楽しみの泉を探してジャングルライフを満喫中!
Jungle Fire Water
青葉繁生
この作家さんを取り上げた番組を見た後、
紹介していた作品を古本屋で見つけた。で、すぐ読み始めた。
この方の作品を読むのは初めて。

=============================
「あげな女子と話ができたらなんぼええべねす」
東北名門校の落ちこぼれ稔、ユッヘ、デコ、ジャナリの4人組と、
東京からの転校生、俊介がまき起こす珍事件の数々。
戦後まもない頃、恋に悩み、権力に抗い、
伸びやかに芽吹く高校生たちの青春を生き生きと描く。
ユーモアと反骨精神に満ちた青春文学の傑作。
=============================
青葉の街にある一高の三年生たちの青春を描いた作品。
作者も一高生だというので、半分は本人の青春記なのだろう。
その時代とは光景や景観に違いはあると思うけど、
同じ地に住んでいるので時代は違えど場面を描き楽しめた。
どの時代も思春期の男の考える事は一緒。
しかも男子校。通りを進んだ場所には女子高があり、
主人公の稔は15分の通学路をことさらのんびり歩く。
華やかな学生服の女子を遠目に見つめては、
有名大学へ進学した自分を妄想し、帰郷したおりに、
その女子から羨望の眼差しで声を掛けられる場面を浮かべる。
妄想学園生活を終えると、割烹屋を営む自宅へ友人を呼び、
酒をかっくらい、近所の年上美人に恋心を募らせる。
稔、ユッヘ、デコ、ジャナリの4人組に、
東京から転校して来た都会派ぶった俊介を加え、
進学への危機感も抱かず、女中心の妄想話が広がる。
女子高との合同演劇を模索した俊介に、仲間の不純が芽生え、
お硬い女子校女子教員を説得して実現に漕ぎ着けるのだが、
思い描いた薔薇色の展開は蕾さえも見せることなく・・・
機会を逃すまいと合同デートを申し込んでみるものの、
やってきたのは、おかめのような顔をした女子一人だけ・・・
おかめに好かれた俊介は早々に用事を告げ退散、
周りの面々も外れくじを押し付け合うばかり。
外れくじを掴まされた者は暴走し、それが問題事に発展。
怒鳴り込んで来た女子校教師に校長は謝りつつも、
その女生徒にも非があると問題児たちを庇ってみせる。
今の時代では考えられない責任感のある大人がいた時代。
叱るだけの教育ではなく、正しき大人の背中を見せる。
4人が憧れていた年上美人は俊介の姉だった。
山登り帰りの電車が温泉町の駅に止まると、
ホームには校長と俊介の姉が仲良さそうに立っていた。
不倫?愛人?彼らの想像は怒りを帯びて膨れ上がり、
後日、飲み会帰りの校長を待ち伏せ暴行を加える。
しかし校長は暴行しているのが一高生だと気づいて、
この事は誰にも言うなと告げて帰って行く・・・。
冷静になった彼らは自分たちの愚行を話し合い、
校長宛の退学届を裏門校長(用務員)に渡すのだが、
校長は彼らの愚行を胸に包んで問題にしない。
立場や肩書きに縛られ融通の利かない大人が多い中、
この時代のこの場所には良き大人が存在していた。
今はもう無くなった青葉通りの屋台主人も、
彼らが一高生ということで飲食をツケにしてくれる。
様々な鬱憤が溜まった彼らは、酒に酔い、
街の表札を盗んで、学園祭で一斉お披露目する。
これが盗まれたという女子校の正真正銘の表札だ。
そんな事をしたら当然、大騒ぎになり新聞記事になり、
校長は教育委員会に呼び出され・・・
ほとんどの大人は責任逃れするけど、この校長は違う。
学園祭は生徒に自由にやっていいと言ったのは自分、
「校内で起こるすべての事の責任はわたしにある」
教育委員会でそう述べて、責任をとって校長職を辞する。
方言が頻繁に出てきて、その語感も味わい深い。
商店街が閑散とし、地元の方言も年々薄れ続け、
都会主導的な情報の奔流に土地柄まで流されそうな昨今。
人の温もりとか、郷土愛だとか、懐の深さだとか、
青き者たちの見本となるような大きな人の姿が眩しい。
作者がこの地に住んでいたのは、在学時の数年のみらしいが、
その後も何度もこの地に足を運び、交遊を深めていたのは、
こういう大きな人との巡り会いが心地良かったのかもしれないなぁ。
紹介していた作品を古本屋で見つけた。で、すぐ読み始めた。
この方の作品を読むのは初めて。

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「あげな女子と話ができたらなんぼええべねす」
東北名門校の落ちこぼれ稔、ユッヘ、デコ、ジャナリの4人組と、
東京からの転校生、俊介がまき起こす珍事件の数々。
戦後まもない頃、恋に悩み、権力に抗い、
伸びやかに芽吹く高校生たちの青春を生き生きと描く。
ユーモアと反骨精神に満ちた青春文学の傑作。
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青葉の街にある一高の三年生たちの青春を描いた作品。
作者も一高生だというので、半分は本人の青春記なのだろう。
その時代とは光景や景観に違いはあると思うけど、
同じ地に住んでいるので時代は違えど場面を描き楽しめた。
どの時代も思春期の男の考える事は一緒。
しかも男子校。通りを進んだ場所には女子高があり、
主人公の稔は15分の通学路をことさらのんびり歩く。
華やかな学生服の女子を遠目に見つめては、
有名大学へ進学した自分を妄想し、帰郷したおりに、
その女子から羨望の眼差しで声を掛けられる場面を浮かべる。
妄想学園生活を終えると、割烹屋を営む自宅へ友人を呼び、
酒をかっくらい、近所の年上美人に恋心を募らせる。
稔、ユッヘ、デコ、ジャナリの4人組に、
東京から転校して来た都会派ぶった俊介を加え、
進学への危機感も抱かず、女中心の妄想話が広がる。
女子高との合同演劇を模索した俊介に、仲間の不純が芽生え、
お硬い女子校女子教員を説得して実現に漕ぎ着けるのだが、
思い描いた薔薇色の展開は蕾さえも見せることなく・・・
機会を逃すまいと合同デートを申し込んでみるものの、
やってきたのは、おかめのような顔をした女子一人だけ・・・
おかめに好かれた俊介は早々に用事を告げ退散、
周りの面々も外れくじを押し付け合うばかり。
外れくじを掴まされた者は暴走し、それが問題事に発展。
怒鳴り込んで来た女子校教師に校長は謝りつつも、
その女生徒にも非があると問題児たちを庇ってみせる。
今の時代では考えられない責任感のある大人がいた時代。
叱るだけの教育ではなく、正しき大人の背中を見せる。
4人が憧れていた年上美人は俊介の姉だった。
山登り帰りの電車が温泉町の駅に止まると、
ホームには校長と俊介の姉が仲良さそうに立っていた。
不倫?愛人?彼らの想像は怒りを帯びて膨れ上がり、
後日、飲み会帰りの校長を待ち伏せ暴行を加える。
しかし校長は暴行しているのが一高生だと気づいて、
この事は誰にも言うなと告げて帰って行く・・・。
冷静になった彼らは自分たちの愚行を話し合い、
校長宛の退学届を裏門校長(用務員)に渡すのだが、
校長は彼らの愚行を胸に包んで問題にしない。
立場や肩書きに縛られ融通の利かない大人が多い中、
この時代のこの場所には良き大人が存在していた。
今はもう無くなった青葉通りの屋台主人も、
彼らが一高生ということで飲食をツケにしてくれる。
様々な鬱憤が溜まった彼らは、酒に酔い、
街の表札を盗んで、学園祭で一斉お披露目する。
これが盗まれたという女子校の正真正銘の表札だ。
そんな事をしたら当然、大騒ぎになり新聞記事になり、
校長は教育委員会に呼び出され・・・
ほとんどの大人は責任逃れするけど、この校長は違う。
学園祭は生徒に自由にやっていいと言ったのは自分、
「校内で起こるすべての事の責任はわたしにある」
教育委員会でそう述べて、責任をとって校長職を辞する。
方言が頻繁に出てきて、その語感も味わい深い。
商店街が閑散とし、地元の方言も年々薄れ続け、
都会主導的な情報の奔流に土地柄まで流されそうな昨今。
人の温もりとか、郷土愛だとか、懐の深さだとか、
青き者たちの見本となるような大きな人の姿が眩しい。
作者がこの地に住んでいたのは、在学時の数年のみらしいが、
その後も何度もこの地に足を運び、交遊を深めていたのは、
こういう大きな人との巡り会いが心地良かったのかもしれないなぁ。
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閨閥奔流
自動車メーカー物語がドラマでやっていて、
その原作本を探そうと思って作家を知った。
でも自動車物語の原作小説は絶版らしく入手困難らしい。

=============================
新聞、ラジオ、テレビの三社の社長に就任し、
マスコミの三冠王となった鹿野信元はそれに飽きたらず、
グループ百社をたばね、その頂点に立つ。
さらにその座を息子から女婿へ...。
権力に取り憑かれた一族の栄光と挫折を描く書下し問題作。
=============================
自動車メーカー物語の原作小説を探しまわっていたら、
この本を見つけた。タイトルを記憶してネットで調べると、
似たような本の著作権侵害などがあっての絶版本らしい。
普通に105円棚で見つけて増税前に確保した。
テレビ業界に興味があるわけでもないが、
フ○サン○イグループの成り上がりと暗黒的内容で、
いわゆる権力争いや利権争いといった内紛の歴史本。
登場人物名が該当人物をイメージしやすく、
同じような漢字や、似た読み方をさせた人物ばかり。
物語を追いつつ、ウィキペディアを確かめつつ、
そんな歴史があったのか~とか、この人は・・・と、
画像を調べて、登場人物像に重ねて読んだり・・・
ただ、物語としては心理描写などが少なく、
事実を元に肉付けして小説にしたような構成で、
冒頭の「殺せ」という入りからすると、
全体的に淡々と時代が紡がれて現在に至るという感じ。
大きな組織の裏側はどこも似たようなものなのでしょう。
期待したほど面白い内容では無かったかな。
その原作本を探そうと思って作家を知った。
でも自動車物語の原作小説は絶版らしく入手困難らしい。

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新聞、ラジオ、テレビの三社の社長に就任し、
マスコミの三冠王となった鹿野信元はそれに飽きたらず、
グループ百社をたばね、その頂点に立つ。
さらにその座を息子から女婿へ...。
権力に取り憑かれた一族の栄光と挫折を描く書下し問題作。
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自動車メーカー物語の原作小説を探しまわっていたら、
この本を見つけた。タイトルを記憶してネットで調べると、
似たような本の著作権侵害などがあっての絶版本らしい。
普通に105円棚で見つけて増税前に確保した。
テレビ業界に興味があるわけでもないが、
フ○サン○イグループの成り上がりと暗黒的内容で、
いわゆる権力争いや利権争いといった内紛の歴史本。
登場人物名が該当人物をイメージしやすく、
同じような漢字や、似た読み方をさせた人物ばかり。
物語を追いつつ、ウィキペディアを確かめつつ、
そんな歴史があったのか~とか、この人は・・・と、
画像を調べて、登場人物像に重ねて読んだり・・・
ただ、物語としては心理描写などが少なく、
事実を元に肉付けして小説にしたような構成で、
冒頭の「殺せ」という入りからすると、
全体的に淡々と時代が紡がれて現在に至るという感じ。
大きな組織の裏側はどこも似たようなものなのでしょう。
期待したほど面白い内容では無かったかな。
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時掛少女
閉店セールでまとめて買った内の一冊。
映画で有名すぎる作品。何度も映画を観た記憶はあるのに、
どんな終わり方だったのかが思い出せなくて・・・
映画じゃなく主演女優を観ていただけだったのでしょう。

