*** june typhoon tokyo ***

Frank McComb@COTTON CLUB


 自然体で織りなす感覚的なソウル・ミュージック。

 スティーヴィー・ワンダーやダニー・ハサウェイを彷彿とさせる歌声と言われ続けて久しい、2000年にソロ・デビューを果たしたフランク・マッコムが再び東京へやってきた。すっかり恒例となったコットンクラブ公演を観賞。
 2012年3月の前回同様にトリオでのステージだが、メンバーは一新。ドラムとベース、ともに20代の若手を起用してのパフォーマンスとなった。これまでの観賞公演は次のとおり。

・2006/12/07 FRANK McCOMB@COTTON CLUB
・2007/12/30 FRANK McCOMB@COTTON CLUB
・2008/11/14 FRANK McCOMB@COTTON CLUB
・2009/12/22 FRANK McCOMB@MotionBlue
・2011/03/04 FRANK McCOMB@COTTON CLUB
・2012/03/09 FranK McCOMB@COTTON CLUB

 フランク・マッコムはハービー・ハンコックやオスカー・ピーターソンに影響を受けているゆえ、これまでもソウル・シンガーというよりもジャズ・ピアノ・ヴォーカルといった佇まいが目を引いたが、この日は冒頭からしっかりと歌唱パート多めの構成に。「アナザー・デイ」あたりからはメンバーのソロ・パートを含むインスト・パートも出始めたが、メンバーをステージ・アウトさせてのピアノ・ソロ「ア・ソング・フォー・ユー」(ダニー・ハサウェイのカヴァーで有名な曲だが、個人的にはカーペンターズの歌唱にも親しみがある)で憂いを湛えた味わい深い弾き語りで魅せたりと、歌うことにフォーカス。

 生ピアノを弾き終わると、再びバンド・メンバーを呼び寄せて、自身はムーグとエレピの前へ。アップ・テンポのファンキーな音を鳴らし始めて歌い出したのは、スティーヴィー・ワンダーの「スーパースティション」。それまでフランク・マッコムの声と鍵盤から発する美麗な音に聴き惚れていた観客がいっせいに歓喜の声を挙げ、手を叩く。この瞬間の興奮は、スティーヴィー・ワンダーが作った楽曲とフランク・マッコムとバンド・メンバーが織りなす心地良い演奏とが重なることで初めて生み出される“アメイジングなマジック”といってもいい。

 それにしても、このカヴァーを聴くたびに、フランクの声はスティーヴィーを想わせる。全部の楽曲でスティーヴィーのように聴こえる訳ではないのだが、スティーヴィーの楽曲だとことさら似ているように思えてしまうから不思議だ。声真似をしている訳でもないのに。
 おそらく、“ハート”や“ソウル”で、頭でっかちにならず五感全体でスティーヴィーの楽曲を感じようとすると、自然とそういう歌い方になってしまうのかも知れない。

 そんなことを考えているうちに本編が終了。当初、歌唱パートが多めと述べたが、1時間を経過しようとするなかで5曲ほどしか演奏していない。それでも曲数が少ないとあまり感じないのは、知らず知らずのうちに、彼らが生み出す音の波の連なりに身を存分に委ねてしまっているからなのだろう。ベースとドラムとの3ピースというリズム隊の構成も、彼らの生きた音とグルーヴを最良の状態で届けるのにすこぶる絶妙なのかもしれない。

 アンコールは2曲。ラストの「ドゥ・ユー・リメンバー・ラヴ」は丁々発止のインタープレイというよりも、ドラムのソロを大胆にフィーチャーしたバンド・メンバーの挨拶代わりのパートを含むものに。ベースは漆黒のグルーヴを描出しているが、音鳴りは分厚くとも非常に安定したリズムを構築。幼児が安らぐ鼓動のように身体に寄り添うボトムが、3名でも音圧の弱さを露呈しないサウンドのしなやかさに繋がっているのだろう。
 結局、アンコールは2曲で約30分と歌唱パート少なめのインタープレイへと傾倒してしまったが、細かなところで目まぐるしく音像を変化させながらのクライマックスは、まさに圧巻という言葉が相応しいパフォーマンスだった。

 そのステージにいつも快哉を覚えるのは事実なのだが、欲を言えばやはりヴォーカルをもっと聴きたい、と思うのは虫が良すぎるか。彼のアルバムにはR&Bやソウル・マナーの良曲が多く収められているゆえ、一度ジャズ寄りではなくR&Bやソウルをガッツリと歌うヴォーカル・ライヴを再現してみるのも面白いと思う。

 フランク・マッコムのライヴの良さのもう一つは、演者が楽しんでいる様子が伝わってくること。フランクのまさに“フランク”な笑いやバンド・メンバー同士が互いの巧みなプレイに“やるなあ”と微笑み合う姿は、こちらもニヤリとしてしまうほどだ。音楽を楽しむ時を提供し、観客と共に共感する心地良さは、終演後の爽快な余韻にも確かに残されていた。しばらくその場で席を立たずにいたのは、もしかしたら知らずと自身でその心地良さを証明していたのかもしれない。



◇◇◇

<SET LIST>
01 Somebody Like You
02 Love Natural
03 Another Day
04 A Song For You(Original by Leon Russell, well Known for Donny Hathaway)(Acoustic Piano Solo)
05 Superstition(Original by Stevie Wonder)
≪ENCORE≫
06 
07 Do You Remember Love

<MEMBER>
Frank McComb(vo,p,key)
Glenn Gaddum Jr.(b)
Yoran Vroom (ds)



◇◇◇







◇◇◇

Frank McComb - Superstition


Frank McComb - Soulmate








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