なにがなんだか ver.goo

意味不明、てんででたらめ、カオス。

黒野家の人々「キョン編・12月20日放課後」

2008-01-05 20:21:15 | 黒野家の人々
 一日の授業がすべて終わり、放課後である。
 ハルヒのターゲットであるところの二人は終業のチャイムと共に何時の間にかいなくなっており、ハルヒが悔しがっていたのを除けばいつもどおりの放課後である。
 部室でまた会うのはわかりきっていることだが、ハルヒと別れ、俺はSOS団の部室に足を運ぶことにした。
 部室をノックすると、朝比奈さんの可愛らしい返事。
 どうやら、入っても問題なさそうだ。
 ノックせずに入って、以前えらい眼福な……いやいや、とんでもない目にあわせてしまったからな。
 部室のドアを開けると、朝比奈さんと長門の二人だけ。
 朝比奈さんはいつものメイド服、長門もいつもどおり部屋の隅で本を読みふけっている。
 そうなると、俺もいつもどおり席に着き、古泉かハルヒが来るまで時間を潰すだけだ。
 うむ、ここまではいつもどおり、何も変わったことなど起こりはしない。
 俺の中での普通の一時だった。
 だが、やはり神様とやらは俺のことが嫌いなのか、とんでもないトラブルを持ち込んでくれやがった!

???「失礼します」

 そう言って部屋に入ってきたのは四人の生徒。
 その中に、俺のクラスの転校生二人が入ってたのは正直びっくりだ。

中島「あれ? キョン君。何でこんなところに?」

「それはこちらが聞きたい。何の用だこんなところに」

???「うぅわ。思った以上に酷いなここ」

???「そうだね、次元が歪みまくってる」

 何か物騒な響きが聞こえてくるが、その二人を無視して、中島とランスターに目を向ける。

ランスター「ちょっとなのはさんと校内見学よ。ここって部室?」

「一応な。だが、今は取り込み中だ。すぐに別の場所に行くことをお勧めする」

 ハルヒが来たらなにが起こるかわからんしな。

ランスター「……女の子にメイド服着せて取り込み中? ……なにしようとしてたのよ」

「まて、これは俺の趣味じゃない。むしろハルヒの趣味だ」

中島「ハルヒって、涼宮さん? 彼女ってその……そっちの趣味が?」

 そっちとはどっちのことだ?
 不穏当な発言は控えてくれないか?
 そして、すぐに回れ右して立ち去ってもらいたい。でないとそのハルヒが来てしまう。

ハルヒ「あーーー!! いないと思ったら直接来てたのね!」

 ……遅かったか。
 彼女らの後ろに現れる暴風女涼宮ハルヒ。
 ものすごい剣幕で中島とランスターに詰め寄り、大声で威嚇する。

ハルヒ「ここであったが百年目よ! 観念して正体をあらわしなさい!」

中島「え!? 何でばれ「ちぇい」きゃん!」

 隣の男子にきれいに足払いを決められ、転倒する中島。
 あいつ、なかなかできる!
 
???「……えっと、失礼、うちの後輩が君に何か疑われるようなことでも?」

 彼は平然とハルヒに口をはさむ。
 生徒会長以外でハルヒに意見を出せる人物を俺ははじめてみた。
 だが、当然ハルヒの勢いは止まることを知らない。

ハルヒ「あんたがこの子達のボス? ここがSOS団のアジトだと知ってて乗り込んだのね? あんた達がよからぬことを企んでいるのは知ってるのよ! 白状なさい!」

 ……どうやったらそこまで話が飛躍するのか、本当に教えてもらいたいところだ。
 相手のほうは……笑ってやがる。

???「よからぬ事とはどんなことだ? ぜひ教えてほしいな」

ハルヒ「そうね……このSOS団をのっとろうってことでしょ!?」

 こんなところ乗っ取ってどうすると言うんだお前は。

???「はずれ。というか、今考えたろそれ」

 うおお。ハルヒに普通に突っ込んだよ。

???「あの、私たちは本当にたまたまここに入っただけで、あなた達に危害を加えようとは考えてないんだよ?」

 サイドポニーの女生徒が、二人に割ってはいる。かなり落ち着いた物腰だが、相手に有無を言わせぬ迫力があるのは確かだ。
 さすがにその女性には反論できないのか、ハルヒはづかづかといつもの団長席に座り、四人を胡散臭げに見つめた。

