江戸時代前期まで、平安時代に唐からもたらされた宣明暦が使われていた。しかし800年以上も使われていたため誤差が広がり、当時重要視されていた日食や月食の予想も大きく外れるようになり、農業をはじめさまざまな弊害が起きていた。ところが、暦の編纂は朝廷のあの

江戸幕府が建って、そろそろ落ち着いた頃に、京都ではなく幕府によって暦を再編纂する必要があるということで、当時の数学、天文学、神道などの知識を注入して800年ぶりに新しい暦(大和暦)を編纂した。その人・渋川春海の話

このような内容だと、とても硬くてとっつきにくい話なのですが、豈図らんや、とても読みやすくて面白い本でした

今では当たり前に世界中のほとんどの人々が共通のものとして西洋暦のカレンダーを使っていますが、江戸時代までは、それは単なる暦としてというよりも、宗教的なものであり、主なる産業である農業にとっては非常に重要なものであるために政治的なものであり、その作成と流布に対する利権が絶大だったということを、改めて知ることだけでも、興味深いものでしたよ

さらに、日本の数学(和算)を発展させ、当時の世界の先端を行っていたとも言われている関孝和をはじめ、水戸光圀、保科正之などなど様々な人たちが登場してくるのも、江戸時代の流れの中で、初期の形成期とも言える時の様子をちょっとだけ覗き見られる感じがしました。
主人公の春海の歴史的な評価は様々なようですが、この本の中ではあくまでも、天文学オタクとして好感をもって描かれています。この本自体も読み出したら止まらないタイプの本ですが、ここから色々と知りたいことが増える好奇心を刺激する本ともいえましょう

今回東京で観た文楽が、『大経師昔暦』でした。この本の『大和暦』の最初の版元となった京都の大経師意春の妻の密通をもとにして近松門左衛門が書いたものが『大経師昔暦』です。何気なく予約したのですが、後から見たらびっくりでした(夜の部の『曽根崎心中』が取れなかったのでこれにしたのですが)。なにかに導かれてしまったのでしょうか

文楽二回目は、席が太夫と三味線の近くだったので、太夫のしぐさや三味線の人が弾きながら唸っているのまでわかって、なかなか前回とは違う趣がありました。今回は不義の話なので、前回の菅原道真とはまったく違ったものでしたが、またまた良かったので、これからも機会があったら観に行こうと強く決心しました

