
暫定のマイ・フェイヴァリット・クボジャー。
1986年のメジャー・デビュー以来、日本の歌謡シーンにブラック・ミュージックを浸透、伝播させ、今もなお他の追随を許さない“日本のR&Bのパイオニア”久保田利伸。30周年をライヴハウスでのショーで締めくくった後も、レジェンドとしての地位を保ちながら、新たな作品への意欲を欠かさずに前進しているエンターテイナーだ。
デビュー以来、久保田利伸の音楽を聴き続けるなか、以前に“個人的な久保田利伸ベストは何だろうか”とふと考えることがあり、当初は区切りの30周年を迎える時に列記してみようと構想は練っていたのだが、何しろ2018年まで邦盤アルバム17作、US洋盤アルバム3作、ベスト盤6作、さらにシングルほかの楽曲を発表している久保田。それらを改めて聴きなおすというのと愛する楽曲が多すぎて絞り込めないというジレンマから
ただ、普通に発表しても面白くないので、“同一(パッケージ)作品からは1曲のみしか選べない”という縛りを勝手に設けることにした(
なお、オールタイムで10曲をセレクトしているが、もちろん選ばれない作品(パッケージ)も。ただ、それはその該当なしの作品の評価が高くないという訳ではないので、勘違いなきよう。そして、繰り返すが、これはあくまでも現時点での暫定順位(
久保田利伸の音楽性やその信念にブレはないのに、こちらはブレまくりなルールのベスト・ソングス。それでも見てやろうかという
まずは、4~10位までだが、こちらは順不同に。作品リリース年順に発表していくことにする。
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■「すべての山に登れ」 収録作『Such A Funky Thang!』(1988/9/30)

3枚目のアルバム『Such A Funky Thang!』に収録。ミニ・アルバム三部作「Dance If You Want It」「Indigo Waltz」「High Roller」や「Love Reborn」なども入った充実作だが、何故か繰り返し聴いた回数が多かった印象が。久保田風「はじめ人間ギャートルズ」だと勝手に思っているタイトル曲「Such A Funky Thang!~隕石が落ちた日~」も同じくらい聴いた気がする。
■「Let's Get A Groove ~Yo! Hips~」 収録作『Neptune』(1992/7/1)

アクアマリンを想起させる水色のジャケットカラーが映える6枚目のアルバム『Neptune』に収録。ゴスペルやJB流ファンクをごった煮したようなブラコン作で、「夏の子午線」やら「Sweet Dreams~そっとおやすみ~」やらジャケットに寄せた洒落たポップスがあるなかで“Yo! My Brother”と暑苦しく語りかけてきたこの曲で、久保田のファンキーソウルマンぶりを再確認。
■「ZA-KU-ZA-KU Digame」 収録作『BUMPIN' VOYAGE』(1995/1/28)

前年に「SUNshine, MOONlight」の両A面シングルで発売され、1995年の7枚目『BUMPIN' VOYAGE』に収録。ヴィクトリアFCOのCMにも使われ、ハイテンションに展開するアッパー・ファンクはスポーツものとの相性の良さを実感。ニューヨークのトランペット奏者ルー・ソロフのトランペットがホットなテンションにクールな風を吹き込み、ハウス・シーンでも重用される歌手ジョイ・カードウェルらのコーラス隊も盛り上げに一役買っている。
■「Messengers' Rhyme ~Rakushow, it's your Show!~」 シングル(1999/9/8)

久保田の楽曲の特色の一つに親しみやすい軽妙なファンキー・ポップ作風があるが、これもその路線。飯島直子と草彅剛が主演した映画『メッセンジャー』のエンディング曲として書かれたもので、トボケた感じのラップに掛け合う“ラクショウ!ラクショウ!”のコーラスがパーティ感を高める。“ラクショウ!”のコーラスは飯島直子の声のサンプリング。飯島直子嬢は久保田の代々木での公演のVIP席でよく見かけた気が。
■「VOODOO WOMAN」 収録作『TIME TO SHARE』(米2004/9/21 / 2004/9/15)

ワールドワイド・アルバム第3弾『TIME TO SHARE』に収録され、女性デュオ、ジャネイのレネイ・ヌーフヴィルやMCにサード・アイをフィーチャーしたファンク・ロック調。どこか土の薫りもするグルーヴィなトラックが激しく腰を揺らせる。同アルバム自体にはア・トライブ・コールド・クエストのアリ・シャヒード・ムハマドやモス・デフ、サイ・スミス、そしてアンジー・ストーンと参加しており、R&B、ネオソウル、ヒップホップ好きな方面には美味しさてんこ盛り。セールスは芳しくなかったかも知れないが。
■「It's Time To Smile」 収録作『FOR REAL?』(2006/3/1)

日米通算14枚目、邦盤としては11枚目のオリジナル・アルバム『FOR REAL?』に収められたメロウなネオソウル。同作には「Club Happiness」や「a Love Story」「君のそばに」などタイアップ曲もあるが、ネオソウル/R&B好きゆえ「It's Time To Smile」を選んでしまう。派手さはなく特徴的な展開もないが、それがかえっていいという引きの美学に満ちた名脇役曲ではないだろうか。
■「24/7 ~NITE AND DAY~」 収録作『Timeless Fly』(2010/2/24)

