公園にあるカバの乗り物遊具。
治したい(直したい)と思っている体の箇所に触ると、治して(直して)もらえるということから、リカバリー·カバヒコと呼ばれる。
人伝で伝わったその都市伝説が、今日も訪ねてくる悩める人々をリカバリーするかもしれない。
そんなリカバリー·カバヒコにまつわる5編からなる物語です。
願いは悩みなんだろうなと思いながら、実は悩んでいることに気がつけば、ほぼ解決したようなもの。
あとはその悩みが解決するきっかけが起きるのを待つのみ。
その悩みが起きるきっかけこそが、何も語らぬ、何十年とそこにあるリカバリー·カバヒコというのが良く、作者らしい面白さだなと思いました。
そして、短編は独立しているものの、前の短編で悩みに気が付き、リカバリーされた登場人物が、次の登場人物に多少影響を与えるという、これぞ、ザ青山美智子ワールドだなと思いました。登場人物達がどんな風に出て影響し合うのか、毎回同じようなパターンじゃね?と思うかもしれませんが、これを楽しむのも青山美智子作品なのかな?と思います。
そんな本作品から感じたことは、通常は5体満足であるはずの私達は、5体のどこかに悩みを抱えていて、どこか不満足だということ、そして、その不満足は何らかの形でリカバリーされて日々生きているということです。
そう、実はリカバリー·カバヒコこそ私なんだろうなと思いました。
何十年とそこにある遊具カバヒコは、決して綺麗なまま残っているわけではなく、剥げていたり、たくさんの傷がついていて、落書きだってあります。
しかし、その傷や剥げ、時には落書きがあっても、何十年と経てば、それは人によっては味になる。
いろんな傷がついたかもしれない、雨風に晒されて剥げた部分はあるかもしれない。
しかし、それこそがリカバリーされて来た証拠で勲章なんだということなんじゃないかと思いました。
リカバリーは、良い結果を招いたかどうかはわからないですが、きっとその傷を乗り越えた先には新しい何かが見えるはず。
そして、傷だらけのその姿でただそこにいるだけで人の救いになっているかもしれない。
そんなことを教えてくれた本作でした。
あなたの頭には、リカバリー·カバヒコはどんな風に映るだろうか。
※ブクログに掲載した感想を転載しております
表紙のカバヒコの禿具合から、どこをみんなよく触っているのかわかるという面白さ。
失敗したって良い、落ち込んでいて低浮上になることだってある。
でも、なんらかのリカバリーができれば先につながるし、そして良いものほど長く使い込めれば良い味がでる。
傷になるかもしれないし、色あせてしまうかもしれない。でも、それが勲章なんだと思えるそんな作品です。