=============================
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。
壊れた試験管の液体からただようあまい香り。
このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、
芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。
そして目を覚ました和子の周囲では、
時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。
思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。
わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。
=============================
薄い一冊で、しかも短編3作。表題作はそのひとつ。
ラベンダーの匂い、実験室、主役の中学小女1人に同級生の男子2人。
不可思議な事柄が起きて、デジャヴのような体験をして・・・
その辺は映画の記憶があるけど、それからどうだっけ?
主演のファンになり主題歌を聞きまくった青年期・・・
でも、やっぱり物語の結末が思い出せない。
そんな思いを抱えながら、映画場面を重ねながら読み終えて、
ああ、あの主題歌って・・・と思いつつ、恋愛感あったの?
なんて思いもあったりして・・・
放課後の理科室で掃除をしていた和子は、
物音を聞いて実験室に入り、ラベンダーの匂いを嗅いで意識を失う。
それから数日後、和子の周りで地震や火事が起き、交通事故に遭いそうになる。
が、しかし気がつくと数日前の朝だった。あの体験は夢だったのか?
学校では数日前に習った事が繰り返され、
やはりあの体験は記憶にあることを知り、
仲のいい同級生、深町一夫と浅倉吾郎に体験を打ち明ける。
地震や火事を予言した事で和子の話を信じた2人は、
理科担任の先生に和子の体験した現象を相談する。
先生はラベンダーの匂いを嗅いだ数日前の実験室に秘密があると言い、
和子は時間遡行の能力を使って数日前の実験室を訪れ、
あの時の物音の正体を知る事になるのだった・・・。
意外な人物の出現。そして驚愕の素性・・・
未来人と告げた人物は彼女達の記憶を消して未来へ戻るが、
和子の胸の中には、誰かを待つ思いが微かに残っていた。
映画やアニメ、ドラマなど何度も描かれているけど、
そこまで秀逸な内容なのかは微妙だと思うのだが・・・
○悪夢の真相
これも中学女子が主人公の物語。
高い所と般若のお面に以上に恐怖心を抱く。
その要因がなんだったのか、幼少時の体験が思い出され・・・
トラウマ、深層心理の話
○果てしなき多元宇宙
これも少女が主人公。パラレルワールド物語。
同じようで全く異なる別の世界を体験するのだが・・・。
映画で有名すぎる作品。何度も映画を観た記憶はあるのに、
どんな終わり方だったのかが思い出せなくて・・・
映画じゃなく主演女優を観ていただけだったのでしょう。

=============================
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。
壊れた試験管の液体からただようあまい香り。
このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、
芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。
そして目を覚ました和子の周囲では、
時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。
思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。
わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。
=============================
薄い一冊で、しかも短編3作。表題作はそのひとつ。
ラベンダーの匂い、実験室、主役の中学小女1人に同級生の男子2人。
不可思議な事柄が起きて、デジャヴのような体験をして・・・
その辺は映画の記憶があるけど、それからどうだっけ?
主演のファンになり主題歌を聞きまくった青年期・・・
でも、やっぱり物語の結末が思い出せない。
そんな思いを抱えながら、映画場面を重ねながら読み終えて、
ああ、あの主題歌って・・・と思いつつ、恋愛感あったの?
なんて思いもあったりして・・・
放課後の理科室で掃除をしていた和子は、
物音を聞いて実験室に入り、ラベンダーの匂いを嗅いで意識を失う。
それから数日後、和子の周りで地震や火事が起き、交通事故に遭いそうになる。
が、しかし気がつくと数日前の朝だった。あの体験は夢だったのか?
学校では数日前に習った事が繰り返され、
やはりあの体験は記憶にあることを知り、
仲のいい同級生、深町一夫と浅倉吾郎に体験を打ち明ける。
地震や火事を予言した事で和子の話を信じた2人は、
理科担任の先生に和子の体験した現象を相談する。
先生はラベンダーの匂いを嗅いだ数日前の実験室に秘密があると言い、
和子は時間遡行の能力を使って数日前の実験室を訪れ、
あの時の物音の正体を知る事になるのだった・・・。
意外な人物の出現。そして驚愕の素性・・・
未来人と告げた人物は彼女達の記憶を消して未来へ戻るが、
和子の胸の中には、誰かを待つ思いが微かに残っていた。
映画やアニメ、ドラマなど何度も描かれているけど、
そこまで秀逸な内容なのかは微妙だと思うのだが・・・
○悪夢の真相
これも中学女子が主人公の物語。
高い所と般若のお面に以上に恐怖心を抱く。
その要因がなんだったのか、幼少時の体験が思い出され・・・
トラウマ、深層心理の話
○果てしなき多元宇宙
これも少女が主人公。パラレルワールド物語。
同じようで全く異なる別の世界を体験するのだが・・・。
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古書堂伍
物語が大きく動きそうな前巻の終わり方だったので、
古本屋に行くたびに新巻あるかな~と探していて発見。
期待して読んだけど、大きい展開とはいかないような・・・。

=============================
静かにあたためてきた想い。
無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。
彼女の答えは・・・今はただ待ってほしい、だった。
ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。
謎めいたいわくに秘められていたのは、思わぬ繋がり。
脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。
だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。
邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?
すべての答えの出る時が迫っていた。
=============================
前巻の終わりで、ついに栞子に告白をした大輔。
肝心の返事は・・・もう少し待って欲しいと保留になり、
その事が念頭にあるのかないのか2人の関係は微妙な感じ。
とりあえず日々の業務を淡々とこなす大輔だったが・・・
せどり屋・志田の過去や秘めた思いが明かされたり、
栞子の唯一の親友(滝野蓮杖の妹)が出て来たり、
前作からの引き続きで栞子の母・智恵子が出て来たり、
それなりに脇役陣が絡んで奥行きを出しているけれど・・・
前巻の終わり方が今までとは違う「つづく」的な終幕だったし、
あの感じなら今作でドドンと大きな展開があると思い込んでしまった。
前作が長編的な構成だったのに対し今作は通常運転に戻っていた。
いままでどりの連作短編スタイルで話が進んで行き、
本にまつわる情報やら謎解きが展開されていく・・・。
手塚治虫や寺山修司のウンチクは面白かった。
まぁ、とりあえず大輔はきちんと返事をもらうけど、
返事する前に栞子が母親に会いに行かなきゃならないとか、
会って何を確かめたかったのかは微妙な感じかなぁ。
私は母親とは違う、古書への欲求に抵抗できる、
大事なものが気持ちの中にあるってことなのかな、ん~。
この流れだと次では終わらなさそうだな・・・
母親との確執、栞子の恋愛話が本筋なのかも知れないけど、
その部分に一段落がついても、本にまつわる話は続いて欲しい。
古本屋に行くたびに新巻あるかな~と探していて発見。
期待して読んだけど、大きい展開とはいかないような・・・。

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静かにあたためてきた想い。
無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。
彼女の答えは・・・今はただ待ってほしい、だった。
ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。
謎めいたいわくに秘められていたのは、思わぬ繋がり。
脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。
だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。
邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?
すべての答えの出る時が迫っていた。
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前巻の終わりで、ついに栞子に告白をした大輔。
肝心の返事は・・・もう少し待って欲しいと保留になり、
その事が念頭にあるのかないのか2人の関係は微妙な感じ。
とりあえず日々の業務を淡々とこなす大輔だったが・・・
せどり屋・志田の過去や秘めた思いが明かされたり、
栞子の唯一の親友(滝野蓮杖の妹)が出て来たり、
前作からの引き続きで栞子の母・智恵子が出て来たり、
それなりに脇役陣が絡んで奥行きを出しているけれど・・・
前巻の終わり方が今までとは違う「つづく」的な終幕だったし、
あの感じなら今作でドドンと大きな展開があると思い込んでしまった。
前作が長編的な構成だったのに対し今作は通常運転に戻っていた。
いままでどりの連作短編スタイルで話が進んで行き、
本にまつわる情報やら謎解きが展開されていく・・・。
手塚治虫や寺山修司のウンチクは面白かった。
まぁ、とりあえず大輔はきちんと返事をもらうけど、
返事する前に栞子が母親に会いに行かなきゃならないとか、
会って何を確かめたかったのかは微妙な感じかなぁ。
私は母親とは違う、古書への欲求に抵抗できる、
大事なものが気持ちの中にあるってことなのかな、ん~。
この流れだと次では終わらなさそうだな・・・
母親との確執、栞子の恋愛話が本筋なのかも知れないけど、
その部分に一段落がついても、本にまつわる話は続いて欲しい。
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悪辣世代
古本屋で新しめの本を入手すると、
先に入手してある本が後回しになる傾向があり、
それじゃあ奥底に埋もれると棚奥から引っ張り出した。
これもまた著者王道の銀行ものである。

