ぼぶぼぶ!

米国人気歌手ボブ・ディランさんを追っかけした記録

1994.2.12初ぼぶ!

2014年08月16日 | 1994

これって一体何?どういうこと?何なんこの人は???

理性が生み出す沢山の疑問符と、それまで味わったことのなかったえも言えぬ感情が湧き上がる中、自分の中で興奮は高まり続け、(おそらく口を開けたまま)ステージの一点を見つめ続けていたことと思う。

大阪城ホールの2F後ろから遠くに見下ろす人影が歌いだした瞬間、完全に心を奪われてしまった。

 

ボブ・ディランが来日することは暫く前から何かで耳にしていた。

元々結構好きで、なんと生まれて初めて自分で買ったアルバムは”The Freewheelin'”、予備知識なし、ジャケ買いだった。

後、貰ったり買ったりで当時の所有枚数5枚だったからファンのつもりではいた。(5枚も持っている!と思っていた)

彼の声が大好きだった。時々どうしようもなく聞きたくなる。ボブ・ディランを聴くと自分に戻れるような感覚があった。

が、その時本当にお金が無かった。

本当に無かった。

なので行くつもりはなかったのだが。。。

当日たまたま耳にしたラジオでその日が大阪公演であることを知ってもまだ行くつもりはなかった。

だが、不思議なことにその日歩いていると自分の右側の耳元で何かの感覚を感じ、「行きなさい、ボブ・ディランですよ」と、声が聞こえた訳ではなく言われた訳でもないのだが、ただそのように意味が伝わってきた。まあ「音」ではないのだが、簡単に言うと「聞こえた」。

胡散臭さ爆発だが事実なので仕方ない。

その意味を受け取った後ハートに憧憬の熱く甘い感じが広がり、この機会をスルーしようとしていたことが全く馬鹿げたことに感じられてきた。

もう午後4時を過ぎている。ほぼ全財産に近いお札を文字通りつかみ、電車に飛び乗って会場に向かう。

途中やはり気持ちの動揺もあり「いや、ボブ・ディランってもうお爺さんだから、これが来日最後かも、今日が最後のチャンスかも。行っとかないと。」と一生懸命正当化する。

 

席は2階の後ろのほうだったが(一番後ろの数列は空席だった)期待に胸が膨らんだ。

持っていた5枚の残りの4枚は"Blonde on Blonde" "Greatest Hits vol.2" "Desire" "Street Legal"だった。

"Bonde"とか"Desire"でのあの素敵な独特の声で歌ってくれるのか?

私の大好きな曲は演奏してくれるのか?

・・・"Hurricane"とか"Changing of The Guards"とか。。。(やるわけない!)

 

5枚も持ってるから余裕だ、と思っていたが実際には知ってる曲は"If Not For You" "Don't Think Twice"だけだった。

という訳で一曲一曲の印象はほぼ残っておらず、ただただボブのパフォーマンスの凄さに圧倒されていた。

これもまた胡散臭さ爆発だが、2階にいたので天井に沢山天使が聴きに来てるのが見えた。

私が「天使」だと解釈しただけで天使ではないかもしれない、そもそもそんなに天使に詳しくない。

ボブ・ディランを聴きに来てるんだなーと普通に受け入れた。

実際に見えたんだからどうしようもないが、こういうことを書くと完全アウトの人も多いと思うので、ボブに酔って半分らりるれろってなっていましたね、とお茶を濁しつつも非常に印象に残っているので書いておきたい。

 

他にとても印象に残ったことは、途中ボブがアコースティック・ギターに持ち替えた後歌った"Don't Think Twice"、これは私も好きな曲だったし会場もすぐに沸点に達したのだが、その後になんだかドンドコドンドコした単調な歌が続き、情熱的に手拍子打ってた観客席のエネルギーもシュルシュルシュル~~~的に収縮していったことだった。

「せっかく盛り上がったのに変わった人だなー」はっきり言って当時はそう思った。

しかしそのドンドコ曲が終わった瞬間観客席からは通常以上の喜びのリアクションが、、、どういう仕組みなのか???

"Series of Dreams"もの凄いレア曲を聴けてスーパーラッキー!!!とは当時の私には知る由もなかったが。(むしろ全曲レア曲状態か!)

 そしてボブ・ディランという人が、そんなの変わった行動の内にも入らない「変わった人」だということも。

 

If Not For You ←超大物テーパーさんのが勝手に使われてリリースされたとか何かだったと思う(都合によりmp3に変換しました)。

 

 

そんな引っかかりを残しつつも、もう気が狂いそうに何かを掻き乱される歌声、しかも全ての曲で!

知らない曲ばかりで退屈するとかそういう世界じゃなかった。

例えて言うと、アトラクションじゃない命がけの本気激流下りで水飲み込んでむせ返ったり、あちこちぼんぼんぶつかって揉みくちゃにされるようなそういうダイナミックな無茶苦茶振りをまかり通してしまうようなパフォーマンス。

小綺麗な「文明世界」で「ある枠組み」内で生きてきたのに突然何よ?何のつもりよ?あなた本気なの?的なもう「犬に噛まれたと思って諦めよう」的な訳判らん夜。

特に説明する言葉もまたその必要もなく、単にその日から(というかJokermanの最初の数フレーズを聴いてから)、ボブ・ディランのことしか考えられない日々が始まる。

今や地球はボブ・ディランを中心に回っているのだ!!!

 ((笑)マークを入れた方がいいのかな。。。)

 

この日なぜかアイワの録音できるカセット(時代!)ウォークマンを持参、内臓マイクで録音していた。

高いから元取ろうと考えたのだろうか?

ある程度レベルが上がると自動でレベルを下げる仕様の機種だったのか、使い方を把握していなかったためか、音が大きくなったり小さくなったり本当に酷いテープだった。

しかし勿論ショーが終わって会場を出てからそのテープを一日に何回も何回も何回も聴き続けるのだった。

 

今日そのテープじゃなくて天国のように高音質の音源を久しぶりに聴いてみた。

色んな物凄い公演沢山聴いた今でもやはりこの日は凄い。

ボブは全ての公演で凄いが、その凄さが静かな渓流のようにこちらから耳を澄ます態度が無ければ見つけにくいこともあれば、この日のようにぼさっとしてたら激流に飲み込まれて人生乗っ取られてしまうような日もあると思う。

 

そして私は乗っ取られてしまった。

そのことすら「ラッキーかも」と思ってしまうくらいに。

 

                         1.  Jokerman

                         2.  If Not For You

                         3.  All Along The Watchtower

                         4.  Ring Them Bells

                         5.  Tangled Up In Blue

                         6.  Under The Red Sky

 

                         7.  Tomorrow Night (Sam Coslow/Will Grosz)

                         8.  Mr. Tambourine Man

                         9.  Don't Think Twice, It's All Right

 

                       10.  Series Of Dreams

                       11.  I And I

                       12.  Maggie's Farm

 

—Encore

 

                       13.  Ballad Of A Thin Man

                       14.  It Ain't Me, Babe

                     

BOBLINKSで確認したら日本公演でSeries Of Dreamsは6回演奏していた。

一回だけだったのはRing Them Bells。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