学術団体・国際縄文学協会
会報誌26号[書評]平成26年9月30日発行
◎インディオの縄文人
現在、地元鶴見で、縄文の語り部として活動している著者の金子好伸氏。彼が縄文に出会ったのは四十年以上前、岡本太郎が書いた一冊の本だったそうです。その後、土器作りを実践から学び、南北米、南洋諸島の縄文と拘わりを研究、再度国内の縄文土器・遺跡に回帰されて地球上の森羅万象、文化人類学、気象学と多岐に渡って論説し、それは大変な作業を伴った事でしょう。
何事も体験に勝る証言は無し、私も実践に勝る考古学は無いと、土器や石器を体験し、日本列島北から南まで遺跡に足を運びました。現場に立つと、疑問が解けたり湧いたり貴重な結果が得られます。本書に示れた、初めに北米大陸へ渡ったのは縄文人であろうという説や、縄文人は太平洋に拡散し縄文土器を残したとする事には、まだ疑問符が残るとも思いますが、縄文を追求する者として参考になりました。
各タイトルも興味深く、文字のなかった縄文時代の伝達方法や、祈りについて書かれた「縄文信仰序曲」、「縄文人の源流と琉球・アイヌ考」ではDNAや人骨学から縄文人はどこから来たかを論証、「下末吉台地と『上台縄文遺跡・貝塚群』」では、なぜ縄文人がこの地を好んだのかを検証し、非常に痛快でした。
南北インディオ(ネイティブ・アメリカン)文明には、まだまだ驚くべき文明が隠されています。世界の四大文明地図も変えるべきかもしれません。さらに研究発掘が進む事を期待したいと思います。(小松忠史)