=============================
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。
女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?
“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、
上らない成績・・・事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。
銀行という組織を通して、普通に働き、
普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。
=============================
いつもなら銀行員の1人が主人公となって物語が展開するが、
本作は銀行支店に勤めるそれぞれに脚光が当てられていき、
行員たちの繋がりや思い、ある事件の被害者、謎を究明する人、
その奥に潜んだ、ある行員の思いなどが浮かび上がっていく。
連作短編のような形で綴られた多視点で描かれる長編。
副支店長の古川は実績を上げられない新入社員の小山を叱るが、
小山は反抗的な態度を取り、銀行の姿勢に説明を求める。
高卒叩き上げで今の地位まで上りつめた古川には、
部下が上司に反論することが許せなかった。そして暴力を揮ってしまう。
小山の親が激怒し、告訴沙汰を匂わせ、銀行側は謝罪するのだが、
銀行の上尊下卑な体質に失望し退職してしまう。
ー
融資課の友野は融資案件が進行せず松岡課長に叱責される日々。
幼い娘と妻の未来を背負って励む友野だったが、
融資提案している会社は利率を理由に他行融資の話を出してくる。
他行に劣らない利率、上司からの圧迫、思い悩む友野・・・
そんな中、他行が国有化され低利を呑めなくなって、
融資提案先の社長が頭を下げに訪れる。
ー
現金100万円が紛失し行内は大騒ぎに・・・
各自の持ち物検査に及んだ際、北川愛理のバッグから、
日付の記された帯封が発見された。しかし愛理に覚えが無い。
帯封だけが発見され、現金は見つからないまま・・・
この不祥事を隠蔽しようと支店長らトップは身銭を切る。
愛理の恋人は女子行員に人気の三木だった。
その彼から意外な告白を受け、帯封を入れた犯人が浮かぶ。
しかし、いまだ100万円の行方は不明のまま・・・
愛理の上司である西木は雑誌付録の指紋判別キットを持ち寄り、
独自に犯人を探し始めるが・・・
ー
生真面目で精力的に動き回るものの結果が伴わない遠藤。
ことある毎に成績優秀な滝野と比較され叱咤を受ける日々。
遠藤の事を心配する上司の鹿野は無理するなと忠告するが、
遠藤は満身創痍で粗品を大量に抱えて飛び出していく。
やがて鼻息荒く大口契約を結べそうだと鹿野に報告する。
遠藤に案内され鹿野が向かった先にあったのは・・・
ー
人事部長の坂井は行方不明の行員の過去を調べていた。
失踪したのは100万円紛失事件を追っていた西木だった。
2人の子と妻がいる西木は周りに何も告げずに失踪していた。
ー
失踪した西木の後任になった竹本。
西木の机にあった品々を調べている内に、
失踪した彼が犯人像を掴んでいただろうと悟る。
西木の掴んだ証拠を明かすべきか悩んでいたが、
そこに栄転の話が上がり、竹本は胸に秘めたまま支店を去る。
ー
100万円紛失を知り、調査にきた黒田次長は、
支店の重要過誤を九条支店長に指摘する。
裕福な家庭で育ち、一流大学を卒業後、
銀行でもエリートの道を歩んできた黒田は、
ストレスからギャンブルにのめり込み窮地に陥った。
私財も使い込んだ男に浮かんだ起死回生の企み・・・
黒田は自分だけが知る過去の不正を九条に指摘される。
ー
融資課新人の田端は愛理と100万円紛失の真相に迫る。
田端は仕事に幻滅し、外資系銀行への転職を画策中である。
愛理に頼まれ、支店のエース滝野が新規獲得した顧客企業へ、
届け物を持って行くと、そこはオンボロアパートだった。
実績を上げ続けるエース滝野が不正を行っている?
ー
滝野の過去と妻子のいる温かな家庭が描かれる。
過去に裏金を受け取った事から道を外れ、
業績と引き替えに不正を行っていた滝野。
100万円紛失の謎を追っていた西木に尻尾を掴まれ、
愛する妻に子供を託し、覚悟を決める・・・。
ー
パート社員の晴子は未亡人で一人娘がいる。
西木の私物を家に届けるように言われ、
彼の事を調べているうちにあることに気づく。
滝野が不正を行った企業と西木は接点があったこと、
西木は兄の多額の借金の保証人となっていたこと、
すでに妻子と別居生活をしていたこと・・・。
ひょっとしたら西木は・・・
いやはや、それぞれが色んな悩みを抱え、重しを背負い、
不条理な世の中で居場所を見つけるために悶えている。
正義が清いわけでもなく、答えが定まっているわけでも無い。
視点を変えることによって物事は別の表情を見せ、
その微妙な変化は当事者でも知らない一面だったりもする。
上司と部下だけじゃない社内の関係が多岐に描かれ、
今回も切り口は違えど、いつもの安定した物語だった。
正しそうな顔をしている人ほど暗黒を背負っているのかも・・・。
先に入手してある本が後回しになる傾向があり、
それじゃあ奥底に埋もれると棚奥から引っ張り出した。
これもまた著者王道の銀行ものである。

=============================
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。
女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?
“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、
上らない成績・・・事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。
銀行という組織を通して、普通に働き、
普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。
=============================
いつもなら銀行員の1人が主人公となって物語が展開するが、
本作は銀行支店に勤めるそれぞれに脚光が当てられていき、
行員たちの繋がりや思い、ある事件の被害者、謎を究明する人、
その奥に潜んだ、ある行員の思いなどが浮かび上がっていく。
連作短編のような形で綴られた多視点で描かれる長編。
副支店長の古川は実績を上げられない新入社員の小山を叱るが、
小山は反抗的な態度を取り、銀行の姿勢に説明を求める。
高卒叩き上げで今の地位まで上りつめた古川には、
部下が上司に反論することが許せなかった。そして暴力を揮ってしまう。
小山の親が激怒し、告訴沙汰を匂わせ、銀行側は謝罪するのだが、
銀行の上尊下卑な体質に失望し退職してしまう。
ー
融資課の友野は融資案件が進行せず松岡課長に叱責される日々。
幼い娘と妻の未来を背負って励む友野だったが、
融資提案している会社は利率を理由に他行融資の話を出してくる。
他行に劣らない利率、上司からの圧迫、思い悩む友野・・・
そんな中、他行が国有化され低利を呑めなくなって、
融資提案先の社長が頭を下げに訪れる。
ー
現金100万円が紛失し行内は大騒ぎに・・・
各自の持ち物検査に及んだ際、北川愛理のバッグから、
日付の記された帯封が発見された。しかし愛理に覚えが無い。
帯封だけが発見され、現金は見つからないまま・・・
この不祥事を隠蔽しようと支店長らトップは身銭を切る。
愛理の恋人は女子行員に人気の三木だった。
その彼から意外な告白を受け、帯封を入れた犯人が浮かぶ。
しかし、いまだ100万円の行方は不明のまま・・・
愛理の上司である西木は雑誌付録の指紋判別キットを持ち寄り、
独自に犯人を探し始めるが・・・
ー
生真面目で精力的に動き回るものの結果が伴わない遠藤。
ことある毎に成績優秀な滝野と比較され叱咤を受ける日々。
遠藤の事を心配する上司の鹿野は無理するなと忠告するが、
遠藤は満身創痍で粗品を大量に抱えて飛び出していく。
やがて鼻息荒く大口契約を結べそうだと鹿野に報告する。
遠藤に案内され鹿野が向かった先にあったのは・・・
ー
人事部長の坂井は行方不明の行員の過去を調べていた。
失踪したのは100万円紛失事件を追っていた西木だった。
2人の子と妻がいる西木は周りに何も告げずに失踪していた。
ー
失踪した西木の後任になった竹本。
西木の机にあった品々を調べている内に、
失踪した彼が犯人像を掴んでいただろうと悟る。
西木の掴んだ証拠を明かすべきか悩んでいたが、
そこに栄転の話が上がり、竹本は胸に秘めたまま支店を去る。
ー
100万円紛失を知り、調査にきた黒田次長は、
支店の重要過誤を九条支店長に指摘する。
裕福な家庭で育ち、一流大学を卒業後、
銀行でもエリートの道を歩んできた黒田は、
ストレスからギャンブルにのめり込み窮地に陥った。
私財も使い込んだ男に浮かんだ起死回生の企み・・・
黒田は自分だけが知る過去の不正を九条に指摘される。
ー
融資課新人の田端は愛理と100万円紛失の真相に迫る。
田端は仕事に幻滅し、外資系銀行への転職を画策中である。
愛理に頼まれ、支店のエース滝野が新規獲得した顧客企業へ、
届け物を持って行くと、そこはオンボロアパートだった。
実績を上げ続けるエース滝野が不正を行っている?
ー
滝野の過去と妻子のいる温かな家庭が描かれる。
過去に裏金を受け取った事から道を外れ、
業績と引き替えに不正を行っていた滝野。
100万円紛失の謎を追っていた西木に尻尾を掴まれ、
愛する妻に子供を託し、覚悟を決める・・・。
ー
パート社員の晴子は未亡人で一人娘がいる。
西木の私物を家に届けるように言われ、
彼の事を調べているうちにあることに気づく。
滝野が不正を行った企業と西木は接点があったこと、
西木は兄の多額の借金の保証人となっていたこと、
すでに妻子と別居生活をしていたこと・・・。
ひょっとしたら西木は・・・
いやはや、それぞれが色んな悩みを抱え、重しを背負い、
不条理な世の中で居場所を見つけるために悶えている。
正義が清いわけでもなく、答えが定まっているわけでも無い。
視点を変えることによって物事は別の表情を見せ、
その微妙な変化は当事者でも知らない一面だったりもする。
上司と部下だけじゃない社内の関係が多岐に描かれ、
今回も切り口は違えど、いつもの安定した物語だった。
正しそうな顔をしている人ほど暗黒を背負っているのかも・・・。
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最愚等凱
ドッタンバッタンのシリーズも最終作。
最後もやっぱり期待を裏切らない荒唐無稽っぷり。
いやはやC級作も徹底すれば後腐れ無いのかも・・・

=============================
(上)首都を混乱に陥れた同時多発テロから一年。
国家公安委員会が警視庁“モール”の増強を進めるなか、
何者かによって古谷警部補が殺された。
さらに沖縄で平穏な日々を過ごしていた竜司の元にも、
かつてない強力な敵が襲いかかる。やがて姿を現す巨大な陰謀、
そして謎の無国籍集団!史上最大の戦いへと向かう・・・。
=============================
(下)驚異的な敵の前に、次々と倒される“モール”専従員。
新たに管理官に就任した小山田が強固な捜査を続ける一方、
東京に戻った竜司は楢山とともに敵を追いはじめた。
だが、国会議事堂にはロケット弾が撃ち込まれ、
日本全土で多国籍軍が蜂起した。国家を、愛する者を守るため、
竜司が最後の闘いに挑む!シリーズ、遂に完結。
=============================
前作の首都を襲った同時多発テロから一年。
竜司は紗由美とともに前作で知り合った安里の紹介で、
沖縄に居を移していた。紗由美は竜司の子を宿している。
トラブルシューター業もやめ、モール専従員からも解放され、
沖縄の地で現地の友人達と平穏な日々を過ごしていた。
一方、国家公安委員長がモールの増強策を進める中、
モールの一員、警視補に昇格したばかりの古谷が殺害される。
死を覚悟した古谷がケータイに現場の格闘音を記録していた。
その情報からモールという単語が相手側から出たことにより、
特秘組織であるモールを犯人が知っていた事実に驚愕する。
相手の狙いはモール・・・
沖縄で平穏な日々を送る竜司にも瀬田副総監から連絡がいき、
犯人側の狙いがモールの場合、竜司も危険だと用心するよう告げる。
モール管理官の垣崎と竜司の同期で凄腕の楢山たちは、
古谷の残した情報から、ある無国籍の男を割り出していた。
中国武官処の密命を受ける駐日特務官の劉義(リウイ)は、
新宿中央署掲示の小山田と繋がっていて、古谷と同期の小山田は、
敵討ちと称してモールに近づき、情報を探っては密告していた。
劉義に国籍や安住の場を約束された無国籍集団たちは、
モール人員総殺害の指令を受けて、モール人員の動向をうかがう。
中国系リーダーが束ねる無国籍集団たちに、
前々作で出てきた地下格闘場の優勝者ディーン(彼も無国籍男)、
前作に出てきたロシア人テロリストのセルゲーロフと配下。
無国籍武闘派集団はモール専従員の命を狙い、
セルゲーロフらは全国同時テロに向けて計画を進めていく。
今まで竜司と互角以上に強かった楢山だが、
今作ではディーンに襲われて殺されそうになったり、
(楢山を尾行する影に気づいた増尾が通報して助かる)
無国籍集団No.2の鄭鋒(チェンフォン)との対決でも、
殺されそうになってしまう。運が左右して相手は事故死。
竜司や楢山ほどでは無いにしろ、武道経験のある垣崎は、
ディーンに簡単に殺されてしまうのがなぁ・・・
せっかくシリーズ通して育ててきたキャラクターが、
あまりにも簡単に負けたり、殺されたりするのが残念。
今まで無敵状態だった竜司も無国籍集団に襲われ、
沖縄古武道の金武(きん)ほか門下生らと立ち向かうが、
それよりも無国籍集団のほうが強いのもなんだかなぁ・・・
無国籍人間達の苦悩が描かれ、生き延びる術としての、
武術取得&暴力的解決での成り上がりが背景にあるという。
国籍が無いために、どこにも所属することが出来なくて、
同胞達が寄り集まって、独学で武術を会得したと言うが、
独学で体得した武術が、毎日鍛錬する古武道門下生よりも強く、
しかも数々の修羅場をくぐり抜けた竜司や楢山より強いのは、
あまりにも設定が強引過ぎるんだよなぁ・・・。
しかも彼らの殺人武術が結構マニアックな格闘術で、
そんなマニアックな技術を独学で体得できるものなのか、
そもそもの設定に疑問を浮かべながら読む。
地下格闘場のチャンプも強いかも知れないけれど、
それにても殺されるまで腕力勝負するのはなぁ・・・
警官は銃を携行しているでしょう?って。殺されたら駄目でしょ。
無国籍集団の狙いもモール専従員の殲滅なんだけど、
こちらも銃などを使わず正面対決を挑むのが不思議な点。
その反面、後半になるとセルゲーロフが爆撃弾を乱射して、
各地で一斉にテロ行為が始まるのも極端すぎて笑うしか無い。
後半は最終話ならではの銃撃格闘戦。
警察、自衛隊の集団戦と、竜司&楢山の格闘戦。
犯人がヘリで逃亡を図る所へ竜司が飛び乗り・・・
シリーズ通しての荒唐無稽な展開に何も考えずひたすら楽しんだけど、
結末はどうなのかなぁ~完結だから良いのかも知れないけれど、
それにしても犠牲者が多すぎる物語だったなぁ・・・。
唯一の救いは竜司が懇意にしていた増尾の将来と竜司の子供かな。
シリーズは完結だけど、増尾が後を引き継いでという、
勝手な今後の展開を考えてみたりもして・・・
シリーズで一番好きだったのは垣崎が主役級だった話「闘」かな。
医療施設での増尾と不良少女・愛理の恋愛育み物語もあったし、
脇役の成長と苦悩が描かれていて良かった。
なんだかんだ言いつつ、思いつつ、シリーズ全作読破。
何にも考えずにドッタンバッタンを楽しむ物語。
映像があった方が戦闘&爆破時の迫力は増すだろうけど、
結構グロいシーンも多いから、活字で良かった部分も多い。
C級と言いつつ、著者の別作品も安価棚で見つけて確保。
重厚な物語ばかり読むのも疲れるから、こういうのも良いんだな。
最後もやっぱり期待を裏切らない荒唐無稽っぷり。
いやはやC級作も徹底すれば後腐れ無いのかも・・・


