新品種.....熊本から。

　お米に品種（コシヒカリなど）があるように農作物であるい草にも品種があります。様々な手法で品種改良を進め、より丈夫な畳表や美しい畳表を織るために日々産地の関係各位ががんばっておられます。
　最近出た新品種というとヒノミドリが有名です。従来の品種に比べ草一本々が細く（小筋）、織り上げたときに大変美しい仕上がりになります。手触りは非常に滑らかで細やか。これまでのい草に比べると女性的な印象です。また、ヒノミドリを使用した畳表で、条件をクリアしたものはその品質によって三段階の格付けがなされます。その条件のうちに「ヒノミドリ専用染土の使用」というものがあり、無着色の正直な畳表である可能性（絶対とは言えない）が高いのもありがたいです。
　また、栽培の面でも黒筋の発生する確率が低く、高品質な畳表に仕上がることが期待できます。ただし、ヒノミドリという品種を上等な表に織り上げるには、栽培や織の面でかなりの技術を要するのも事実。よってこのヒノミドリもはじめは一部の優良な生産者から供給されていました（もちろん在来には在来の難しさもある訳だが）。
　しかし、時が経つにつれヒノミドリ生産者の割合が爆発的に増えるに伴い、残念ながら品質の低いヒノミドリ草でできた畳表も流通するようになった。ヒノミドリの作付け面積を増やすために熊本県が補助金を出したり、そもそも一枚あたりの落札額もヒノミドリの方が高い値がつくためだ。
　それでも上質な、例えば前出の格付けのうち最高級ブランドである「ひのさらさ」レベルであれば満足のいく畳表も手に入る。しかし、下級品以下（格付け的には「ひのさやか」以下」）で、満足な品質の畳表をそろえるのは難しい（少量であれば確保できるが、畳店のロスは多くなる）。このクラスをお求めになる消費者の皆様が第一に求めるのはなんと言っても耐久性。じつのところ耐久性に関する品質の差が激しいのもこのクラスだと思う。産地では耐久性だけでなく織の良さとか色の良さとかも含めて格付けされるので耐久性には劣るが織はまぁまぁ、という表もこのクラスには存在するのだ。
　そんななか、この九月に新しい品種の品種名が公表された。そのなも「夕凪（ゆうなぎ）」。詳細は未だ不明だが既に熊本ではそれなりの植え付け（試験的な）植え付けがされているとのこと。
各種公表資料によれば
・表皮が強く耐摩耗性に優れる。
・色が濃いため無染土の畳表にも適する。
とのこと。表皮が強いものは消費者の皆さんに嫌われる「畳のカス」がつきにくい。また、無染土に向くというのも吉報。おそらくこれからは泥染をしない無染土畳表が一般的になっていくのは間違いなく、その下地として最適だろう。
参考にした資料：
http://nics.naro.affrc.go.jp/seika/h16/d16011.html
によれば沖縄のビーグの仲間と思われる太藺と在来種の交配らしい。丈夫さにかけては随一の太藺と繊細さの在来種の良いとこ取りとなればこんなにすばらしいことは無い。

この夕凪、広く栽培されるのは２００７年度作付けから。収穫は２００８年になるので当店で使えるのは２００９年夏以降となる予定です。ただし、試験栽培の表が手に入ればぜひ使ってみたいと考えています。お客様で実験台（笑）になりたい方がいらしゃいましたら一声おかけ下さい。