
相当久しぶりにクラブ・イヴェントへ。以前はたまに行っていたのだが、ルックスとは似つかわしくないと思われているタバコ&酒ノーサンクスな自分にとって、クラブは自身の音楽生活の選択肢から外れかかって等しかった。年齢のせいもあるか。(苦笑)
それだとしても、この深夜に渋谷へ向かわせたのは、スペシャルゲストがまさにスペシャルだったから。それはモエこと嶋野百恵。深夜2時頃、渋谷のPLUGへ駆け込み、彼女の登場を待つ。
DJがリアーナやビヨンセ「クレイジー・イン・ラヴ」、そしてブラン・ニュー・ヘヴィーズ「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」(のカヴァー)など腰を揺らす音をかける。続けて女性シンガーのDaizyが3曲ほど。「この後のゲストが本当に凄いので、偏頭痛はするし…緊張した」「ちょっと10分だけすみません」など謙遜していたが、なかなかのヴォーカル。2曲目には久保田利伸「Missing」を歌っていた。
そして、DJ MAMAの煽りを受けて本日の主役の登場。アルバム『531』からが中心とのことで「Violet Nude」「baby baby, Service」「45℃」はもちろん、「Next Lounge」も「Hot Glamour」も。時間の関係かちょっと尺が短いヴァージョンもあったが、彼女が作り出す空間の艶やかさに遜色はない。「Everything(I See)」(D-Influenceが制作、フィーチャリングにSKOOP(スクープ・オン・サムバディ)が参加した超名曲!)も演って欲しかったが、30分ほどの時間枠でその要求は贅沢というもの。ラストはKOHEI JAPANを迎えての「夜明け前」。“MOETとKOHEI、未来の幕開け”を生で聴けるとは! な瞬間だった。
客層を見て若い女性が多いことに気づいたモエ。「みんな何歳くらいなの?」「どうして私の曲知ってるの?」などと聞いていたが、端緒はどうであれ、優れた楽曲は時間を超える。90年代後半、J-女性R&Bブームの隆盛の勃興期にデビューした彼女。雨後の筍のように現れた女性R&B/DIVAブームにおいては、R&Bなんていうが歌謡曲じゃないかと一部で揶揄されたことも。とはいえ、MISIAや宇多田ヒカル、倉木麻衣らこのブームから成功を収めたヴォーカリストの多くはR&Bとは離れてしまい、またはメジャー・シーンから遠のいてしまった。現在のR&Bはいかほどのものか。切な系やキラキラ系などに退化し、R&Bとは程遠いものになってしまった。
突出した声量もないが、嶋野百恵のシルキーなエロティック・ヴォーカルは唯一無二。妖しさと恍惚、打ち寄せる心地良いグルーヴの波を泳ぐ彼女の世界に、身体を揺らさぬ者はないはずだ。これほどグルーヴをもたらすシンガーが今どれほどいるのだろう。現在はTobacco Candyというユニットで歌っている彼女。だが、R&Bをブームに終わらせないために、これからもずっと歌っていって欲しいシンガーの一人だ。
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嶋野百恵 feat.KOHEI JAPAN - 夜明け前

では、
充電がなくなる寸前に撮ったピンボケ過ぎるモエ画像でも。(苦笑)



ライヴが終了した午前3時過ぎ、個人的な予定もあり、足早に会場をあとにしようとしたら、出口にグラスを片手に持ったモエと遭遇。写真を撮っているファンとの談笑の隙に握手してもらい「ありがとう~」の声を掛けてもらった。その後強い雨脚の中、徒歩で自宅まで戻りずぶ濡れになったが、モエのおかげで気分は悪くなかった。悪くなるはずがなかった。
嶋野百恵の楽曲を聴きながら、雨の深夜の東京を歩く。嶋野百恵の楽曲は雨の日に良く似合う、とつくづく思いながら。