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(上)首都を混乱に陥れた同時多発テロから一年。
国家公安委員会が警視庁“モール”の増強を進めるなか、
何者かによって古谷警部補が殺された。
さらに沖縄で平穏な日々を過ごしていた竜司の元にも、
かつてない強力な敵が襲いかかる。やがて姿を現す巨大な陰謀、
そして謎の無国籍集団!史上最大の戦いへと向かう・・・。
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(下)驚異的な敵の前に、次々と倒される“モール”専従員。
新たに管理官に就任した小山田が強固な捜査を続ける一方、
東京に戻った竜司は楢山とともに敵を追いはじめた。
だが、国会議事堂にはロケット弾が撃ち込まれ、
日本全土で多国籍軍が蜂起した。国家を、愛する者を守るため、
竜司が最後の闘いに挑む!シリーズ、遂に完結。
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前作の首都を襲った同時多発テロから一年。
竜司は紗由美とともに前作で知り合った安里の紹介で、
沖縄に居を移していた。紗由美は竜司の子を宿している。
トラブルシューター業もやめ、モール専従員からも解放され、
沖縄の地で現地の友人達と平穏な日々を過ごしていた。
一方、国家公安委員長がモールの増強策を進める中、
モールの一員、警視補に昇格したばかりの古谷が殺害される。
死を覚悟した古谷がケータイに現場の格闘音を記録していた。
その情報からモールという単語が相手側から出たことにより、
特秘組織であるモールを犯人が知っていた事実に驚愕する。
相手の狙いはモール・・・
沖縄で平穏な日々を送る竜司にも瀬田副総監から連絡がいき、
犯人側の狙いがモールの場合、竜司も危険だと用心するよう告げる。
モール管理官の垣崎と竜司の同期で凄腕の楢山たちは、
古谷の残した情報から、ある無国籍の男を割り出していた。
中国武官処の密命を受ける駐日特務官の劉義(リウイ)は、
新宿中央署掲示の小山田と繋がっていて、古谷と同期の小山田は、
敵討ちと称してモールに近づき、情報を探っては密告していた。
劉義に国籍や安住の場を約束された無国籍集団たちは、
モール人員総殺害の指令を受けて、モール人員の動向をうかがう。
中国系リーダーが束ねる無国籍集団たちに、
前々作で出てきた地下格闘場の優勝者ディーン(彼も無国籍男)、
前作に出てきたロシア人テロリストのセルゲーロフと配下。
無国籍武闘派集団はモール専従員の命を狙い、
セルゲーロフらは全国同時テロに向けて計画を進めていく。
今まで竜司と互角以上に強かった楢山だが、
今作ではディーンに襲われて殺されそうになったり、
(楢山を尾行する影に気づいた増尾が通報して助かる)
無国籍集団No.2の鄭鋒(チェンフォン)との対決でも、
殺されそうになってしまう。運が左右して相手は事故死。
竜司や楢山ほどでは無いにしろ、武道経験のある垣崎は、
ディーンに簡単に殺されてしまうのがなぁ・・・
せっかくシリーズ通して育ててきたキャラクターが、
あまりにも簡単に負けたり、殺されたりするのが残念。
今まで無敵状態だった竜司も無国籍集団に襲われ、
沖縄古武道の金武(きん)ほか門下生らと立ち向かうが、
それよりも無国籍集団のほうが強いのもなんだかなぁ・・・
無国籍人間達の苦悩が描かれ、生き延びる術としての、
武術取得&暴力的解決での成り上がりが背景にあるという。
国籍が無いために、どこにも所属することが出来なくて、
同胞達が寄り集まって、独学で武術を会得したと言うが、
独学で体得した武術が、毎日鍛錬する古武道門下生よりも強く、
しかも数々の修羅場をくぐり抜けた竜司や楢山より強いのは、
あまりにも設定が強引過ぎるんだよなぁ・・・。
しかも彼らの殺人武術が結構マニアックな格闘術で、
そんなマニアックな技術を独学で体得できるものなのか、
そもそもの設定に疑問を浮かべながら読む。
地下格闘場のチャンプも強いかも知れないけれど、
それにても殺されるまで腕力勝負するのはなぁ・・・
警官は銃を携行しているでしょう?って。殺されたら駄目でしょ。
無国籍集団の狙いもモール専従員の殲滅なんだけど、
こちらも銃などを使わず正面対決を挑むのが不思議な点。
その反面、後半になるとセルゲーロフが爆撃弾を乱射して、
各地で一斉にテロ行為が始まるのも極端すぎて笑うしか無い。
後半は最終話ならではの銃撃格闘戦。
警察、自衛隊の集団戦と、竜司&楢山の格闘戦。
犯人がヘリで逃亡を図る所へ竜司が飛び乗り・・・
シリーズ通しての荒唐無稽な展開に何も考えずひたすら楽しんだけど、
結末はどうなのかなぁ~完結だから良いのかも知れないけれど、
それにしても犠牲者が多すぎる物語だったなぁ・・・。
唯一の救いは竜司が懇意にしていた増尾の将来と竜司の子供かな。
シリーズは完結だけど、増尾が後を引き継いでという、
勝手な今後の展開を考えてみたりもして・・・
シリーズで一番好きだったのは垣崎が主役級だった話「闘」かな。
医療施設での増尾と不良少女・愛理の恋愛育み物語もあったし、
脇役の成長と苦悩が描かれていて良かった。
なんだかんだ言いつつ、思いつつ、シリーズ全作読破。
何にも考えずにドッタンバッタンを楽しむ物語。
映像があった方が戦闘&爆破時の迫力は増すだろうけど、
結構グロいシーンも多いから、活字で良かった部分も多い。
C級と言いつつ、著者の別作品も安価棚で見つけて確保。
重厚な物語ばかり読むのも疲れるから、こういうのも良いんだな。
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箱庭書館
ジョジョ本を読んだだけで、この作家さんは2冊目。
ようやくこの方のオリジナルを味わえると思っていたら、
この短篇集は一般応募のボツ小説を元に手を加えた作品と知り、
結局、この作家さんのオリジナルはお預けに・・・

