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*** june typhoon tokyo ***

Perfume@有明アリーナ


※ネタバレを含むため、自己責任で閲覧ください

 模索と閃きを携えて舵を取った、次なる進化への出航(たびだち)。

 2018年8月の『Future Pop』以来約4年ぶりとなる2022年7月リリースのオリジナル・アルバム『PLASMA』を引っ提げたPerfumeのアリーナツアー〈Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”〉が8月20日(土)の東京公演より開幕。愛知、大阪、広島、福岡、長野、宮城、埼玉を経て、11月5日(土)・6日(日)の北海道まで9会場を巡る予定となっている。その東京公演2日目を観賞。会場となる有明アリーナは、2021年に「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」のバレーボール・車いすバスケットボール会場として使用された後、再整備されて8月20日に最大15000人収容の施設として再開業。同日のPerfumeのツアー初日が有観客イヴェントとしての杮落としとなった。

 ところで、有明アリーナだが、東京都が整備する2020東京オリンピック・パラリンピックの施設のなかで国産木材の使用量が最も多いらしく、内部は至る所に木材を使用したデザインが施され、棒状の木材が並べられた装飾は新国立競技場のそれを想起させる。ただ、新国立競技場同様、残念なことにスタンド席への通路・階段が狭く、入口の数も少ない。スタンド席は横移動の導線が1つしかないので、退場時は混雑必至の造りとなってしまっている。本公演では規制退場を実施していたが、集客が見込めるイヴェントでは規制退場は必至だろう。スタンド席は傾斜があり、前席に膝が届くような狭さはなく、1階フロアからそれほど遠さも感じないが、4階席は梁として設置された木材が近く天井が迫る感じゆえ、あまり開放感はない。また、座席位置によってはモニターが見えづらく、音響も(抜け感がなく)微妙ゆえ、そのあたりに拘る人は、出来る限り良席(値段が高い席になるのか)をセレクトした方がよいかもしれない。
 それと、困惑した人が多かったことの一つとして、スタンドの通路床や座席案内板に書かれてあるアルファベット始まりの番号が、チケットに書かれてある席番号(列・番)と関連性があるようで実はない単なる通路番号なので、座席を見つけるのに苦労している人が比較的多く見受けられた気がする(たとえば、チケットに「Eブロック1列100番」とある席は、案内板にある「E1」エリアにはない)。


 さて、固体、液体、気体に次ぐ物質の第4の状態といわれるプラズマを冠した、Perfumeの“第4形態”を示したアルバム『PLASMA』を軸に行なわれた本公演。前回の公演〈Perfume LIVE 2022 [polygon wave]〉(記事 →「Perfume@ぴあアリーナMM」)は、アリーナ全体にLEDライトを敷き詰めた漆黒の縦長のステージと奥にあるスクリーンパネルを用いた立体的な映像を駆使した、最先端なテクノロジーを強調・特化したライヴだったが、今回はテクノロジーオンリーという訳ではなくて、人間味も感じさせる趣向に。テクノロジーとヒューマニズムの融合やメタモルフォーゼがPerfumeの“第4形態”なのかどうかは分からないが(あ~ちゃんも「“第4形態”って言っているけど、ようわからん」とのこと)、Perfumeの生の声と届けることを意識したようなライヴ感を模索したステージとなった。

 冒頭はアルバム『PLASMA』のタイトル曲となるインストゥルメンタル「Plasma」から。360度見渡す円形のセンターステージと、そこから伸びた縦にゆるい2本のS字カーブを描いた花道と小ステージには白い布が被せてあり、「Plasma」が始まると同時にセンターステージの上部からゴンドラに乗った3人が登場。「上から登場するのが夢だった」というオープニングを経て、「Flow」へと繋げた。ライヴの最後にはあ~ちゃんが「では、未来へ帰ります!」と言って、その後「さよならプラスティックワールド」のアウトロで3人が再びゴンドラで上がっていったから、『PLASMA』(通常盤)のジャケット・ヴィジュアルにあるように、天界から舞い降りてきたというイメージだろうか。

 「Flow」は、フックへ向けてドロップを下敷きに組み込んでいるトラックではあるが、どちらかといえばゆったりとした空気を帯びた楽曲ということもあって、その空気を引きずったのか、続く「ポリゴンウェイヴ」では会場がハイテンションとはならず、どこか微妙な感じに。前回公演では「ポリゴンウェイヴ」から「アンドロイド&」という流れでヴォルテージを高め、コズミックな世界を描く刺激的なアクトを展開したが、その熱量には残念ながら至らず。MCでも「みんなポカンとしてたね」と語っていたが、冒頭からシームレスに続けた「再生」までは、どこかステージにのめり込めない感覚がフロア一帯を覆っていたような気がした。


