
 職業仏師ではない者、木の扱いには慣れているものの、仏像に関する図像や知識には欠ける民間工人の手による彫像。
 
 そのぶっ飛びぶりも、おそらく見本・手本となるものがあったのだろう。
 
 その拙さ、ぎこちなさは、概して粗末な素材による一木造であることからきているところも大きいだろう。村人たちにとっての霊木で、落雷や風水害で倒れたなどして木像にして祀ることにした、だったりもする。創意工夫は、職業仏師による彫像とは異なる面で発揮されたのだろう。
 
 出品された民間仏は、展覧会に選抜されただけあって、極めて個性豊かであるが、民間仏全体としては、もっと地味な世界なのかも。造形を楽しむ美術史の世界というよりも、民間仏を生み祀り守ってきた村人たちの生活史・社会史の世界なのかもしれない。
 
 2021年の神奈川県立歴史博物館「十王図」展で見た江戸時代のヘタウマ風十王図を思い出す。民間仏と似た位置にいるのか。
 
 北東北を中心に民間仏を長年にわたり調査研究してきた本展監修者の須藤弘敏氏(弘前大学名誉教授)による作品解説が楽しい。
(微笑み、やさしさ、かわいらしさに繋げ過ぎの感もあるが、それが選抜基準であったのかも。)
 
 
【本展の構成】
1 ホトケとカミ
2 山と村のカミ
3 笑みをたたえる
4 いのりのかたち 宝積寺六観音像
5 ブイブイいわせる
6 やさしくしかって
7 大工 右衛門四良(えもんしろう)
8 かわいくて かなしくて
 
 
 
 日本で最初の大規模な民間仏の展覧会だという本展は、岩手県立美術館、京都の龍谷ミュージアムを巡回し、東京ステーションギャラリーが最後の巡回地となる。


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