耐え続ける苦しい展開でドロー狙うも、最後に福岡に打ち抜かれて敗戦。
2連勝と好調の福岡に乗り込んだFC東京だったが、速報値でのシュート数は福岡の23本に対して、FC東京は5本(最終的には15本と3本)。ゴール期待値は福岡が2.07に対し、FC東京が0.65とこの数値だけを見れば、福岡が圧倒していたような印象を持つだろう。しかしながら、枠内シュートは福岡が5本、FC東京が3本と、福岡は可能性の低い枠外シュートが非常に多く、ボール支配率は福岡54%、FC東京46%とほぼ互角だった。
では、試合は互角だったかというと、優位に立っていたのは福岡だ。試合開始早々に見木からの最終ラインとGKの間へ落とすロビングに反応した紺野が、前へ出てきたGK野澤大志ブランドンの頭上を越すループシュートを放ち、僅かに枠上に外れたが、その後もFC東京陣内でシュートを立て続けに打っていく。ただ、FC東京はDF陣を中心にことごとくシュートブロックで対応した。
FC東京は24分に左サイドからの俵積田の折り返しを白井に合わせる好機もあったが、福岡もすぐに反撃。32分に紺野のスルーパスにDFと競りながらゴール前へ持ち込んだシャハブ・ザヘディが左からのシュートでネットを揺らすが、僅かにオフサイドでFC東京は命拾いをした。
後半も福岡が攻勢を強めていくと、岩崎、名古をピッチに送ると、57分に名古の右CKの流れから松岡がシュート。だが、これはゴールライン直前で橋本拳人がクリア。ゴールに迫り続けるもゴールを割れない福岡はさらに攻勢を強固に、なんとか最後で踏み止まっているFC東京は守勢から攻勢へ押し戻したいという、それぞれが図式を変えたいなかで、60分にFC東京は小泉と佐藤恵允を投入。74分に福岡はシャハブ・ザヘディをウェリントンにスイッチ。その後、FC東京は安斎、東慶悟、福岡は橋本悠、金森と選手交代で活性化を図っていく。
FC東京は佐藤恵允と投入から推進力が生まれ、ゴール前へ顔を出す場面も出てくるものの、シュートで終わるまでには至らず。歯がゆい攻撃を重ねると、次第に再び福岡へ流れが戻っていく。それを見越してか、FC東京は88分に岡に代えて、エンリケ・トレヴィザンをピッチに送り、最低でもスコアレスドローという方向性へ切り替える。試合内容から鑑みると、妥当な選択ではあったが、ほぼラストプレーとなる時間帯に、右サイドのDF田代からのクロスにファーサイドの安藤が小泉の前へ競り出してダイビングヘッド。これがGK野澤大志ブランドンの手に触れたもののゴールマウスへ吸い込まれて、福岡が劇的な先制弾。残された時間もほぼなく、そのままタイムアップとなった。
FC東京は、勝利した名古屋戦から敗戦した鹿島戦、スコアレスドローだった湘南戦と、いい場面を作るものの、ここぞという決定機を決められず。総体として考えれば、内容的には悪くない試合を続けていたが、この福岡戦は第2節の町田戦に逆戻りしてしまった感じだ。それはシュート本数にも出ていて、横浜FC戦は5本、町田戦は7本と10本以下だったが、名古屋戦は11本、鹿島戦は10本、湘南戦は10本と2桁をキープ。だが、この福岡戦は3本となり、好機を連続して構築する時間帯はほぼなかった。
課題や修正点は数多くあるが、やはり近3試合無得点の攻撃の問題が大きいだろう。一瞬の好機をものにしたものの昇格してきた横浜FCには内容で上回られ、名古屋戦は3得点を挙げたが、現在の最下位の名古屋の低迷ぶりを見ると、相手の不調の影響が少なくない。そう考えると、町田戦同様にシュートを打って終われない試合から脱却できていない。
原因はさまざまだが、やはり1トップとシャドー、シャドーとWBやボランチとの距離感が前線において上手く保てず、連動性を欠いているのが攻撃の低調ぶりに繋がっているのではないだろうか。そして、そういった試合では明らかにダイレクトやワンタッチのパスが少ない。パスコースを見つける間にプレスを掛けられ、精度を欠いたパスでボールをを奪われるか、イーヴンなボールのセカンドボールを奪えずに、守勢に回る回数を徒にふやしてしまうパターンに陥ってしまう。
システムの悪さが全てではないが、1トップではマルセロ・ヒアンであれ、山下であれ、味方との距離感が遠いままでは、単独でフリーとなるようなビッグチャンスでもない限り、なかなか打開していくのは難しそうだ。後半に仲川がCFの位置に入る時は、やや下がり目となってボールを受けに下り、疑似2トップというような場面にもなるから、佐藤恵允や俵積田とアタッキングサード以降まで運べるチャンスが出てくる。
守備面で言えば、よく守ってはいるが、やはり受け身になる時間帯が続くと、後手を踏む危険性を孕んでくる。ピッチコンディションも悪く、自由にボールコントロールが出来ない状況だと、必然的にイレギュラーも起きやすく、そのこぼれ球からピンチを招くシーンが散見された。森重も年齢的なことや疲労度を考えると、試合終盤にクオリティが若干落ちてくるのは致し方ないが、それに対して、システムを替えるのか、選手を交代させて対応するのか。いずれにせよ、どのようなマネジメントを行なうのかは、重要な部分となってくる。
今季はチーム戦術や意志の統一というところをいかに構築していくかということが最大のテーマとなるだろうから、勝つに越したことはないが、試合単独での一喜一憂は避けて、冷静に状況を把握したいところ。チームの状態の良し悪しがはっきりとしてしまう展開を、安定した試合運びへと構築していけるまでに持っていくのは、なかなか容易ではないし時間がかかる。序盤は一進一退の状況が続くとは思うが、大切なのはしっかりと対策を講じて、悪循環に陥らずに持ち直せるかどうかだ。
次節は2週間後にホームでの川崎との多摩川クラシコという緊張高まる一戦となるが、その前にルヴァンカップを挟む。FC東京としては下位カテゴリの奈良クラブに負ける訳にはいかないが、比較的フレッシュな選手、DFでいえば、エンリケ・トレヴィザンや木村、前線ではエヴェルトン・ガウディーノや野澤零温あたりを先発に起用し、内容と結果で良いムードを作り、宿敵川崎を迎え撃ちたい。
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明治安田J1リーグ 第6節
2025年3月15日(土)14:03KO
ベスト電器スタジアム
入場者数: 7,721人
天候:雨のち曇 / 気温:11.9℃ / 湿度:62%
主審:清水勇人
副審:道山悟至、大川直也
第4の審判員:上原直人
VAR:先立圭吾
AVAR:田中利幸
福 岡 1(0-0 / 1-0)0 FC東京
【得点】
