主人公鋼太郎は高校2年生の17歳。夏休みのある日、バイトからの帰りの道すがら、「せいしゅん」がしたい17歳、アストラル神威と出会う。いかにも怪しい変な彼が、夏休みが終って鋼太郎のクラスに転校してきて…。
果たしてアストラル神威の願い「せいしゅん」をするは叶うのか。また、アストラル神威とは何者なのか。
これは鋼太郎とアストラル神威の高校を舞台にしたブロマンスである。
たまたま書店を覗いていたら、『とらドラ!』でお世話になった竹宮ゆゆこ先生がハードカバーの新刊を出したんだと思い、どんな本何だろうと興味をもって購入した本です。
読んでみて思ったのは、竹宮ゆゆこ先生らしい作品だなと思いました。
主人公鋼太郎とアストラル神威は、境遇や環境から妙に大人っぽい高校生だなと思うところがあるキャラクター。でも、学校にいったら素で年相応の良い意味でアホな高校生っていう感じ。
周りに集まってくる友達も面白くて良い奴が多いし、親も大変なのに、独特のキャラクターで良い人っていう感じのキャラクターが多い印象です。
また、文章や会話もライトノベル調で、笑わせてくるところはしっかり笑わせてきます。
第二章の「タケフジ」の下りは電車で読んでいて笑いをこらえるのに必死でした。
高校の時って、何もなかったよなぁ?と思ってましたけど、そういえば、友達同士でくだらないバカなことをやってたなと思い出しました。あれ、確かに高校2年生の特権ですわ。
また、第三章は考えもので、泣けたし、結構、テーマが深いというか、重たい感じがしました。
ただ、最後は良かったなと思う反面、そこまで笑って泣かせてくれたのに、そういう風な展開なんだ?という感じには個人的には思ってしまいましたが、それだけアストラル神威というキャラクターにのめり込んでしまったのかな?と思いました。
ちょっと、最後が物足りないなと思いはしましたが、笑って泣いて大いに楽しんだ作品でした。
さて、そんな私が今作品で思ったのは、「出会いは運命を変える」ということです。
本作品、主人公がアストラル神威と出会ったからこそ高校生活が変わります。
おそらく、アストラル神威が主人公の高校に転校してこなければ、本作品のようにハチャメチャなまさに「せいしゅん」と呼べるような奇跡的な高校生活はなかったはずです。
そら、どの本もそれそはそうだろう?と思うのですが、実はそんなことってあまり意識する機会ってないと思います。
この物語が出会いが運命を変えるんだなぁと意識してしまうのは、主人公があの時、出会ってなければみたいなことを多く思うからというのも原因だと思うのですが、アストラル神威と出会ってなければ、普通に得られたであろう主人公の未来も読んでいて容易に想像できてしまうところにあると思います。
アストラル神威と出会った主人公にとって良かったこともあれば、悪かったこともある。アストラル神威と出会わなかった主人公が得たであろ未来と失った未来がある。
本作品は、主人公が失った未来も大きかったんじゃないかと強く思ったので、「出会いは運命を変える」ということを思いました。
また、結構、重たいテーマがのしかかってます。
それは「ドナーとして臓器を提供する側される側」の心情。
このテーマは重すぎて、今の私では答えが出せないなと思いました。
本当の自分なんていうのはわからないし、凄く純粋で綺麗な感情もあれば、汚い感情もあるし、自分を守るために自分を殺さないといけないときもある。
私も高校の時は、今思い返してみても何が面白かったのかわからないようなアホなことを友達とやってはしゃいだりしてましたけど、そんな友達をたまに鬱陶しく思ったり、嫌いだなと思ったりするような汚い感情をもったし、クラスに馴染むために自分を抑えたりしてましてね。
そんな懐かしい高校時代を思い出し、なんだかんだ言って私の高校生活は楽しかったなと思えた、そんな作品でしたということで締めくくりたいなと思います。
※ブクログに掲載した感想を転用しております
先月末くらいに読んだのですが、今でも「タケフジ」の下りは、思いだしても笑えます。
ただ、青春の苦さはあるものの、私は最後の方はちょっと…
でも、やっぱり読んでよかったなと思った作品でしたので、紹介いたします。
竹宮先生の作品をハードカバー作品、読後1か月経過しましたが、まだまだ堪能しております。