タイトルからも分かるように、アル・B・シュア!の「ナイト・アンド・デイ」をサンプリング。それだけでもう十分ではないだろうか(笑)。ただ、収録されている12枚目のアルバム『Timeless Fly』には、KREVAとの「M☆A☆G☆I☆C」、MISIAとの「FLYING EASY LOVING CRAZY」、ドラマ主題歌「Tomorrow Waltz」、小泉今日子、JUJUらがゲストが豪華ゆえ目立ってはいなかったかも。選出はMJフリークなので、この曲かマイケル・ジャクソンをオマージュした「STAR LIGHT」(実際「スリラー」となる前の仮タイトルが「スター・ライト」だった)と迷ったが、こちらに。
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ここまで順不同で7曲を発表。別に故意に狙っている訳ではないが、シングル曲が少ないのは、おそらく性格がひん曲がっているから。いいえ、ピュアに選んでいます。というのは冗談として、趣向としてR&B/ソウル(特にネオソウル)寄りというのはあるのは確か。それと、好きな楽曲と口ずさめる(歌える)楽曲はまた別モノで、初期のアルバムの曲はソラで歌えたりするものも多いが、近年の作品はそこまで覚えてなくても愛聴する曲もある。そのあたりはたぶん
では、マイ・フェイヴァリット・久保田利伸のトップ3を発表。今度は順不同でなく3位から1位とカウントダウンしていく。早速第3位から。
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■第3位「As One」 収録作『As One』(2000/9/27)

ワールドワイド・アルバム第2弾『Nothing But Your Love』と並行して制作されたという日米通算11枚目(邦盤9枚目)のほぼセルフ・プロデュース作のタイトル・チューン。「ポリリズム」(Perfumeのアレではない)や「the Sound of Carnival」といったシングルやドラマ『はみだし刑事~情熱系~』主題歌「Always Remain」などがトピックとなっていたが、このR&B濃度の高い「As One」のスルメ的な味わいが何とも心地良く、第3位に選出。『As One』はあまり目立たない作品かも知れないが、個人的には久保田史上1、2を争うアルバムではないかと感じている。
■第2位「Never Turn Back」 収録作『Nothing But Your Love』(米2000/6/28 / 2000/7/25)

ワールドワイド・アルバムは3枚とも個人的に評価が高いのだが、殊の外第2弾『Nothing But Your Love』は長い時間を要したこともあり(関係者の時間にルーズな部分も含まれなくはないが)充実度も高い。ゲスト参加もラファエル・サディーク、ダイアン・ウォーレン、ザ・ルーツ、アンジー・ストーンほか久保田利伸ならではのラインナップ。この「ネヴァー・ターン・バック」はローリン・ヒル、ワイクリフ・ジョンとともにフージーズで活躍したプラズをフィーチャー。フージーズは2000年頃事実上活動休止だったことも久保田作品への参加を後押ししたか。このセクシーなミディアムR&Bグルーヴにピンときて未聴な人は、ぜひ同作をオススメ。プラズも日本語で“イチバン、イチバン”言っているぞ。ザ・ルーツが参加した「MASQUERADE」もご馳走なのだが、同一作品から1曲の身勝手独自ルールを設定してしまったゆえ、ここは「Never Turn Back」に。
■第1位「裏窓」 収録作『LA・LA・LA LOVE THANG』(1996/12/2)

久保田利伸を代表する大ヒット「LA・LA・LA LOVE SONG」がリード曲なのはアルバム・タイトルからも明白。「BODY-CATION」「Summer Eyes」「CLUB PLANET」「虹のグランドスラム」とCMやアニメ・タイアップも多くついた楽曲が多いなか、個人的に食指が動いたのが「裏窓」。同アルバムで唯一久保田以外、久しぶりに川村真澄が作詞した曲で、何といってもヴェルヴェットをなぞるがごとくの柔らかい肌当たりで溶け込んでいくセンシュアルなR&Bで、メイクラヴァーとしても十二分に機能する艶やかさが魅力だ。「LA・LA・LA LOVE SONG」の印象が強く、あまり知られていないかもしれないが、楽曲の質としては断然こちら。奥行きにも深みがある傑作といえよう。
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いかがだっただろうか。これはあくまでも独断と偏見による久保田利伸ベストゆえ、納得出来ないという人もいるだろうが、これを機会にそれぞれ自分だけのマイベストを選んでみてはどうだろうか。上記のベストも“暫定”ゆえ、明日にはコロッと入れ替わってる可能性だってあるのだ。30年間分、久保田利伸の楽曲をまだまだしゃぶり尽くせていないなら、新旧時代に関わらず聴いてみるのが吉。新たな発見に出会えるかもしれない。
最後は最近の久保田利伸のMVで締めとしたい。


