*** june typhoon tokyo ***

AFRO PARKER @表参道 WALL&WALL


 感謝と良質なグルーヴでもてなす、祝祭感溢れる年の瀬の饗宴。

 MCのWAKATHUGは福井(“ワカサグ”というくらいだから若狭……敦賀、小浜、美浜あたりの嶺南出身か)、弥之助は静岡(以前は千葉・柏に住んでたという話も)、それ以外は東京と各地から駆け付けて生音によるヒップホップを高らかに打ち鳴らす、サラリーマンを隠れ蓑にした“生音ヒップホップリーメンバンド”のAFRO PARKERが、2019年を締めくくるライヴ〈AFRO PARKER presents“HEADS UP!! Vol.4 年末ジャンボ 大感謝祭”〉を表参道のWALL&WALLで開催。個人的には2017年の〈para de casa〉レーベルのパーティ〈Parade!〉以来(その時の記事はこちら→「Parade!@六本木Varit.」)久しくライヴを観ていなかったこともあり、それからどういった進化を重ねているかに期待しながら、夜の表参道へと歩みを急いた。

 対バン相手のパブリック娘。がフロアを温めた後、深海のような青色が漂うなかジャジィな音とともにMC陣が登場。クールなイントロダクションで幕を開けるも、スタイリッシュでジャジィなサウンドと、クールと人懐こさを行き来する親和性の高いフロウとが融和したステージングで、ジワジワと“アフロパ・ワールド”に導いていく。

 弾けるグルーヴが勢いよく走りだすフロアキラー「Cosmic Dance」や労働者ならではの嘆きを綴った「After Five Rapper~SHACHIKU REQUIEM~」、普段のイメージとは異なったソリッドなフロウで切れ味鋭いボースティングを叩き込む「Get On The Mic」、アダルト濃度の高いスウィンギーなグルーヴでクールにキメる「Question One」、哀愁を帯びながらも揺動を煽るサックスの鳴りとともに推進力あるラップを繰り出す「Do I Love You」、しっとりした佇まいとウォームなムードがほっこりとしたチルを生む「Honesty」など、それぞれ音色は異なるも、塾手の演奏陣がそれらに沿う浸透性の高いサウンドを構築。生音という最大の武器を活かしながらも、畏まったり背伸びを強要したりしない、観客が自ら五感を活性させたくなるようなアプローチが彼らの魅力だ。

 ジャズを下敷きにした楽曲性は、時に堅苦しさや敷居の高さを生むこともあろうが、アフロパ・サウンドには良い意味でそれが皆無。ヒップホップにありがちなボースティング、理想や主張などを突きつけるのではなく、彼らの身近に起こる日常に寄り添った詞世界もそういった雰囲気をもたらす一助になっているとは思うが、サウンド、フロウともにステージからフロアへ推し伝えるというよりも、観客とともに感情を共有する“一体感の共感”に視線を置いているところが、親しみを生んでいる要因の一つなんだろう。おそらく若い女性客層がフロアの7割以上を占めているというのも、その証左なんだと思う。


 また、多彩なアプローチのなかで組み込まれる小芝居的な演出も、ステージに賑やかさをもたらしていることの一つ。当日は“大感謝祭”ということで、来場者特典として配布した(大安吉日に日本で一番当選確率の高い西銀座チャンスセンター1番窓口で購入するなどした)年末ジャンボ宝くじについての説明や、(そのMCからの伏線を受けて)サンタクロースからステージへグラスのプレゼントが届き、観客とともに乾杯するといったコミカルでアットホームなMCには、ライヴを楽しむだけではない、少しでもヒップホップの間口を広げることに繋がるような施策、意図も垣間見えると感じるのは、買い被り過ぎだろうか。

 終盤は、未音源化の新曲を経て、“ありがたくない?”というフレーズをキーワードにサンプラーを駆使して面白おかしく“感謝”を伝えながら、アフロパ随一のグルーヴ・ダンサー「Still Movin' On」へと導いてフロアにシンガロングやコール&レスポンスをもたらすと、ゆったりと陶酔や和みをもたらす「Life Is Good」へ。日常さまざまなことがあるけれど、人生は素晴らしいというテーマを掲げて、本編を終えた。


 アンコールは(自分たちにはない)ヒップホップ・グループらしい“男たちのワチャワチャ感”を体現したいとの願いから、対バン相手のパブリック娘。を招き入れての「おつかれサマー」でジョイフルなステージを演出すると、ラストは心地よいグルーヴでフロアが覆われるなかで「Departing!」へと繋いでエンディング。ここまで楽曲をそれほど詰め込んだという構成ではないが、MC二人の微笑ましい掛け合いと、派手にアピールせずも強固なボトムを敷き、身を揺らすグルーヴを生み出しながら、音を粒立たせる計らいを怠らない各バンド・パートの巧みな音鳴りで、スタイリッシュで和気藹々としたアフロパ・ワールドを創出。軽やかで余韻の残る快活なパフォーマンスを繰り広げた充実一途のステージに、時の早さをより実感したのだった。


◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 (OKOD)
02 Halation
03 Cosmic Dance
04 After Five Rapper~SHACHIKU REQUIEM~
~MC〈年末ジャンボ宝くじ〉~
05 Get On The Mic
06 Question One
~MC〈サンタからのプレゼント〉~
07 Do I Love You
08 Honesty
09 Plastic Summer(New Song)
10 SAMPLER INTRO~Still Movin' On
11 Life Is Good
≪ENCORE≫
12 おつかれサマー(guest with パブリック娘。)(Original by パブリック娘。)
13 Departing!


<MEMBER>
WAKATHUG(MC)
弥之助(MC)
加地三十等兵(g)
BOY GENIUS(key)
KNOB(b)
BUBUZELA(sax)
TK-808(ds)

guest:パブリック娘。

◇◇◇


※音割れ注意

◇◇◇

【パブリック娘。】

 AFRO PARKERによる〈年末ジャンボ大感謝祭〉の対バン相手となったのは、平成元年生まれの3MCからなるラップ・ユニット、パブリック娘。の面々。以前、CICADAのアルバム『formula』リリース記念ライヴ〈CICADA 2nd Full ALBUM“formula”release oneman show〉にてゲスト出演した時以来(その時の記事はこちら→「CICADA@WWW X」)だとすると、3年ぶりに彼らのパフォーマンスを観ることになる。

 2019年7月にリリースした2ndアルバム『アクアノート・ホリデイ』収録曲を中心とした楽曲構成。ほとんど予備知識がないままだったが、「川」「LOVE」「あるく」などシンプルなタイトル同様、気取ることのない等身大の世界観とアティテュードで肩の力を抜かせて楽しませてくれる。“ゆとり世代の最終兵器がアラサーになった”とやや自虐的になっているが、満ち足りない現状から抜け出せずにいながらも、これまで重ねてきた時間と経験を否定しない、後ろ向きなようで実は欲と理想を追うことを止めないスタンスのパフォーマンスには、心地よい緩さと親近感も覚えたりする(自分は全くもってゆとり世代でもなんでもないけれども)。

 冒頭の「PS8」ではプレーステーション8が出るだろう未来に自らを投影するという倦怠と悲壮も薄っすらと見えるムードでシニカルにフロウしたかと思いきや、続く「初恋とはなんぞや」ではフロアに女性が多く占めるなか、やや控えめながら“おし〇こう〇こち〇こま〇こ”のフレーズをきっちり入れたりと、パブリック娘。のスタンスを変えない“らしさ”でゆっくりと距離感を縮めていく。

 トピックとなったのは、城戸あき子を呼び込んでの「泡」。淡いピンクやパープルのライティングの視覚効果とも相まって、甘酸っぱくもどこかやるせなさも帯びた楽曲には、大人が歌うセンチメンタリズムが横溢。輪郭あるフロウを刻む清水大輔、ロマンティックな肌当たりの齋藤辰也、剥き出しながらも感情を揺さぶる文園太郎、それぞれのフロウを城戸のヴォーカルが一つずつ紡いでいく光景は、パブリック娘。の音楽的振幅を拡げる刺激になったのではないか。

 そのムーディな流れから一転、ラストはフロアキラーなアッパー「そんなことより早く、このパーティーを抜け出さない?」でパブリック娘。らしくヴォルテージを上げていくが、こういったパーティ・チューンとの相性はピカイチ。アウトロではフロアへ降りた齋藤が太鼓を乱打するなか、「セックス・オン・ザ・ビーチ」のフレーズも飛び出してのエンディング。アットホームでハッピーなヴァイブスに包まれながら、AFRO PARKERへの橋渡しを的確に務めた好アクトだった。

◇◇◇

<SET LIST>
PS8
初恋とはなんぞや

LOVE
どうする
あるく
水槽
泡(guest vocal with 城戸あき子)
そんなことより早く、このパーティーを抜け出さない?(include phrase of “Sex On The Beach”by SPANKERS)

<MEMBER>
パブリック娘。are:
文園太郎(MC)
清水大輔(MC)
齋藤辰也(MC,g,key,perc)

DJ春菊(DJ)

城戸あき子(vo)



◇◇◇



◇◇◇

【AFRO PARKERのライヴに関連する記事】
・2014/06/07 Mixed Up@代官山LOOP
・2015/06/06 Mixed Up@代官山LOOP
・2016/11/13 Let's Groove@六本木VARIT
・2017/04/22 Parade!@六本木Varit.
・2019/12/21 AFRO PARKER@表参道WALL&WALL(本記事)





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