*** june typhoon tokyo ***

FC東京×鹿島@味スタ

■ パスを繋ぐことが目的ではない

 
 ホーム2連敗。

 今季意外にも下位に甘んじている鹿島との対戦。下位とはいえやってきているサッカーはもちろん、チーム力からも侮れる相手ではない。FC東京は勝点を挙げては来ているが、ACLでの連戦での疲労、梶山や加賀が怪我で欠場、長谷川が累積で出場停止と、万全な状態ではない。そのなかで、いかに勝点を挙げることが出来るか。

 試合を支配していたのは東京だった。だが、アクシデントが襲う。20分過ぎ、スルーパスに反応した興梠がエリア内で飛び出してきたGK権田と衝突。権田が負傷して予定外の塩田との交代を余儀なくさせられた。ここで、早くも交代カード1枚を使ってしまうことになった。

 だが、それでも東京の時間帯は続く。鹿島はしっかり守ってカウンターという姿勢でこのゲームを戦うという意思統一がなされていたように思えた。東京はバイタルエリアからエリア内に細かくパスを繋げて進出しようと試みるが、最後のシュートの場面までは崩しきれず、前半は0-0で終えた。

 後半もそれほど鹿島の攻勢を感じないままボールを回していくが、羽生と太田の安易なパス交換を重ねる際、太田の不用意なパスが奪われ、そのままカウンターへ。遠藤が少しためて大迫へパス、その大迫が絶妙なグラウンダーのパスをゴール前へ送ると、走り込んできた興梠に決められてあっさりと先制を許した。鹿島はこれで活気を取り戻す。最終ラインはしっかりと固め、よりカウンターに特化したスタイルで時間を進めようとする。元来、東京が最終ラインを高い位置で形成することを逆手にとり、DFの背後のスペースを使ってのカウンターだ。東京は、懲罰交代なのか太田に代えて田邉を、続いて谷澤に代えて大竹を投入。停滞していた中盤の活性化を図る戦術に出てきた。

 塩田が味方のバックパスを手を使ったとして間接FKを与えたが、同様に曽ヶ端も味方のバックパスを手で処理したとして間接FKが与えられる、なかなか珍しい判定が下る。審判のジャッジの質が問われていて久しいが、このジャッジを含め、この日は両チームでカードが9枚出された(FC東京2、鹿島7)。試合をコントロールするという面ではどうだったのか、考えさせられる試合にもなった。また、鹿島は雨で滑るピッチということも考慮したのか、非常にややアフター気味のタックルが多かったように思えた。それがそれまでの勝てない鹿島の心理的な状況を表わしていたのかもしれないが、東京としては、ACLでも経験しているように、そのようななかでどう対処・対応していくかという判断力が問われていた試合でもあった。

 さて、この間接FKだが、二度跳ね返されるが、こぼれ球を田邉が冷静にゴールへ突き刺して同点となった東京。田邉はJ1初ゴール。勝ちを目指して鹿島陣内へパスを繋いでの進出を重ねていく。だが、ゴール前でのアイディアが乏しく、ことごとくゴールを割れない。シュートを打てずにカットされるという繰り返し。ロスタイム5分(前半はなんと8分)になっても、ゴールへの予感をそこそこ感じさせながら最後まで攻め通せないでいると、中盤でパスカットしたボールを受け取ったジュニーニョへがドリブルで持ち込み、シュート。塩田が一度は弾くも、そのこぼれ球が遠藤の前にこぼれてシュートを流し込まれ、失点。試合終了あとわずかというところの失点に、東京の選手は腰を落とすものも多かった。

