
“これ以上のパーティはない!”25周年ファイナル。
久保田利伸の25周年を記念するツアー<25th Anniversary TOSHINOBU KUBOTA“Party ain't A Party!”>のファイナルとなる国立代々木競技場第一体育館2日目の公演を観賞。昨年の“Gold Skool”ツアー(その時の記事はこちら→NHKホール1日目、NHKホール2日目)から連なるエクステンデッド・ツアーが久保田にとって24年前にライヴを開催した場所、代々木で終えることとなる。
“Gold Skool”ツアーと一環したツアーということで、セット・リストなどはおおよそ“Gold Skool”ツアーのものを踏襲した形だが、このステージに賭ける思いは特別なものとなった。新旧織り交ぜたといっても、25年に幾多の楽曲をリリースしてきた久保田。その選曲には頭を悩ませ、またそのアレンジにも試行錯誤したという。その一つが、敢えてリリース当時のアレンジそのままでということに拘った「流星のサドル」だ。久保田自身も「最初は当時の時代感もあってどうかなと思ったが、歌い終えてみると、これはこれでカッコイイんじゃないか」とコメントした通りのパフォーマンスで観客を興奮の渦にに包んだ。
また、これまでのツアーの中でファンから多くリクエストを受けたと思われる2曲として「Cry On Your Smile」「Indigo Waltz」のバラードを披露。イントロが流れるとあちらこちらから感嘆の声が漏れ聞こえ、歌い始めると久保田が創り出す悲しきラヴ・ストーリーへと身を委ねて感慨深く身体を揺らし、時には涙する……そんな擬似世界に浸るシーンがオーディエンスのなかで生み出されていたようだった。もちろん「missing」も同様。スロー・バラードでは着席する人も多いのだが、この曲ではそのまま息を呑むように見つめ立ち尽くすファンも少なくなかった。語り継がれる名曲というのは、それぞれの思い入れもあるだろうが、そういう気持ちにさせるのだろう。ファンキーからメロウ、時にはセクシーな世界へと、声加減一つ音加減一つで連れ出してくれる、そんな“ツボ”を久保田やバック・バンドの面々は心得ていると思わざるを得なかった。
アンコールではファイナルでのお楽しみが。「TIMEシャワーに射たれて」から「TAWAWA ヒットパレード」へとメドレーしたのちに、“これで終わっちゃぁーもったいねぇ!”との代々木恒例の観客を巻き込んでのファンキー・ダンス・パーティへ。会場のスタンド左、右、アリーナを3分割して、それぞれ「おめでたい鳥=鶴」「リオのカーニバル」「マサイ族」をテーマにしたダンスをすることになるのだが、そこで久保田がVIP席へ向かって「いつも観に来てくれていて、前に2003年と2006年の時にはこのステージに上がってくれているんですが、いろいろオカザイルとかあって忙しくて今日は来られそうにないかなといっていた岡村くんが……」というとVIP席にサーチライトが当たると、そこにはカーディガン姿の普段着のナインティナインの岡村隆史が。久保田が「今日はそこで見ていて」と言う前に、当然のようにステージへ岡村が登場。最初は鶴=バードダンスの先生としての登場だったのが、結局リオのカーニバルダンス(といっても、腕を横に開いて胸を前へプルプル揺さぶるのみ…笑)、アリーナのマサイ族のジャンプダンス(猛獣が通ると気付かれないように目を半開きにして目を逸らす振り入り)にも借り出されて踊ることに。大型ヴィジョンに映し出される岡村に、歓喜のオーディエンス。突然、ダンサーのリッキー、久保田、岡村の3人が並んで、久保田が「僕たち顔似てませんか?」といって“ファンキーダンサーズ”を襲名する一幕も。最終日のさらにファンキーなサプライズに、笑顔とハッピーを届けてくれた。それにしても、マサイ族ジャンプの時にスクリーンにマサイ族が映し出された時は驚いた。(笑)
気がつけば3時間、あっという間に駆け抜けた感じだった。曲構成はあまり変わらないのに、いつの間にか惹き込まれているのは、やはり楽曲一つ一つにしっかりとしたクオリティとその曲世界へいざなう魅力が備わっている証拠だろう。また、その曲世界を色とりどりに飾り付けているのが、素晴らしいバンド・メンバーやコーラス隊、ダンサーたちだ。サポートと単に言うにはあまりにも言葉数が少ないほど、彼らの演奏やダンスは、この大きなショウを一層高いエンタテインメントへと引き上げているのだ。
