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若手総合法務アドバイザーの備忘録

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行動経済学(3) 保有効果とは

2016-05-26 17:08:04 | 戦略
保有効果というものがあります。
保有効果とは、「自分が保有しているものに対して、本来の価値よりも高い価値を見出す現象」のことをいいます。
例えば自分の愛用品を想像してください。仮にその愛用品を売りに出す場合、あなたはいくらの値段をつけますか?
多くの場合、あなたが考えたその値段は第三者がつける適正な値段より高く設定されているはずです。そのためものを売りに出すときに「全然値段がつかないなぁ」と感じることが多いのです。

この現象を伝統的な経済学はアノマリーとして放置していました。しかし行動経済学において、その答えの一つが提示されました。

それが前回お話しした「価値関数」の説明で出てきた損失回避性という考え方です。
「価値関数」とは人は失うことを得ることよりも約2倍嫌がるというものでした。その傾向から、人は損失を回避する行動をとりやすいというのが損失回避性というものです。(詳しくは行動経済学(2)をどうぞ。)
保有効果はその損失回避性という性質から発生しているのではないかというのが行動経済学における保有効果に対する答えです。


この保有効果をビジネスに置き換えると様々な場面で応用できます。
例えばあなたがなにかとてつもない良いアイディアを考え付いたとします。どんなに考えてもこれ以上のアイディアが浮かびません。これ以上ないアイディアだ!でもそんな時こそ一回冷静になってみてください。
人は保有したものが形のないものでも保有効果が生まれることがわかっています。つまりあなたが思いついたアイディアについても保有効果が生まれていると考えられます。保有効果が生まれたアイディアはなかなか捨てにくく、違うアイデイアを人から提案されても、自分のアイディアのほうが良く思えてしまうことでしょう。
あなたの思いついたそのアイディアは人からすればそこまで評価するようなアイディアでもない可能性があることを常に頭に入れておいてください。


また、よく「一度使って気にいらなかったら返金します!」といったキャンペーンが行われることがありますが、これも損失回避性を利用した手法です。
人は一度使ったものに対して保有効果が生まれるので、「うーん、まぁ悪いものでもないしなぁ」などと勝手な理由付けをして保有を継続する傾向があります。
サンプルを渡したり、試しに使ってもらったりするのも同じような効果があります。


もう一つ保有効果と損失回避性の発展形として現状維持バイアスというものがありあす。
人はなにか必要に迫られない限り、現状維持を選択します。この傾向のことを現状維持バイアスといいます。
例えばあなたが今通っている床屋(美容室)を想像してください。
その床屋のすぐ近くに腕がいいけど今より高価格な床屋と、腕が悪いけど今より低価格な床屋ができたとしましょう。あなたは床屋を変更しますか?
ほとんどの方は変更しないでしょう。あなたが床屋を選ぶ基準が「品質」なら高価格の床屋に変更するべきです。逆に「価格」で選ぶのであれば低価格の床屋に変更するべきです。
しかし人は特に変更する強い理由がない限り変更をしないのです。

この特性を戦略に組み込むことも可能です。
例えばスポーツクラブの会員になったきり、お金だけ払って全然いってない人はいませんか。この会員制というのが現状維持バイアスを使ったビジネスのやりかたです。このような会員制のビジネスは口座振替を指定することが多いと思います。口座振替であれば金銭負担をしている感覚が少ないため、損失回避性が働かず現状維持バイアスを引き起こしやすいからです。


人の行動に理由を求めて、その理由を逆手にとった戦略をとることで、驚くほどの効果が得られることがあります。
それでは、また。


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