=============================
僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった。
(小説家のつくり方)ふたりぼっちの文芸部で、
先輩と過ごしたイタい毎日。(青春絶縁体)雪面の靴跡に
みちびかれた、不思議なめぐり会い。(ホワイト・ステップ)
“物語を紡ぐ町”で、ときに切なく、ときに温かく、
奇跡のように重なり合う6つのストーリー。ミステリ、ホラー、
恋愛、青春…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!
=============================
「小説家のつくり方」「コンビニ日和」「青春絶縁体」
「ワンダーランド」「王国の旗」「ホワイトステップ」の6篇。
“物語を紡ぐ町”と言われる文善寺町が舞台。
○小説家のつくり方
小説家の山里秀太は小学生の頃、ノートに物語を書き、
それをH先生に見せて確認印をもらう密かな交流があった。
その事を新作のあとがきに書き、H先生の便りを待つのだが・・・
秀太には活字中毒者で図書館員の姉・潮音がいる。
(この読書狂人?潮音が全編に登場して物語を紡いでいく)
そんな読書狂の姉に新作のあとがきを読ませると、
潮音は、その内容を読んで嘘があることを見破ってしまう。
秀太が心に秘めていた謎とは・・・
○コンビニ日和
コンビニ店員の僕と一つ下の後輩、畠中ちより。
終業間際に店内に入り込んで来たのはバンド風貌の強盗男。
強盗に捕まり、刃物を突きつけられ怯える僕を眺めるちよりは、
僕の危険よりも早く帰りたい欲求のほうが強いらしい。
強盗の要求する大金はレジには入っておらず、
店内の物品を好きなだけ持っていって良いと告げるが、
そこに警官が現れ、強盗と一緒に身を隠すのだが・・・
警官が去った後、強盗は2人の素性に気づく。
ちよりが帰りたがった理由が明らかに・・・
○青春絶縁体
たった2人の文芸部に所属する僕と小山雨季子先輩。
人見知りの僕は部室に入り浸り、読書時間を過ごすが、
銀縁眼鏡の雨季子先輩も部室に入り浸り。
部室で交わす会話は毒舌&罵詈雑言のキャッチボール。
人見知りの僕も何故か先輩への悪態は自然に振る舞えるのだ。
そんなある日、先輩が部活動として小説を書こうと言い出す。
毒舌&罵詈雑言会話が主の2人が描く物語は、相手の不幸話。
そうやって小説を描いては破られを繰り返す2人だったが・・・
人見知り両者の淡くイタイ交流物語。
明るい性格の鈴木さんという女子が僕に声を掛けてきて、
彼女との会話から読書好きの先輩がいたという話が語られ、
それは僕の姉=潮音ということで、僕=秀太ということが分かる。
○ワンダーランド
道で拾った鍵に合う鍵穴を探す冒険を続ける少年。
あちこち歩き回った少年はやがて古びた無人の民家を訪れる。
その民家内の冷蔵庫からはみ出していたのは女性の髪・・・
恐怖に駆られてその場から逃げ出した少年は、
車に撥ねられて入院し、意識が回復した時には、
あの現場は火事になって男女の遺体が発見されていた。
女性は行方不明の大学生で、男の身元は不明のまま。
犯人の視点と少年の視点が描かれていて、
犯行現場を訪れた鍵を持った少年を犯人は見ていた。
退院した少年は立ち寄った図書館で潮音と会う。
その潮音の履いていたスニーカーを見て、
少年は犯行現場にもう一人の影を浮かべるが・・・
○王国の旗
学校を抜け出し授業をサボった小野早苗は、
車のトランクに潜り込んで居眠りしている間に、
見知らぬ場所へ運ばれていた。人の気配が無いのを確かめ、
トランクから出た所を一人の少年が不思議そうに見ていた。
ミツと名乗る少年に導かれて廃ボウリング場へ行くと、
そこは大勢の子供達が集まる王国だった。
子供達は日中は子供らしく振るまって過ごし、
親が寝静まった後に家を抜け出し集合しているという。
王国の一員になるのを拒否した早苗は監禁されるが、
ハチという少年と少女の助けで王国を抜け出しバスに乗る。
疲労で睡眠に落ちた早苗が気づいた時には文善寺町だった。
後に王国の場所を調べてみるが、それらしい場所はなかった。
あの王国は夢か幻か・・・
○ホワイトステップ
雪の積もるある日。公園のベンチへ続く足跡を見つけた僕。
足跡はベンチへ続いているのに、ベンチに人の姿は無い。
その不思議な足跡を見つけたベンチを訪れた僕は、
そこで奇妙な現象に出会う事になる。
キュッキュッという音とともに雪面に足跡が生まれるのだ。
平行世界で出会った近藤裕喜と渡辺ほのかは、
雪面に文字を書く事で意思表示を交わし、
お互いの世界を語り、相手の知らない物事を知る事に・・・
僕の世界では孤独な一人暮らしだが、
渡辺ほのかの世界では僕には妻がいるらしい・・・。
そして、僕のいる世界の渡辺ほのかは・・・なんと・・・
最後のホワイトステップが一番良かったかな。
平行世界の男女が足跡を通じて会話を交わすアイデア。
雪が溶けて会話が困難になる緊迫感もあったし、
それぞれの気持ちの落としどころもあって良かった。
事前情報を全く知らずに読んだので、
これがある企画の元で生まれた二次創作物語だと知って、
ありゃりゃりゃ・・・発想元は他人だったのかと微妙な気持ちに。
元になった原稿がweb上で公開されていて軽く読んだけど、
やっぱり構成力とか文章力って大事なんだなと気づかされた。
アイデア元になった彼らが本作を読んで気概を示して奮起し、
これ以上の美しく秀逸な作品を新たに生み出してほしいなぁ。
この表紙絵は大好き。
いつか潮音の物語を描いてほしいなぁ・・・。
ようやくこの方のオリジナルを味わえると思っていたら、
この短篇集は一般応募のボツ小説を元に手を加えた作品と知り、
結局、この作家さんのオリジナルはお預けに・・・

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僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった。
(小説家のつくり方)ふたりぼっちの文芸部で、
先輩と過ごしたイタい毎日。(青春絶縁体)雪面の靴跡に
みちびかれた、不思議なめぐり会い。(ホワイト・ステップ)
“物語を紡ぐ町”で、ときに切なく、ときに温かく、
奇跡のように重なり合う6つのストーリー。ミステリ、ホラー、
恋愛、青春…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!
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「小説家のつくり方」「コンビニ日和」「青春絶縁体」
「ワンダーランド」「王国の旗」「ホワイトステップ」の6篇。
“物語を紡ぐ町”と言われる文善寺町が舞台。
○小説家のつくり方
小説家の山里秀太は小学生の頃、ノートに物語を書き、
それをH先生に見せて確認印をもらう密かな交流があった。
その事を新作のあとがきに書き、H先生の便りを待つのだが・・・
秀太には活字中毒者で図書館員の姉・潮音がいる。
(この読書狂人?潮音が全編に登場して物語を紡いでいく)
そんな読書狂の姉に新作のあとがきを読ませると、
潮音は、その内容を読んで嘘があることを見破ってしまう。
秀太が心に秘めていた謎とは・・・
○コンビニ日和
コンビニ店員の僕と一つ下の後輩、畠中ちより。
終業間際に店内に入り込んで来たのはバンド風貌の強盗男。
強盗に捕まり、刃物を突きつけられ怯える僕を眺めるちよりは、
僕の危険よりも早く帰りたい欲求のほうが強いらしい。
強盗の要求する大金はレジには入っておらず、
店内の物品を好きなだけ持っていって良いと告げるが、
そこに警官が現れ、強盗と一緒に身を隠すのだが・・・
警官が去った後、強盗は2人の素性に気づく。
ちよりが帰りたがった理由が明らかに・・・
○青春絶縁体
たった2人の文芸部に所属する僕と小山雨季子先輩。
人見知りの僕は部室に入り浸り、読書時間を過ごすが、
銀縁眼鏡の雨季子先輩も部室に入り浸り。
部室で交わす会話は毒舌&罵詈雑言のキャッチボール。
人見知りの僕も何故か先輩への悪態は自然に振る舞えるのだ。
そんなある日、先輩が部活動として小説を書こうと言い出す。
毒舌&罵詈雑言会話が主の2人が描く物語は、相手の不幸話。
そうやって小説を描いては破られを繰り返す2人だったが・・・
人見知り両者の淡くイタイ交流物語。
明るい性格の鈴木さんという女子が僕に声を掛けてきて、
彼女との会話から読書好きの先輩がいたという話が語られ、
それは僕の姉=潮音ということで、僕=秀太ということが分かる。
○ワンダーランド
道で拾った鍵に合う鍵穴を探す冒険を続ける少年。
あちこち歩き回った少年はやがて古びた無人の民家を訪れる。
その民家内の冷蔵庫からはみ出していたのは女性の髪・・・
恐怖に駆られてその場から逃げ出した少年は、
車に撥ねられて入院し、意識が回復した時には、
あの現場は火事になって男女の遺体が発見されていた。
女性は行方不明の大学生で、男の身元は不明のまま。
犯人の視点と少年の視点が描かれていて、
犯行現場を訪れた鍵を持った少年を犯人は見ていた。
退院した少年は立ち寄った図書館で潮音と会う。
その潮音の履いていたスニーカーを見て、
少年は犯行現場にもう一人の影を浮かべるが・・・
○王国の旗
学校を抜け出し授業をサボった小野早苗は、
車のトランクに潜り込んで居眠りしている間に、
見知らぬ場所へ運ばれていた。人の気配が無いのを確かめ、
トランクから出た所を一人の少年が不思議そうに見ていた。
ミツと名乗る少年に導かれて廃ボウリング場へ行くと、
そこは大勢の子供達が集まる王国だった。
子供達は日中は子供らしく振るまって過ごし、
親が寝静まった後に家を抜け出し集合しているという。
王国の一員になるのを拒否した早苗は監禁されるが、
ハチという少年と少女の助けで王国を抜け出しバスに乗る。
疲労で睡眠に落ちた早苗が気づいた時には文善寺町だった。
後に王国の場所を調べてみるが、それらしい場所はなかった。
あの王国は夢か幻か・・・
○ホワイトステップ
雪の積もるある日。公園のベンチへ続く足跡を見つけた僕。
足跡はベンチへ続いているのに、ベンチに人の姿は無い。
その不思議な足跡を見つけたベンチを訪れた僕は、
そこで奇妙な現象に出会う事になる。
キュッキュッという音とともに雪面に足跡が生まれるのだ。
平行世界で出会った近藤裕喜と渡辺ほのかは、
雪面に文字を書く事で意思表示を交わし、
お互いの世界を語り、相手の知らない物事を知る事に・・・
僕の世界では孤独な一人暮らしだが、
渡辺ほのかの世界では僕には妻がいるらしい・・・。
そして、僕のいる世界の渡辺ほのかは・・・なんと・・・
最後のホワイトステップが一番良かったかな。
平行世界の男女が足跡を通じて会話を交わすアイデア。
雪が溶けて会話が困難になる緊迫感もあったし、
それぞれの気持ちの落としどころもあって良かった。
事前情報を全く知らずに読んだので、
これがある企画の元で生まれた二次創作物語だと知って、
ありゃりゃりゃ・・・発想元は他人だったのかと微妙な気持ちに。
元になった原稿がweb上で公開されていて軽く読んだけど、
やっぱり構成力とか文章力って大事なんだなと気づかされた。
アイデア元になった彼らが本作を読んで気概を示して奮起し、
これ以上の美しく秀逸な作品を新たに生み出してほしいなぁ。
この表紙絵は大好き。
いつか潮音の物語を描いてほしいなぁ・・・。
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泰始祖伝
さらば雑司ヶ谷と同時に購入したので、
前巻を読み終えてすぐに読み始めた。