そして、やはり、久保田利伸の歌声だ。MCの時に「上海で「声にできない」のPVを撮った時に、僕はただうつ伏せに倒れているだけの演技を要求されたのですが、カメラが寄ると指先が動いたり、カメラ目線になったりして演技ができなかった……そのおかげで、歌一本でやってきたおかげで、今がある」「ここに集ってくれているみなさんは何よりの僕の宝です」と述べた久保田。そのファンたちは、久保田の歌声に魅了され続けてきたのだ。いっこうに衰えを知らないそのファンキー・ヴォイスに、この夜もまた、身体を揺らし、心を揺らされたのだった。
最後には金色のテープが発破され、代々木に金色のグルーヴ=“Gold Skool”が舞い降りた。久保田利伸の25年は見事に幕を閉じる。だが、新たな黄金の時代が幕を開けるのだ。ファンキーの旅はまだまだ終わらない(“Oh What a night!”)。
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<SET LIST>
00 Introduction
01 Jungle Love
02 北風と太陽
03 Winds
(MC)
~Flashback 25Years~(Short ver.)
04 Candy Rain
05 雨音
06 一途な夜 無傷な朝
07 永遠の翼
08 the Sound of Carnival
09 Wednesday Lounge
10 MAMA UDONGO~まぶたの中に~
~Singers Show Section~
11 Mercy Mercy Me(Main Vo. Ty Stevens)(Original by Marvin Gaye)
12 Square Biz(Main Vo. Fenix)(Original by Teena Marie)
13 Mercy Mercy Me(Including phrase of“What's Goin' On”)
14 Missing
15 ~Flashback 25Years DJ MIX by DJ MASS~
Never Turn Back
Breaking Through
SOUL BANGIN'
Sunshine Moonlight
Soul Mate~君がいるから~
Give Your My Love
Dance If You Want It
Messenger's Rhyme-Rakushow, it's your show!-
AHHHHH!
16 流星のサドル
17 just the two of us(Duet with YURI)
18 Rn'B Healing
19 声にできない(Japanese ver.)
(MC)
20 Cry On Your Smile
21 Indigo Waltz
22 LA LA LA LOVE SONG
23 流れ星と恋の雨
24 LOVE RAIN~恋の雨~
≪ENCORE≫
25 TIMEシャワーに射たれて~TAWAWA ヒットパレード
26 TAWAWA ヒットパレード(Including“Dance Party”)
<MEMBER>
久保田利伸(Vo)
柿崎洋一郎(Key/Talkbox)
Philip Woo(Key)
Ralph Rolle(Ds)
大西雄介(G)
鈴木渉(B)
DJ MASS(Turntable)
Ty Stephens(Cho/Vo)
Fenix a.k.a.Felicia Graham(Cho/Vo)
YURI(Cho/Vo)
MIHO BROWN(Dancer)
Kae The Funk(Dancer)
Ricky(Dancer)
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24年前、代々木での初のライヴ。鍵盤に“Keep On Dancing”とヴォイス・サンプルを入れて、その低いキーでのヴォイス・サンプルが響いてライヴが幕を開けるという段取りだったが、柿崎洋一郎がその低いキーより数オクターヴ高いキーを鳴らしてしまい、低い声が響くはずが高い声が出てしまったという逸話を披露してくれた久保田。「それ以来、柿崎さんにはサンプルを1度もお願いしてません」に、柿崎も冷や汗、苦笑い。
今年のグラミーにノミネートされているタイ・スティーヴンス、アルバムリリースを機に名義を変えたフェニックスに続き、今年初のアルバム・デビューとなったと紹介されたYURI。久保田に「アルバムの名前は『クレイジー・セクシー・クール』だっけ?」といわれ、大きく腕で×を出したのも面白かったな(正式には『LoveRespectHarmony』、ちなみに『クレイジー・セクシー・クール』はTLCのアルバム・タイトルです)。


