田舎のエコノミスト

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ハーベイロードの前提

2023-11-08 18:18:42 | 日記
1936年にケインズ「雇用・利子及び貨幣の一般理論」が刊行されました。その第3章有効需要政策で、古典派の経済学における、セイの法則(供給はそれ自らの需要を生み出す)を中心としたレッセフェールを批判し非自発的失業の存在は有効需要の不足が原因であると説きました。
財政政策による有効需要の創出により、財政出動の金額以上に効果がある乗数効果についても語っています。
この有効需要政策(総需要管理政策)はまさに財政政策であり、財政出動です。
1930年代の世界恐慌に苦しむアメリカの失業率は25%前後となり、1933年以降景気は回復傾向になったものの、それでも、1936年の失業率は16%台でありアメリカは1930年代を通じて不況からは完全には脱してはいません。
その脱出を図るための政策が、ルーズベルト大統領が行った「一般理論」に沿った、テネシー州TVA公社などの、ニューディール政策でした。
この有効需要政策について、その後も、今も数々の批判があります。新古典派や、マネタリストからも・・・・。特にシュンペーターは不況は景気循環によるもので、不可避のものとし、1929年以降の不況はコンドラチェフ・ジュグラー・キッチンの波動の同一時期の発生と断じましたが、有効需要政策は当時の経済理論としては画期的なものであり、失業を救おうとしたケインズの情熱を感じます。
けれども、総需要管理政策が日本では少し違った姿になり、今これだけは、言えると思うことは、MMT理論などの助けを借りて、国債発行はインフレにならなければいくら借金をしてもよいという考え方が時としてバラマキ政策になっていないかということです。
誤解を恐れずに言うなら、現在の日本の政策は「選挙対策のためのバラマキ政策」としか思えません。特に安倍政権以降の日本の借金残高の推移をみると、悪性インフレや、ハイパワーインフレがそっと足元に近づいているのではないかとの、恐怖を覚えるのです。
冒頭に言うようなハーベイロードの前提がなくなってしまい、ポピュリズムにひれ伏した、選挙対策のためだけのバラマキになってしまっているように思えるのです。
勿論、2022年に退官された財務省事務次官の乾坤一擲の理論は、いまだかって見たことのない国債残高と、日銀の長期国債の買い入れと、財政破綻の予感との恐怖を示唆しています。
年金暮らしを迎えた65歳以上の人々にとって、一番恐ろしいのは、ハイパワーインフレですから・・・・・。
例えば、古くは、オイルショック、IT不況、リーマンショック、コロナ禍等、大不況時の特例国債の発行をやたら否定するわけではありませんが、ハロッドの提唱したハーベイロードの前提が守られ、知的エリートたちにより、ケインズの主張した総需要管理政策が「正しく」実行され、あるべき国民所得水準を実現できることを願うばかりです。
そして、どうか政治家による政策がただ選挙のためだけのバラマキではないような,そんな良心のある政治家であってほしいと願うのは私だけでしょうか
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