 アルバム『PLASMA』は「Drive'n The Rain」「ハテナビト」「さよならプラスティックワールド」といった新曲もあるが、やはり核を担っているのは「ポリゴンウェイヴ」をはじめとする『ポリゴンウェイヴ EP』収録曲や前回公演のラストに披露した「マワルカガミ」あたりだろう。したがって、その世界観を本ツアーでも重視するのが定石なのだろうが、前回の「ポリゴンウェイヴ」を中心に据えた〈Perfume LIVE 2022 [polygon wave]〉との差別化を考えると、楽曲構成もある程度似通わないような工夫も考慮したのだと思う。それが久しぶりのアルバム・ツアーの序盤という、しかも有明アリーナの杮落としという手探りな状況も加わって、ライヴとして一気に熱度を高めるまでに至らなかったのかもしれない。

 ファンからはおそらく「分かってない」と言われるだろうが、個人的には冗長なMCをやるよりも1曲でも多く楽曲を組み入れてほしいタイプなので、冒頭から「再生」後のMCで1時間を費やすというのは、やや食傷気味ではある。もちろんメンバーのそれぞれの声が聴ける貴重な時間の一つではあるし、この交流こそがPerfumeのライヴというのも理解している。3人3様のキャラクターが見て取れるし、話自体は面白いから(特にあ~ちゃん)嫌ではないのだが、とにかく長い。曲構成によっては、それで流れをぶった切ってしまうように感じる時も過去にはあった。
 しかしながら、この公演に限って言えば、序盤のいまいち突き抜けない雰囲気をガラッと変えたのが、MCだったことは否めない。ライヴでは恒例の会場をエリア毎にチーム分けして拍手を煽るくだり(この日のチーム分けは、かしゆか側が「た」、のっち側が「き」、あ~ちゃん側が「あ」、全体で「せ」の「滝汗」)などをするうちに熱量が高まり、その後のフロアの一体感を導き出すことに一役買っていた。


 MCを終え、ほんのりとした憂いを帯びながらも前へ進む推進力をもったビタースウィートなメロディが耳を惹く「Drive'n The Rain」、可憐なメロディとは対照的なファットなボトムにヒュン、ヒュンと飛ぶ効果音が重なって、近未来なスペースヴォヤージュを思わせる「ハテナビト」と進むにつれて、序盤からの違和感も抜けていく。そこへさらなる躍動を与えたのは「ナチュラルに恋して」。冒頭からアルバム『PLASMA』の楽曲が連続するなかで、突然飛び出した12年前のラヴリーなダンス・ポップでさらにオーディエンスとの共感度を高めることに成功すると、リズミカルに弾ける愛らしいサウンドが楽しい「Time Warp」へ。子供の頃のピュアな憧憬を衒いなく紡いだこの曲で、ワクワクとした感情をフロアいっぱいに膨らませていった。

 「ナチュラルに恋して」「Time Warp」の2曲で、Perfumeの魅力の一つである飾らないキュートな出で立ちを示すと、センターステージをスクリーンが円筒のように囲み、ウィスパーな「ハジマル……」の声とともに「∞ループ」がスタート。前半は円筒スクリーンの映像を見る形になるが、この間にメンバーが衣装チェンジを行ない、『PLASMA』のヴィジュアル・イメージカラーと思しき真っ赤なドレスの3人が円筒スクリーン越しのセンターステージに登場。同じように「Spinning  World」でも円筒スクリーンに“Spinning  World”などの文字が映されるなかで、シックでタイトなダンスを披露していく。「Spinning  World」のミュージック・ヴィデオでは背中にゼンマイをつけた3人が、ゼンマイが切れかかるとカクカクとしたブリキのおもちゃのような動きになるのだが、ここではスクリーン越しという肉眼では見づらい視覚効果を駆使して、リアルとヴァーチャル、またその合間にある温もりあるテクノロジーや近未来(このコンセプトは「アンドロイド&」にも通底するところか)を表現、演出しているようにも感じられた。