ハルヒ「じゃあ何? 入団希望者? それだったら歓迎するわよ?」

 常識的に考えて、今までの行動を見て入団したいと思う奴はいないだろ。

???「ええと……少したずねたいことがありまして」

 男子生徒が苦笑を浮かべてハルヒに聞いてくる。

???「ここ最近、大切な鏡をなくしましてね? こういうものなんですけど……」

 と、写真をハルヒに見せる。
 横からその写真を覗くと、やけに古ぼけた手鏡がそこに写っていた。

???「心当たりはありませんか?」

 やんわりと聞いてくる男子生徒。
 だが、何故それをハルヒに聞く? 普通、そういうものは警察に聞くものだろう?

???「ああ、すでに警察には聞きまして。こうやって地道な聞き込みをおこなっているんですよ」

 なるほどね。
 ハルヒに心当たりがあるとは思えんが……

ハルヒ「……これかしら?」

 あるのかよ!
 ハルヒが自分の鞄から取り出したのは写真のものと同じ手鏡。
 それを見ると、中島やランスター、もう一人の女性とも安堵の笑みを浮かべる。

???「間違いないです。助かりました」

ハルヒ「……こんどから、無くさないようにしなさいよ?」

 駄々をこねて返さないかと思ったが、ハルヒもそこまで子供じゃなく、素直に彼に手鏡を差し出す。

古泉「遅れてすみません」

 と、ここで古泉がドアを開けて入ってきた。
 それに驚いたのか、彼が受け取った鏡を手から滑らせる。
 鏡は垂直に地面に落下し……音を立てて砕け散った。

古泉「……? 何の音です?」

 鏡が割れた音だ。
 只の鏡が割れただけのはずだ。
 なのに、中島達四人は顔面蒼白になり、長門が立ち上がって、何かを警戒している。
 なにが起こるというんだこれは?

古泉「……僕、何か悪いことしたんでしょうか?」

「間が悪かったのは認める。だが、何か起こりそうだというのは間違いなさそうだな」

 俺も椅子から腰をあげ、何か起こってもいいように朝比奈さんの前に立つ。
 朝比奈さんはおどおどした顔で様子をうかがっている。
 ハルヒはそんな俺らをきょとんとした顔で見回し、

ハルヒ「なによ。鏡が割れただけでしょ? なにそんな怖い顔してるのよ?」

 只の鏡だったらな。
 だが、少なくとも中嶋たちは(仮定ではあるが)魔法使いだ。
 そいつらが探してた鏡が、只の鏡であるはずがない。
 
ハルヒ「なんなのよ! いらつくわね。弁償でもしろって言うの!?」

???「いや、弁償できるものじゃない。取り落とした俺も悪かった」

 青い顔しながら、それでも冷静にハルヒの言葉に対応する男子生徒。
 とりあえず、今のところ何も起こってはいないみたいだが……

ハルヒ「わ、悪かったわね! ……時間でも戻せれば、元通りになるのに……」

 その一言で、男子生徒の顔がさらに青くなった。
 瞬間、俺の視界が真っ白に染まる。
 また、長門が何かしたのかと思ったが、背中に受けた衝撃で視界が元に戻る。
 ……なにが起こったのか確認するために周りを見回すと……やけに暗い。
 しかも、部室がいやに狭くなったような……いや違う。
 ここは……

「俺の部屋か?」

 ……て、ことは、今までのことは全部夢か?
 以前と同じように?
 ……いや、まて。
 確かにハルヒは言った。
 『時間でも戻せれば、元通りになる……』
 だとしたら、少なくとも昨日……12月19日になっているはずだ!
 慌てて俺は部屋の電気をつけ、腕時計の日付を確認した。
 ……そこには、驚愕の事実が記されていた。

 <4月10日>

 ……これは、戻しすぎといわないだろうか……?











 もちろん戻しすぎです。
 次回は次男編で種明かし。
 どうするんだこれ?