=============================
ババア―泰幸会教祖・大河内泰が死んだ。享年102。
雑司ヶ谷の妖怪も人の子だったってワケだ。
葬儀に参列するため中国から帰国した俺を待ち構えていたのは、
ババアが書き残した謎の遺書。
教祖の地位と莫大な財産は俺の父親に譲るらしいんだが、
父親なんてとっくのとうに死んでいる。ババアの目的は何だ?
俺は雑司ヶ谷の神になるのか?
衝撃の問題作「雑司ヶ谷」シリーズ第2弾。
=============================
前作で祖母・泰が母親だという驚愕の事実を知らされた太郎。
因縁にカタをつけ、ババアと関わるのを嫌って中国へ飛んでいたが、
そのババアが102歳で死去。葬儀の為に雑司ヶ谷へ戻って来る。
泰幸会にも遺産にも全く興味のない太郎だが、
ババアの遺書に嫌な予感が浮かび上がる。
教祖の地位と遺産は太郎の父親に譲るというが、
父親といわれていた人物は既に死んでいる・・・。
数々の男性遍歴を持ち、元夫も複数いるババア。
もしかして実の父親がどこかにいるのでは・・・?
遺言には続きがあり、父親が見つからなかった場合、
全ての相続は息子である太郎に権利があるという。
嫌な予感は的中。そして遺言発表後、解散するとすぐ、
異父兄である貫之が太郎の友人経由で爆弾包みを届ける。
何も知らずに包みを受け取った友人は爆死してしまう。
太郎は泰幸会のネットワークを使って、
貫之の所在を突き止めようとするが見つからない・・・。
長年、泰の執事を努めてきた山下の後押しもあって、
教祖死後の信者の不安を取り除くべく、演壇に立つことになる。
信者達の問いに自然体で答えていくうちに快感を覚える太郎。
そんな太郎のカリスマ性に信者達は泰の面影を見る。
事実上の新教祖となった太郎の現状と平行して、
泰の波乱に満ちた人生が描かれる。
この泰の過酷な人生記が丁寧かつ密に描かれていて面白かった。
性格が正反対の秀子という女性が泰を支え続け、
不毛の時代を乗り越え、知略を巡らし新興宗教を盛り上げる。
作り上げられた神へと上り詰めていく過程の中で、
泰は時折、神懸かり的な能力を見せ信者の信頼を堅固にする。
一方、新教祖のイベントとして格闘技の祭典が催され、
有名無名の猛者達が10億という優勝賞金を目指して参加する。
そんな中、地元の雑司ヶ谷代表として参加した男の名に、
太郎は驚愕し、恐れ戦く。刑務所から出所していたなんて・・・
武器使用可、殺してでもその男を倒せと水面下で指示するが、
恐怖の男、石田吉蔵は対戦相手を容易に半殺しに退ける。
吉蔵は見た目こそ80代の素朴な老人ではあるが、
ある国からは核兵器と同等の扱いを受ける人間兵器でもある。
軍隊でも吉蔵を殺すのは難しいとさえ言われている男。
太郎は対戦者に一縷の望みを抱くが、吉蔵は容易に優勝し、
優勝賞金の10億には何の興味も示さなかった。
そして吉蔵が出所後の唯一の目的が息子の復讐だという。
太郎の嫌な予感は再び当たる。吉蔵の息子は芳一だった。
人間兵器である吉蔵にも命を狙われる太郎・・・
前作に引き続くハチャメチャバイオレンス。
残虐、卑猥、卑劣、裏切、復讐、虐待、惨殺、荒唐無稽・・・
小説だから耐えられる非日常的な残酷描写の数々。
オマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュ・・・
いやはや、いろんな有名人の顔が過る過る・・・。
今作でも甘味処「よしの」の店主、香代のオザケン論が出てくる。
本屋で前作を手にし、この続編はどうしようか迷っていたら、
こちらにもオザケン論があるのを確認してレジへ向かった。
「強い気持ち・強い愛」の歌詞を紹介し、
オザケンとは「生と実存の肯定」という。
そして彼よりもっと先にシンプルに、
彼と同じ精神性を表現したアーティストとして、
赤塚不二夫の名が挙げられる。
前作のいいともでのタモリの言葉に引き続き、
赤塚氏の葬儀で弔辞を読んだタモリの語りが紹介される。
「生と実存の肯定」すなわち「これでいいのだ」と。
そして再び、いいともでのタモリとオザケンの挿話が挟まれ、
「痛快ウキウキ通り」の考察があげられる。
後半の考察は余計な気がするが、赤塚氏の話は本当だと思った。
このオザケン&タモリのくだりさえ読めれば十分。
オマージュ、パステーシュのオンパレード。
映画「フォレスト・ガンプ」も主人公が有名企業、
有名人などに影響を与えたような物語構成で大好きな作品。
良い意味では本作も似たような構成ではあるけれど、
当事者が読んだら気を悪くしそうな描写が多いのも事実。
エログロも多いし、やっぱり人には勧めにくい作品かな。
そして巻末に文庫版あとがきにかえてということで、
「お金を払って読んでくれた人こそ読者です」という題で、
著者の発言で軽く問題になった「図書館問題」が綴られている。
要は新刊本は半年間は貸し出ししないでほしいというもの。
「図書館=新刊本をタダで読める場所」はおかしいだろうと。
買ってくれた読者のお陰で作家は生活できているのだと・・・。
この著者の発言が何故問題になったのだろう?
僕は賛成派だなぁ。半年経って読めれば十分じゃないか。
そう言いつつ古本ばかり買っている人が言う事でもないけど。
それでも好きな作家さん、どうしても読みたい本は買っています。
(単行本は読みづらいから文庫本待ちですが・・・)
前巻を読み終えてすぐに読み始めた。

=============================
ババア―泰幸会教祖・大河内泰が死んだ。享年102。
雑司ヶ谷の妖怪も人の子だったってワケだ。
葬儀に参列するため中国から帰国した俺を待ち構えていたのは、
ババアが書き残した謎の遺書。
教祖の地位と莫大な財産は俺の父親に譲るらしいんだが、
父親なんてとっくのとうに死んでいる。ババアの目的は何だ?
俺は雑司ヶ谷の神になるのか?
衝撃の問題作「雑司ヶ谷」シリーズ第2弾。
=============================
前作で祖母・泰が母親だという驚愕の事実を知らされた太郎。
因縁にカタをつけ、ババアと関わるのを嫌って中国へ飛んでいたが、
そのババアが102歳で死去。葬儀の為に雑司ヶ谷へ戻って来る。
泰幸会にも遺産にも全く興味のない太郎だが、
ババアの遺書に嫌な予感が浮かび上がる。
教祖の地位と遺産は太郎の父親に譲るというが、
父親といわれていた人物は既に死んでいる・・・。
数々の男性遍歴を持ち、元夫も複数いるババア。
もしかして実の父親がどこかにいるのでは・・・?
遺言には続きがあり、父親が見つからなかった場合、
全ての相続は息子である太郎に権利があるという。
嫌な予感は的中。そして遺言発表後、解散するとすぐ、
異父兄である貫之が太郎の友人経由で爆弾包みを届ける。
何も知らずに包みを受け取った友人は爆死してしまう。
太郎は泰幸会のネットワークを使って、
貫之の所在を突き止めようとするが見つからない・・・。
長年、泰の執事を努めてきた山下の後押しもあって、
教祖死後の信者の不安を取り除くべく、演壇に立つことになる。
信者達の問いに自然体で答えていくうちに快感を覚える太郎。
そんな太郎のカリスマ性に信者達は泰の面影を見る。
事実上の新教祖となった太郎の現状と平行して、
泰の波乱に満ちた人生が描かれる。
この泰の過酷な人生記が丁寧かつ密に描かれていて面白かった。
性格が正反対の秀子という女性が泰を支え続け、
不毛の時代を乗り越え、知略を巡らし新興宗教を盛り上げる。
作り上げられた神へと上り詰めていく過程の中で、
泰は時折、神懸かり的な能力を見せ信者の信頼を堅固にする。
一方、新教祖のイベントとして格闘技の祭典が催され、
有名無名の猛者達が10億という優勝賞金を目指して参加する。
そんな中、地元の雑司ヶ谷代表として参加した男の名に、
太郎は驚愕し、恐れ戦く。刑務所から出所していたなんて・・・
武器使用可、殺してでもその男を倒せと水面下で指示するが、
恐怖の男、石田吉蔵は対戦相手を容易に半殺しに退ける。
吉蔵は見た目こそ80代の素朴な老人ではあるが、
ある国からは核兵器と同等の扱いを受ける人間兵器でもある。
軍隊でも吉蔵を殺すのは難しいとさえ言われている男。
太郎は対戦者に一縷の望みを抱くが、吉蔵は容易に優勝し、
優勝賞金の10億には何の興味も示さなかった。
そして吉蔵が出所後の唯一の目的が息子の復讐だという。
太郎の嫌な予感は再び当たる。吉蔵の息子は芳一だった。
人間兵器である吉蔵にも命を狙われる太郎・・・
前作に引き続くハチャメチャバイオレンス。
残虐、卑猥、卑劣、裏切、復讐、虐待、惨殺、荒唐無稽・・・
小説だから耐えられる非日常的な残酷描写の数々。
オマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュ・・・
いやはや、いろんな有名人の顔が過る過る・・・。
今作でも甘味処「よしの」の店主、香代のオザケン論が出てくる。
本屋で前作を手にし、この続編はどうしようか迷っていたら、
こちらにもオザケン論があるのを確認してレジへ向かった。
「強い気持ち・強い愛」の歌詞を紹介し、
オザケンとは「生と実存の肯定」という。
そして彼よりもっと先にシンプルに、
彼と同じ精神性を表現したアーティストとして、
赤塚不二夫の名が挙げられる。
前作のいいともでのタモリの言葉に引き続き、
赤塚氏の葬儀で弔辞を読んだタモリの語りが紹介される。
「生と実存の肯定」すなわち「これでいいのだ」と。
そして再び、いいともでのタモリとオザケンの挿話が挟まれ、
「痛快ウキウキ通り」の考察があげられる。
後半の考察は余計な気がするが、赤塚氏の話は本当だと思った。
このオザケン&タモリのくだりさえ読めれば十分。
オマージュ、パステーシュのオンパレード。
映画「フォレスト・ガンプ」も主人公が有名企業、
有名人などに影響を与えたような物語構成で大好きな作品。
良い意味では本作も似たような構成ではあるけれど、
当事者が読んだら気を悪くしそうな描写が多いのも事実。
エログロも多いし、やっぱり人には勧めにくい作品かな。
そして巻末に文庫版あとがきにかえてということで、
「お金を払って読んでくれた人こそ読者です」という題で、
著者の発言で軽く問題になった「図書館問題」が綴られている。
要は新刊本は半年間は貸し出ししないでほしいというもの。
「図書館=新刊本をタダで読める場所」はおかしいだろうと。
買ってくれた読者のお陰で作家は生活できているのだと・・・。
この著者の発言が何故問題になったのだろう?
僕は賛成派だなぁ。半年経って読めれば十分じゃないか。
そう言いつつ古本ばかり買っている人が言う事でもないけど。
それでも好きな作家さん、どうしても読みたい本は買っています。
(単行本は読みづらいから文庫本待ちですが・・・)
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開戴光栄
雑誌で紹介されているのを見て知り、
古本屋で見つけて即座に確保。80代の現役女性作家さん。
まるで外国の翻訳小説を読んでいるような重厚至福の読書時間。