 円筒スクリーンがセンターステージから取り除かれると、両サイドからS字に伸びた花道の先にある小ステージの脇から、上へ2つの縦長のスクリーンがそれぞれ伸び始め、アンドロイド(の影)が映し出されて「アンドロイド&」へ突入。前回公演では、LEDが貼られたステージの上でポリゴンのオブジェに入った黒子がダンスで応えるパフォーマンスを披露したが、本公演は3名のみゆえ、センターステージの3人のダンスにスクリーンのなかのアンドロイドが呼応して踊る演出に。「マワルカガミ」では歌詞にあるミラーボールをフィーチャーし、花道にもいくつかミニチュアのミラーボールを置くなど、フロア全体をキラキラと輝かせ、その流れからストック・エイトキン・ウォーターマンを想起させるPWL流アクセントを採り入れた「ワンルーム・ディスコ」とディスコフロアを意識した展開で、終盤へと橋渡しをしていく。

 ファンとの交流を深める「P.T.A.のコーナー」では「だいじょばない」のフレーズを少しだけ披露して、MC明けにはPerfumeの3人との距離がより深まったタイミングでフロアキラーの「Party Maker」へ。ここからはライヴではお馴染みの「Puppy love」や、Perfumeの半生を歌詞に投影させたような「STAR TRAIN」と、動と静の両面でオーディエンスの気持ちを昂ぶらせて、ラストスパートをかけていく。ラストは「(ライヴの)最後にやるような曲ってタイトルだなって」という通りに「さよならプラスティックワールド」でエンディングへ。人間の生活を便利にさせてきたプラスティックな世界という物質的な意味だけでなく、仮想現実や玉石混淆な情報にまみれた世界を脱して、テクノロジーとヒューマニズムが適切なバランスで共存する世界へという人類の永遠のテーマのような壮大な願いを、そんな重厚な想いを微塵も感じさせない軽快で生命力に溢れたリズム・トラックで描き上げていく。その中田ヤスタカの楽曲センスたるや、苦もない表情で演じ切るPerfumeたるや、ということか。


 序盤のMCでのっちが「(中田ヤスタカの曲は)私たちの背中を押してくれる」といい、かしゆかが「(前回の〈[polygon wave]〉ライヴとは違い、MIKIKO先生からのツアーの演出のアイディアが)お客さんとの距離が近く、温かくなるように考えてくれた」と語っていたが、それを一番体現していたうちの一つが、このラストの「さよならプラスティックワールド」なのかもしれない。当初は『PLASMA』の世界は「ポリゴンウェイヴ」を頂点とするのだろうと考えていたゆえ、序盤での「ポリゴンウェイヴ」のアクトにどこか腑抜けてしまった雰囲気を感じてしまっていたが、楽曲が進むにつれてPerfumeらしさが横溢。夢であったゴンドラでの登場から130分を経て、再びゴンドラで未知なる未来へと召還されていった。

 これまでテクノポップという音楽を核として、進化するテクノロジーを享受するかのごとくステージやパフォーマンスを発展、究めてきたPerfumeクルー。次々とテクニカルな技巧でハイパーデジタルな世界へ到達したかと思ったら、今度はヒューマニズムとの融合を推し進めようとしてきた。このライヴでその具現化が100%満足がいったものとなったかと問えば、素直に首を縦に振るまでにはいたらない。だが、物理と精神の共鳴を楽曲とダンスを介在した演出によって表現しようという試み、チャレンジは、そこかしこに描出されていたように思う。ツアーはスタートしたばかりで、おそらくステージを積み重ねるにつれて成熟を増していくだろうから、ツアー後半に改めて観賞してみる機会があれば、また違った景色が見えるのかもしれない。


◇◇◇

<SET LIST>
01 Plasma (*PL)
02 Flow (*PL)
03 ポリゴンウェイヴ(Original Mix) (*PL)
04 再生 (*PL)
05 Drive'n The Rain (*PL)
06 ハテナビト (*PL)
07 ナチュラルに恋して
08 Time Warp(v1.1) (*PL)
09 ∞ループ (*PL)
10 Spinning World (*PL)
11 アンドロイド& (*PL)
12 マワルカガミ (*PL)
13 ワンルーム・ディスコ
~P.T.A.のコーナー~( include phrase of “だいじょばない”)
14 Party Maker
15 Puppy love
16 STAR TRAIN
17 さよならプラスティックワールド (*PL)
18 OUTRO~Plasma

(*PL):song from album『PLASMA』


<MEMBER>
Perfume are:
a-chan / あ~ちゃん(Ayaka Nishiwaki / 西脇綾香)
Kashiyuka / かしゆか(Yuka Kashino / 樫野有香)
Nocchi / のっち(Ayano Omoto / 大本彩乃)

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2018/12/11 Perfume@横浜アリーナ
2020/02/25 Perfume@東京ドーム
2021/02/16 Perfume@ぴあアリーナMM
2022/08/21 Perfume@有明アリーナ(本記事)

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