東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「式場隆三郎 腦室反射鏡」展(練馬区立美術館)

2020年10月30日 | 展覧会(その他)
式場隆三郎 腦室反射鏡 
2020年10月11日〜12月6日
練馬区立美術館
 
   式場の名前を初めて認識したのは、2017-18年の東京都美術館「ゴッホ展-巡りゆく日本の夢」の第2部「日本人のゴッホ巡礼」によって。
   精神科医にして、ゴッホ研究家(精神病理学的な研究)。日本のゴッホ普及に大きな役割を果たした(ゴッホ複製画展の開催など)こと。
 
 
   本展では、それにとどまらない超人的と言える幅広い活動を行なっていたことを知る。
 
   精神科医であるだけではなく、病院の経営者。ゴッホだけではなく、民藝運動、山下清、初期の草間弥生など。医学やゴッホ、芸術に関する著作のみならず、サド侯爵や性教育書など。さらには、出版社やホテルの経営、バスケットボールへの関わりなどなど。
 
 
   式場が活動していた時代を知らない私の関心は、専らゴッホ関連。
 
   昭和26年9月の銀座松坂屋での「ゴッホ展」。昭和28年5月の日本橋丸善での「生誕100年 ゴッホ展」とその後の全国巡回。式場が全面的に推進したこれら展覧会は、ゴッホ作品「本物」ではなく「複製画」の展覧会であった。
 
   本展では、これら複製画展に出品された「複製画」が30点強も展示されている。式場が自ら蒐集したものだという。色調はやむを得ないが、サイズも必ずしも原寸大でない。元の作品を知らない作品も結構あったりする。この時代の日本人はこのような「複製画」展を通じてゴッホを知ったのか。
 
   ちなみに、「本物」によるゴッホ展が初めて実現するのは、昭和33年10-12月の東京国立博物館と京都市美術館での「フィンセント・ファン・ゴッホ展」。クレラー・ミュラー美術館所蔵作品から油彩60点・素描70点の出品、現在から見ても豪華な作品群からなる大展覧会であった。
 
   あと、本展の展示で面白く見たのは、複製画展に展示されたという「ヴァン・ゴッホ遍歴図」。素朴な感じが良い。
 
 
【本展概要(チラシより)】
   式場隆三郎(1898-1965)は現在の新潟県五泉市に生まれ、新潟医学専門学校(現・新潟大学医学部)に学んだ精神科医であった。医業のかたわら、民藝運動、ゴッホ論、精神病理学入門、性教育書に至る驚くべき健筆をふるい、生涯の著書は約200冊に及ぶ。ゴッホ複製画展や山下清展などの事業も手がけ、広範囲な大衆の関心と趣味を先導した。式場の多分野にわたる啓蒙的な活動は、私たちの芸術観の形成(例えば「天才/狂気」「制作/宿命」「芸術/生活」といった観念連合)にあずかるものであった。幅広く時代に導かれ、幅広く時代を導いた式場は、近現代日本の文化史に重要な文脈を与えたのである。可視(科学)と不可視(芸術)の両極を往還した特異な個性を評する文字として、副題を式場の著書(1939年)から採って「腦室反射鏡」とした。その多彩な足跡を、約200点の作品・資料を通してたどる。


2 コメント

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こんにちは (続強子の部屋)
2020-10-30 11:26:30
市川に式場病院がありました。
バラ園を一般の人が見学できました。
高価なバラが沢山あったそうです。
私も一回行きました。綺麗でした。
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Unknown ()
2020-10-30 20:46:02
強子 様
コメントありがとうございます。
式場病院のバラ園については、本展覧会でも紹介されていました。昭和26年に造成されたとのこと。
市川には土地勘がないのですが、地元の方々に親しまれているようですね。
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