=============================
18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から
あるはずのない屍体が発見された。
四肢を切断された少年と顔を潰された男。
戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。
だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が・・・
解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。
そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。
前日譚「チャーリーの災難」と解剖ソングの楽譜を併録。
=============================
物語の舞台は18世紀のロンドン。
外科医ダニエル・バートンには5人の弟子がいた。
医療技術がまだ進んでおらず、解剖学に熱心なダニエルは、
墓暴きから屍体を買っては私的解剖教室を行っていた。
ダニエルの解剖教室を資金面で支えているのは、
彼の兄で内科医のロバート・バートンである。
(この時代は内科医の地位が外科医の数段上だった)
ラフヘッド男爵の令嬢エレインの屍体が墓暴きによって運ばれ、
妊娠6ヶ月という稀有な屍体にダニエルらは嬉々としていた。
そこへ令嬢の屍体を探していた治安隊が押し掛け、
弟子達は白布で包んだ屍体を特殊構造の暖炉に一時的に隠す。
治安隊が帰った後、白布包みを出して解剖台に乗せた所で、
今度は治安判事助手アン=シャーリーモアとデニスが現れる。
女性助手アンに言われて白布の包みを開けると、
そこには四肢が切断された少年の屍体が収まっていた。
令嬢の屍体はどこへ?驚きを隠すダニエルと弟子たち。
アンは解剖教室の実情を聞いていく。ダニエルは解剖学を説き、
天才素描家の弟子ナイジェルが描いた精巧緻密な素描を見せる。
アンは素描に胎児の絵があることに気づくが弟子達は令嬢の件は伏せ、
そういう貴重な屍体も研究に役立つ旨を話し判事助手を追い返す。
ほっと一息をついて暖炉の中を探すと、
エレイン嬢の屍体の他に、顔を潰された裸の男屍体が出て来る。
四肢の切断された少年屍体に、顔を潰された男の屍体・・・
見覚えの無い2つの屍体に困惑しつつ、解剖作業を分担していると、
盲目の治安判事ジョン・フィールディングを連れ立って、
2人の助手が戻って来てダニエルらは窮地に陥ってしまう。
言い逃れのできない状況に研究材料が少ない実情を話し、
墓暴きから屍体を買って解剖教室を行っている事を明かす。
ダニエルは令嬢以外の屍体については見覚えの無い事を告げ、
解剖学が犯罪行為や死因究明に役立つ事を訴え続ける。
そして令嬢が砒素中毒であった事を実験して証明してみせる。
知覚に優れた判事はダニエルの言葉を受け入れ、
墓暴きから屍体を買っている事には目をつむると言う。
しかし、四肢の無い少年や顔を潰された男の屍体、
自殺と思われていたエレイン令嬢が砒素中毒死という事から、
事件性が伺える点を指摘、ダニエル達にも嫌疑があることから、
少年と男の解剖は他の医師に委ねる事を告げる。
判事らが帰っていった後、弟子のエドとナイジェルは、
師ダニエルに四肢の切断された少年が友人である事を明かす。
不当に囚人となった少年ネイサン・カレンには足枷の跡が残り、
手首には自殺を示す痕と、剃刀が落ちていたという。
少年が自殺死となった場合、自殺は悪行ということで、
教会の墓地へ埋葬されないと思い、他殺に見せたのだという。
遺体のポケットには彼らへの手紙があったと師に見せる。
故郷を出てロンドンを訪れた17歳のネイサン・カレンは、
母の従姉邸を目指す途中でエドとナイジェルに出会う。
ネイサンは父の遺した古書の鑑定と自身が古語で綴った創作詩を
ティンダル書店の店主に見てもらい、古書で多少の金を手にし、
それから創作詩を書き上げて詩人になる夢を抱いていた。
エドとナイジェルと別れ、母の従姉の家に辿り着くが、
その親戚の応対はネイサンにとって快いものではなかった。
翌日、ネイサンはティンダル書店を訪ね、古書を見せるが、
ティンダル氏は多忙のため、後日見ておくと店員に言われる。
その際、通りでちょっとした諍いが起き、
セダンチェアに載った若い少女が輿から転げ落ちる。
ネイサンは咄嗟に少女の手を取り、書店内に連れ出した。
少女はラフヘッド男爵の令嬢エレインだった。
彼女の口利きで店主に会い、古書や創作詩の事を告げるが、
ティンダル氏は多忙ゆえに、鑑定は後日じっくりするという。
そうして話している時に、突然エレインが吐き気を催し、
ネイサンは彼女の吐瀉物を自分の衣服で受け止める。
汚れた衣服を捨てろと言われ従ったネイサンだったが、
エレインの迎えの者が現れると彼女に同行を求められ、
私の騎士と呼ばれ、行きつけの衣服店に連れて行かれる。
店主が古着屋でネイサンの衣服を用立てて戻って来る。
ネイサンはエド達の行きつけのカフェを訪れては会話を交わし、
創作詩"悲歌"を書き綴り、書店を訪ね、催促する日々を送る。
書店主は遅々としてネイサンの持ち込んだ古書の鑑定を行わず、
日銭が減っていく進捗の無い状況を憂いていた。
カフェ店内で彼の詩をたまたま見かけた男に声を掛けられる。
男は〈パブリック・ジャーナル誌〉の社長トマス・ハリントンだった。
ハリントンは少年の言語力に感嘆し、記事を書いて欲しいという。
政治に関する諷刺詩ということに抵抗を感じるものの、
原稿料が少しでも稼げるのは有り難かった。
そうした日々の中、再び書店前でエレインと再会する。
新たな本を手に入れたエレインはネイサンをティーショップに誘い、
買ったばかりの本を自分に読み聞かせて欲しいと渡す。
彼女の本を預かり、彼女の為に本を読み聞かせる日々が始まり、
至福の日々を過ごしていたネイサンだったが・・・
ある日、ハリントンに誘われてデモ運動に連れ出される。
意味も分からず連れて行かれた場所で暴動が起き、
ネイサンは治安隊に捕まり、不当に収容されてしまう。
監獄内で囚人等に酷い仕打ちを受け絶望していくが、
ある日、突然釈放される。
彼を救い出した人物に恩義を感じたのも束の間、
今度はその男の邸に監禁され、制作途中だった創作詩、
悲歌の創作を続けるように強要される日々を送るようになる。
鞭で打たれる過酷な日々に再び絶望を感じたネイサンだったが、
ある日、部屋に鍵をかける音がしなかった事に気づき、
彼は密かに監禁部屋を抜け出し、闇夜をひたすら走っていく。
頼れるのはエドとナイジェルの住む外科医邸しかなかった。
ダニエルはエドとナイジェル2人の弟子が行った四肢切断、
少年が遺した手紙があることを判事邸を訪れて明かし、
弟子達が少年を思ってした行為への温情を懇願する。
ジョン・フィールディングは盲目ゆえに聴覚や触覚が優れ、
ダニエルの弟子達の聞き込みをした時の彼らの嘘が気になり、
事件の背景を手繰り寄せるべく助手たちと調査していく・・・
遺体の解剖結果から少年の遺体はネイサンと一致し、
顔の潰れた男はハリントンという情報誌社長であった。
ダニエルの物語と平行して、ネイサンの物語が描かれていき、
過酷な運命を背負って屍体となって発見されたネイサンの、
あまりにも不憫な物語、エレイン嬢が妊娠・殺害された事実、
情報誌社長ハリントンの殺害理由など、事件が複雑なまま、
フィールディング判事の推理だけが頼りとなっていく。
驚愕の告白があり、犯人が浮かび上がった所へ、
二転三転があったりして、最後まで気の抜けない展開である。
背景的な登場人物らも意外な事実が絡み合ったりして、
構成の妙、張り巡らされた人物配置の巧みさに唸ってしまう。
こんなに重厚な物語を描く作者がいたなんて・・・
しかも80代の現役女性作家だという。ん~凄すぎる。
文体に少しも齢は感じさせず、まるで海外の偉大な作家が、
描いた作品を読んでいるような日本人離れした物語だった。
装幀は、もっと重厚感や洗練感があってもいいのになぁ。
古本屋で見つけて即座に確保。80代の現役女性作家さん。
まるで外国の翻訳小説を読んでいるような重厚至福の読書時間。

=============================
18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から
あるはずのない屍体が発見された。
四肢を切断された少年と顔を潰された男。
戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。
だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が・・・
解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。
そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。
前日譚「チャーリーの災難」と解剖ソングの楽譜を併録。
=============================
物語の舞台は18世紀のロンドン。
外科医ダニエル・バートンには5人の弟子がいた。
医療技術がまだ進んでおらず、解剖学に熱心なダニエルは、
墓暴きから屍体を買っては私的解剖教室を行っていた。
ダニエルの解剖教室を資金面で支えているのは、
彼の兄で内科医のロバート・バートンである。
(この時代は内科医の地位が外科医の数段上だった)
ラフヘッド男爵の令嬢エレインの屍体が墓暴きによって運ばれ、
妊娠6ヶ月という稀有な屍体にダニエルらは嬉々としていた。
そこへ令嬢の屍体を探していた治安隊が押し掛け、
弟子達は白布で包んだ屍体を特殊構造の暖炉に一時的に隠す。
治安隊が帰った後、白布包みを出して解剖台に乗せた所で、
今度は治安判事助手アン=シャーリーモアとデニスが現れる。
女性助手アンに言われて白布の包みを開けると、
そこには四肢が切断された少年の屍体が収まっていた。
令嬢の屍体はどこへ?驚きを隠すダニエルと弟子たち。
アンは解剖教室の実情を聞いていく。ダニエルは解剖学を説き、
天才素描家の弟子ナイジェルが描いた精巧緻密な素描を見せる。
アンは素描に胎児の絵があることに気づくが弟子達は令嬢の件は伏せ、
そういう貴重な屍体も研究に役立つ旨を話し判事助手を追い返す。
ほっと一息をついて暖炉の中を探すと、
エレイン嬢の屍体の他に、顔を潰された裸の男屍体が出て来る。
四肢の切断された少年屍体に、顔を潰された男の屍体・・・
見覚えの無い2つの屍体に困惑しつつ、解剖作業を分担していると、
盲目の治安判事ジョン・フィールディングを連れ立って、
2人の助手が戻って来てダニエルらは窮地に陥ってしまう。
言い逃れのできない状況に研究材料が少ない実情を話し、
墓暴きから屍体を買って解剖教室を行っている事を明かす。
ダニエルは令嬢以外の屍体については見覚えの無い事を告げ、
解剖学が犯罪行為や死因究明に役立つ事を訴え続ける。
そして令嬢が砒素中毒であった事を実験して証明してみせる。
知覚に優れた判事はダニエルの言葉を受け入れ、
墓暴きから屍体を買っている事には目をつむると言う。
しかし、四肢の無い少年や顔を潰された男の屍体、
自殺と思われていたエレイン令嬢が砒素中毒死という事から、
事件性が伺える点を指摘、ダニエル達にも嫌疑があることから、
少年と男の解剖は他の医師に委ねる事を告げる。
判事らが帰っていった後、弟子のエドとナイジェルは、
師ダニエルに四肢の切断された少年が友人である事を明かす。
不当に囚人となった少年ネイサン・カレンには足枷の跡が残り、
手首には自殺を示す痕と、剃刀が落ちていたという。
少年が自殺死となった場合、自殺は悪行ということで、
教会の墓地へ埋葬されないと思い、他殺に見せたのだという。
遺体のポケットには彼らへの手紙があったと師に見せる。
故郷を出てロンドンを訪れた17歳のネイサン・カレンは、
母の従姉邸を目指す途中でエドとナイジェルに出会う。
ネイサンは父の遺した古書の鑑定と自身が古語で綴った創作詩を
ティンダル書店の店主に見てもらい、古書で多少の金を手にし、
それから創作詩を書き上げて詩人になる夢を抱いていた。
エドとナイジェルと別れ、母の従姉の家に辿り着くが、
その親戚の応対はネイサンにとって快いものではなかった。
翌日、ネイサンはティンダル書店を訪ね、古書を見せるが、
ティンダル氏は多忙のため、後日見ておくと店員に言われる。
その際、通りでちょっとした諍いが起き、
セダンチェアに載った若い少女が輿から転げ落ちる。
ネイサンは咄嗟に少女の手を取り、書店内に連れ出した。
少女はラフヘッド男爵の令嬢エレインだった。
彼女の口利きで店主に会い、古書や創作詩の事を告げるが、
ティンダル氏は多忙ゆえに、鑑定は後日じっくりするという。
そうして話している時に、突然エレインが吐き気を催し、
ネイサンは彼女の吐瀉物を自分の衣服で受け止める。
汚れた衣服を捨てろと言われ従ったネイサンだったが、
エレインの迎えの者が現れると彼女に同行を求められ、
私の騎士と呼ばれ、行きつけの衣服店に連れて行かれる。
店主が古着屋でネイサンの衣服を用立てて戻って来る。
ネイサンはエド達の行きつけのカフェを訪れては会話を交わし、
創作詩"悲歌"を書き綴り、書店を訪ね、催促する日々を送る。
書店主は遅々としてネイサンの持ち込んだ古書の鑑定を行わず、
日銭が減っていく進捗の無い状況を憂いていた。
カフェ店内で彼の詩をたまたま見かけた男に声を掛けられる。
男は〈パブリック・ジャーナル誌〉の社長トマス・ハリントンだった。
ハリントンは少年の言語力に感嘆し、記事を書いて欲しいという。
政治に関する諷刺詩ということに抵抗を感じるものの、
原稿料が少しでも稼げるのは有り難かった。
そうした日々の中、再び書店前でエレインと再会する。
新たな本を手に入れたエレインはネイサンをティーショップに誘い、
買ったばかりの本を自分に読み聞かせて欲しいと渡す。
彼女の本を預かり、彼女の為に本を読み聞かせる日々が始まり、
至福の日々を過ごしていたネイサンだったが・・・
ある日、ハリントンに誘われてデモ運動に連れ出される。
意味も分からず連れて行かれた場所で暴動が起き、
ネイサンは治安隊に捕まり、不当に収容されてしまう。
監獄内で囚人等に酷い仕打ちを受け絶望していくが、
ある日、突然釈放される。
彼を救い出した人物に恩義を感じたのも束の間、
今度はその男の邸に監禁され、制作途中だった創作詩、
悲歌の創作を続けるように強要される日々を送るようになる。
鞭で打たれる過酷な日々に再び絶望を感じたネイサンだったが、
ある日、部屋に鍵をかける音がしなかった事に気づき、
彼は密かに監禁部屋を抜け出し、闇夜をひたすら走っていく。
頼れるのはエドとナイジェルの住む外科医邸しかなかった。
ダニエルはエドとナイジェル2人の弟子が行った四肢切断、
少年が遺した手紙があることを判事邸を訪れて明かし、
弟子達が少年を思ってした行為への温情を懇願する。
ジョン・フィールディングは盲目ゆえに聴覚や触覚が優れ、
ダニエルの弟子達の聞き込みをした時の彼らの嘘が気になり、
事件の背景を手繰り寄せるべく助手たちと調査していく・・・
遺体の解剖結果から少年の遺体はネイサンと一致し、
顔の潰れた男はハリントンという情報誌社長であった。
ダニエルの物語と平行して、ネイサンの物語が描かれていき、
過酷な運命を背負って屍体となって発見されたネイサンの、
あまりにも不憫な物語、エレイン嬢が妊娠・殺害された事実、
情報誌社長ハリントンの殺害理由など、事件が複雑なまま、
フィールディング判事の推理だけが頼りとなっていく。
驚愕の告白があり、犯人が浮かび上がった所へ、
二転三転があったりして、最後まで気の抜けない展開である。
背景的な登場人物らも意外な事実が絡み合ったりして、
構成の妙、張り巡らされた人物配置の巧みさに唸ってしまう。
こんなに重厚な物語を描く作者がいたなんて・・・
しかも80代の現役女性作家だという。ん~凄すぎる。
文体に少しも齢は感じさせず、まるで海外の偉大な作家が、
描いた作品を読んでいるような日本人離れした物語だった。
装幀は、もっと重厚感や洗練感があってもいいのになぁ。
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谷ヶ司雑
本作にいいともでタモリがオザケンを絶賛した、
あの歌詞の解釈を語る場面があるという事を知って本屋へ。
巻末や帯の水道橋博士の解説を読んで、その言葉に従いレジへ向かう。
続編にも歌詞語り場面があったので同時に抱えた。

