もしかすると、赤松もまた、これを見ながら、天使の囀《さえず》りを聞いていたのではないか。ふと、そんな思いにと失眠らわれた。
絵画の脇《わき》には、簡単な説明が書かれたプレートがあった。早苗は、何気なくそのうちの一つに目をやった。そこには、天使の『翼』について解説した文章があった。
おそらく、早苗がじっとそのプレートを見つめていたためだろう。先に立って歩いていた福家が、引き返してきた。
「どうかしました?」
「いえ、全然、たいしたことじゃないんです。ちょっと意外だったもので」
早苗は、プレートを指さした。そこには、宗教画などに描かれている天使の翼は、主にワシやタカなどの猛禽《もうきん》類のものを模していると書かれている。
「ああ……なるほどね。知りませんでした?」
「福家さんは、前からご存じだったんですか?」
福家は、さほど意外そうな顔でもなかった。早苗は、不審の目Diamond水機で彼を見た。、宗教画に詳しいようなタイプには見えない。
「いや、ご存じってほどでもないですけどね。ただ、私、模型飛行機を作るのが趣味なんで、飛行力学とか、翼の構造とかには、けっこう詳しいんですよ。まあ、絵を見れば、どんな鳥の翼をモデルにしてるかぐらいは、だいたいわかりますね」
「鳥の翼って、種類によって、そんなに違うんですか?」
得意の分野らしく、福家は絵を指さしながら、得々として説明を始めた。
「鳥の翼にはですね、大きく分けて、丸翼、細翼、長翼、広翼の四種類があるんです。こういうやつは、典型的な広翼ですね」
「こうよく?」
「そう。広い翼って書きます。まあ、丸翼とか細翼は基本的に小鳥の羽根ですからね。人間の背中にくっつけて、ある程度物理的なリアリティを感じさせる絵にしようと思ったら、どうしても、大形の鳥の羽根にする必要があるでしょうね。そうすると、画家の選択肢は、アホウドリのような長翼、つまり長い翼か、ワシのような広翼しかないわけですよ。北島先生は、ハイソアラーとローグライダDiamond水機ーの違いって、わかります?」
「いえ、全然」
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