(福):安藤智哉(90+5分)
(東):
〈試合経過〉
45+5分 警告 東京 橋本拳人
56分 交代 福岡 北島祐二 → 名古新太郎 / 藤本一輝 → 岩崎悠人
60分 交代 東京 白井康介 → 小泉 慶 / 山下敬大 → 佐藤恵允
74分 交代 福岡 シャハブ・ザヘディ → ウェリントン
74分 交代 東京 長友佑都 → 安斎颯馬 / 高 宇洋 → 東 慶悟
86分 交代 福岡 前嶋洋太 → 橋本 悠 / 紺野和也 → 金森健志
88分 交代 東京 岡 哲平 → エンリケ・トレヴィザン
90+5分 得点 福岡 安藤智哉
◇◇◇
【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 03 森重真人
DF 05 長友佑都
DF 30 岡 哲平
DF 32 土肥幹太
MF 08 高 宇洋
MF 18 橋本拳人
MF 33 俵積田晃太
MF 99 白井康介
FW 14 山下敬大
FW 39 仲川輝人
〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
DF 47 木村誠二
MF 10 東 慶悟
MF 27 常盤亨太
MF 37 小泉 慶
MF 07 安斎颯馬
FW 16 佐藤恵允
FW 28 野澤零温
〈監督〉
松橋力蔵
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【FC東京 2025シーズン 試合日程】
◇2025明治安田J1リーグ
第01節 02月15日(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FC(A・ニッパツ)
第02節 02月22日(土)15:00✕FC東京 0-1 町 田(H・味スタ)
第03節 02月26日(水)19:00〇FC東京 3-1 名古屋(H・味スタ)
第04節 03月01日(土)14:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 03月08日(土)16:00△FC東京 0-0 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月15日(土)14:00✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第07節 03月29日(土)17:00 FC東京 ✕ 川 崎(H・味スタ)
第08節 04月02日(水)19:00 FC東京 ✕ 東京V(A・味スタ)
第09節 04月06日(日)13:00 FC東京 ✕ 岡 山(A・JFEス)
第10節 04月11日(金)19:00 FC東京 ✕ 柏 (H・国 立)
第11節 04月20日(日)15:00 FC東京 ✕ C大阪(A・ヨドコウ)
第12節 04月25日(金)19:30 FC東京 ✕ G大阪(H・国 立)
第13節 04月29日(火)13:05 FC東京 ✕ 清 水(H・味スタ)
第14節 05月03日(土)14:00 FC東京 ✕ 新 潟(A・デンカS)
第16節 05月10日(土)15:00 FC東京 ✕ 神 戸(H・味スタ)
第17節 05月17日(土)16:00 FC東京 ✕ 浦 和(A・埼 玉)
第18節 05月25日(日)15:00 FC東京 ✕ 広 島(H・国 立)
第19節 05月31日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都(A・サンガS)
第20節 06月14日(土)19:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ)
第21節 06月22日(日)18:30 FC東京 ✕ G大阪(A・パナスタ)
第15節 06月25日(水)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)※1
第22節 06月28日(土)19:00 FC東京 ✕ 横浜FC(H・味スタ)
第23節 07月05日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 (A・三協F柏)
第24節 07月19日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(H・味スタ)
第25節 08月10日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島(H・味スタ)
第26節 08月16日(土)19:00 FC東京 ✕ 湘 南(A・レモンS)
第27節 08月24日(日)19:00 FC東京 ✕ 京 都(H・味スタ)
第28節 08月31日(日)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(A・豊田ス)
第29節 09月13日(土)・14日(日)・15日(月)00:00 FC東京 ✕ 東京V(H・味スタ)
第30節 09月20日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎(A・U等々力)
第31節 09月23日(火)00:00 FC東京 ✕ 福 岡(H・味スタ)
第32節 09月27日(土)・28日(日)00:00 FC東京 ✕ 横浜FM(H・味スタ)
第33節 10月04日(土)・05日(日)00:00 FC東京 ✕ 清 水(A・アイスタ)
第34節 10月18日(土)・19日(日)00:00 FC東京 ✕ 広 島(A・Eピース)
第35節 10月25日(土)・26日(日)00:00 FC東京 ✕ 岡 山(H・味スタ)
第36節 11月09日(日)00:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(日)00:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第38節 12月06日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟(H・味スタ)
※1 横浜FMが「AFCチャンピオンズリーグエリート 2024/25」準々決勝以降進出の際は6月25日(水)19:30に、敗退時は5月6日(火)14:00に開催
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