=============================
中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死と女の失踪。
東京、雑司ヶ谷。
狂気と猥雑の入り乱れたこの街で俺は歪んだ青春を送った。
町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男……。
狂いきったこのファックな人生に。天誅を喰らわせてやる。
エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる
引用に満ちた21世紀最強の問題作。脳天、撃抜かれます。
=============================
新興宗教「泰幸会」の教祖=大河内泰は、
日本の政財界に隠然たる影響力を持つ雑司ヶ谷のドンである。
孫の大河内太郎を5年ぶりに中国から呼び戻し、
雑司ヶ谷で起きたゲリラ豪雨事件の調査を命じる。
親友、京介の頼みで中国へ渡っていた太郎は、
帰国後、京介の元へ足を運ぶが、彼は既に亡くなっていた。
京介を殺害したのは、元京介隊の芳一だった。
5年前、芳一が女児を売り飛ばしていた事を知った京介は、
隊の掟を破った罰として、芳一の両耳をむしり取っていた。
太郎は芳一が売り飛ばした女児を連れ戻すため、
中国へ渡っていたのだが、暴力団のボス閣鉄心に捕まり、
甚振られ、辱められ、薬漬けとなり、殺人狂となる。
閣鉄心の男として過ごすうちに偏向した自身の性欲を知る。
ヘロイン中毒で入院した後、シャブを土産に貰って日本に帰国。
太郎は昔なじみの面々に会っていく。
そんな中、甘味処「よしの」に居合わせた太郎の前で、
常連客が「人類史上最高の音楽家は誰」という議論を始める。
ジョン・レノンやマイルス・デイヴィスの名が挙がる中、
店主の香代は嘲笑後「オザケン、小沢健二よ」と断言する。
常連客は腹を抱えて笑い転げているが、
香代は彼らの前で「さよならなんて云えないよ」を歌う。
そしてタモリがいいともで語った言葉を引用し、
四半世紀、お昼の生放送の司会を務めて気が狂わないでいる、
自分にも他人にも何の期待もしていない絶望大王が唯一、
あの歌詞は"生命最大の肯定"と褒めたと語る。
それから歌詞の解釈を熱く述べていく。
“教会通りの坂”は神に定められた人生。
それが“嫌になるほど続く”と思っていた主人公が、
“左へカーブを曲がると、光る海が見える”
つまり、産み。生を肯定して
“この瞬間は続くと、いつまでも”って自己回復していく
この後「ラブリー」の歌詞を語り始めるが、
そうした雑談の中で常連客が太郎の存在に気づく。
太郎は芳一や京介の彼女、雅子の居場所を聞く。
このオザケン最強論の部分だけ読めれば充分だった。
その後、気持ちが萎えていくかと思ったけど、
テンポよく物語は進んでいき、提示された問題も解決し、
とりあえずの収束もあって続編へ続いている。
ぶっ飛び、突き抜けたハチャメチャバイオレンス。
残虐、卑猥、卑劣、裏切、復讐、虐待、惨殺、荒唐無稽・・・
小説だから耐えられる非日常的な残酷描写の数々。
オマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュ・・・
次から次へと該当作品や人物、事件が脳裏を流れていき、
登場人物らの鬼畜じみた性格に、時に引き、時に首肯し、
体内の暗黒面が疼いたり、漆黒に突き落とされたり・・・
なんじゃこりゃ?と頁をめくり続けた。
こりゃあ人には勧められない内容だなぁ。
想像力が豊かな人にはちょっとキツイかも。
ドブネズミの美しさが分かる人には良いのでしょう。
天才と変態は紙一重であり、美と醜には背景がある。
いろんな意味で凄かった。
あの歌詞の解釈を語る場面があるという事を知って本屋へ。
巻末や帯の水道橋博士の解説を読んで、その言葉に従いレジへ向かう。
続編にも歌詞語り場面があったので同時に抱えた。

=============================
中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死と女の失踪。
東京、雑司ヶ谷。
狂気と猥雑の入り乱れたこの街で俺は歪んだ青春を送った。
町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男……。
狂いきったこのファックな人生に。天誅を喰らわせてやる。
エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる
引用に満ちた21世紀最強の問題作。脳天、撃抜かれます。
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新興宗教「泰幸会」の教祖=大河内泰は、
日本の政財界に隠然たる影響力を持つ雑司ヶ谷のドンである。
孫の大河内太郎を5年ぶりに中国から呼び戻し、
雑司ヶ谷で起きたゲリラ豪雨事件の調査を命じる。
親友、京介の頼みで中国へ渡っていた太郎は、
帰国後、京介の元へ足を運ぶが、彼は既に亡くなっていた。
京介を殺害したのは、元京介隊の芳一だった。
5年前、芳一が女児を売り飛ばしていた事を知った京介は、
隊の掟を破った罰として、芳一の両耳をむしり取っていた。
太郎は芳一が売り飛ばした女児を連れ戻すため、
中国へ渡っていたのだが、暴力団のボス閣鉄心に捕まり、
甚振られ、辱められ、薬漬けとなり、殺人狂となる。
閣鉄心の男として過ごすうちに偏向した自身の性欲を知る。
ヘロイン中毒で入院した後、シャブを土産に貰って日本に帰国。
太郎は昔なじみの面々に会っていく。
そんな中、甘味処「よしの」に居合わせた太郎の前で、
常連客が「人類史上最高の音楽家は誰」という議論を始める。
ジョン・レノンやマイルス・デイヴィスの名が挙がる中、
店主の香代は嘲笑後「オザケン、小沢健二よ」と断言する。
常連客は腹を抱えて笑い転げているが、
香代は彼らの前で「さよならなんて云えないよ」を歌う。
そしてタモリがいいともで語った言葉を引用し、
四半世紀、お昼の生放送の司会を務めて気が狂わないでいる、
自分にも他人にも何の期待もしていない絶望大王が唯一、
あの歌詞は"生命最大の肯定"と褒めたと語る。
それから歌詞の解釈を熱く述べていく。
“教会通りの坂”は神に定められた人生。
それが“嫌になるほど続く”と思っていた主人公が、
“左へカーブを曲がると、光る海が見える”
つまり、産み。生を肯定して
“この瞬間は続くと、いつまでも”って自己回復していく
この後「ラブリー」の歌詞を語り始めるが、
そうした雑談の中で常連客が太郎の存在に気づく。
太郎は芳一や京介の彼女、雅子の居場所を聞く。
このオザケン最強論の部分だけ読めれば充分だった。
その後、気持ちが萎えていくかと思ったけど、
テンポよく物語は進んでいき、提示された問題も解決し、
とりあえずの収束もあって続編へ続いている。
ぶっ飛び、突き抜けたハチャメチャバイオレンス。
残虐、卑猥、卑劣、裏切、復讐、虐待、惨殺、荒唐無稽・・・
小説だから耐えられる非日常的な残酷描写の数々。
オマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュ・・・
次から次へと該当作品や人物、事件が脳裏を流れていき、
登場人物らの鬼畜じみた性格に、時に引き、時に首肯し、
体内の暗黒面が疼いたり、漆黒に突き落とされたり・・・
なんじゃこりゃ?と頁をめくり続けた。
こりゃあ人には勧められない内容だなぁ。
想像力が豊かな人にはちょっとキツイかも。
ドブネズミの美しさが分かる人には良いのでしょう。
天才と変態は紙一重であり、美と醜には背景がある。
いろんな意味で凄かった。
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