 東京は最後まで自分たちのパスを繋ぐスタイルを崩さない……というチーム方針を説いたポポヴィッチ。それは、いい。だが、それはあくまでゴールを奪うための手段であって目的ではない。選手たちはその意図をしっかりと認識しているのか。今の東京の攻撃はそれにこだわりすぎるばかりなのか、シュートの意識が格段に少ないように見える。リズミカルなパス交換で2つ、3つは崩せても、最後のシュートまでなかなか持ち込めない。パスも足元ばかりだから、相手の狙いが明確なら、対策も比較的容易くなされる。
 ゴール左右のサイド深くまで進出しても、そこからシンプルなセンタリングはまずあげないので、攻撃のヴァリエーションも少ない。豊富なフリーランニングで相手を撹乱するならまだしも、日程による疲労もあってか運動量もさほど多くなくなってきているなかでの、足元でのパス交換は、相手にとってそれほど脅威ではない。なにしろ、シュートまでの時間を要するのだから、守備側は焦らずにボールの出所やパスの出先へ少しずつ間合いを詰めていけば、対応出来ると思わせてしまい、精神的に慌てさせることも難しくなってくる。

 単に時間がなくなったら放り込み、というスタイルはとらなくてもいい。だが、ゴールを奪うための道筋をいかに作っていくかは意識しなければならない。パスでこねてエリア内へ進出する美しさを競うゲームではないのだ。ゴールへの匂いを嗅ぎ取ったらミドルを放つ、早めのタイミングでセンタリングを上げる、そのような選択肢を持つなかで、エリア内へのパス連係からの崩しもより活きてくるのだ。エリア外から中央にパスを繋いで進出するもブロックされカウンター、エリア深く外からシンプルに素早くセンタリングをあげないでパスで繋ごうとして選手がコーナー寄りに動き、結局中央へパスを流そうとしたときには、中央に人数が揃っていないというジレンマも生んでいる。主軸のパスからの崩しをしていくとしても、それを活かすための動きや判断力がなければ、今後も守りを強固に築いてくるチームとの戦いはなかなか苦しいものとなるだろう。

 それでも、ACLを挟みながらも、現在6試合を終えて4勝2敗とまずまずの出だしだ。今後の課題が早いうちに出たと思えばいいだろう。試合で出た反省や教訓をしっかりと次からの試合へ活かすことで、次へのステップアップが可能となるのだから。


◇◇◇

<J1 第6節>
2012/04/14 味の素スタジアム

FC東京 1(0-0、1-2)2 鹿島

【得点】
(東):田邉(84分)
(鹿):興梠(66分)、遠藤(90+4分)

観衆:19,279人
天候:雨、無風
気温:10.3度
 

≪MEMBER≫

GK 20 権田修一 → GK 01 塩田仁史(29分)
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 30 チャン・ヒョンス
DF 06 太田宏介 → MF 27 田邉草民(69分)
MF 04 高橋秀人
MF 07 米本拓司
MF 18 石川直宏
MF 22 羽生直剛
MF 39 谷澤達也 → MF 19 大竹洋平(74分)
FW 49 ルーカス

DF 16 丸山祐市
DF 33 椋原健太
FW 11 渡邉千真
FW 13 平山相太

監督 ランコ・ポポヴィッチ


◇◇◇

 
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エネゴリくんと東京ドロンパがコンコースで出迎え。

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ドロンパの左耳には“てるてる坊主”が。

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雨降る味スタの試合前。スクリーンにはFC東京×鹿島。

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“ユルネヴァ”中。

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鹿島ゴール裏。

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試合開始直前。今季は本当に雨が多い。

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意気盛んな鹿島ゴール裏。

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選手整列。

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前半キックオフ。

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GKへのバックパスを手で扱ったとして間接FKに。

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野球で言う“いってこい”なのか、曽ヶ端もファールをとられて間接FK。

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その間接FKの混戦から田邉が決めて東京が同点に追いつくが……。

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試合終了。結局カウンター2発で負け。

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今季初勝利で沸く鹿島ゴール裏。

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挨拶するFC東京の選手たち。

20120414_fct_ka16
バックスタンド前を行く東京の選手たち。 
 

◇◇◇
 

20120414_fct_kafk01
間接FKその1。
“おしくらまんじゅう~押されて泣くな”

20120414_fct_kafk02
間接FKその2。
“位置について、よ~い”
 
 


 
 




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