東京でカラヴァッジョ 日記

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《キリストのむち打ち》ピエロ・デッラ・フランチェスカ

2018年04月07日 | 西洋美術・各国美術
   ピエロ・デッラ・フランチェスカの代表作の一つ、《キリストのむち打ち》。
 
 
   イタリア・マルケ州の丘陵の街、ウルビーノにあるマルケ国立美術館が所蔵する。
 


   縦58.4cm×横81.5cm。1460年代前半の制作。
 

   画面の左端に描かれたローマ総督ピラトが座る椅子の台座には、「ボルゴ・サン・セポルクロ出身のピエロ作」という、古代風の文字で記された署名がある。このサインと際立った質の高さのために、本作品がピエロの真筆であることは、一度も疑われたことはない。

 

   2枚のポプラ材を横につなげたパネルに石膏と膠、毛織物で下地を整えた後、テンペラと油彩の混合技法で描かれたと考えられている。
 
 
   保存状態は良好であるが、完璧ではなく、1864年には過剰な洗浄が指摘されている。1916年に美術館に移された後、1930年に修復が行われたが、2枚の板を蝶番でつないだことによって、中央の接続部分に剥落が生じた。戦後数回行われた修復の結果輝きを取り戻し、「たわみ」はあるが、安定した状態に保たれているという。
 
   
 
   本作には、契約書など作品の制作に関わる史料やこの作品に言及した同時代の文献が残っていない。
   さらに描かれてからほぼ3世紀間、いかなる文献史料にも登場しない。公的場所にあったのではなく、どこかに秘蔵されていた可能性が高い。
   最初の史料は、18世紀前半に作成されたウルビーノ大聖堂の財産目録。大聖堂の聖具室にあると伝えている。
   したがって、注文主や制作の経緯、目的や設置された場所などに関しては何も分からない。
 
 
   そもそも、ピエロとウルビーノとの関係、そしてピエロとウルビーノ公であるフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロとの関係を示す史料自体がほぼない。
 
 
   史料はないが、ピエロが、生地ボルゴ・サン・セポルクロから約70kmの距離にあるウルビーノと深く関係を持っていたことは確かである。
 
 
   現存ピエロ作品のなかで、ウルビーノと結びつけうる作品としては4点、本作のほか、ウフィツィ美術館所蔵《ウルビーノ公フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ夫妻の肖像》、ブレラ美術館所蔵《モンテフェルトロ祭壇画》、マルケ国立美術館所蔵《セニガッリアの聖母》が挙げられる。
 
 
   なお、本作は、1975年2月6日、《セニガッリアの聖母》およびラファエロ作《無口な女》とともに、美術館から盗まれる。翌年3月、スイスのロカルノで回収されている。
 
 
 
✳︎  石鍋真澄著『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』平凡社刊、より。
 
✳︎  mayumi- romaさんのブログ「ローマより愛をこめて」のマルケ国立美術館の記事と写真があまりにも素敵なのでリンクを張らせてもらいました。
   ウルビーノ、いつの日か行きたい!
   イタリアで未訪問の街でいつの日か行きたい街ベスト3は、ラヴェンナ、サン・セポルクロ、ウルビーノ。なお、再訪したい街は、訪問したことのある街全て(全て、といっても少ない数だけど)。
 


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