若手総合法務アドバイザーの備忘録

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株式会社とは

2016-05-31 13:15:12 | 法務
今日で5月も終わりです。
全然関係ない話ですが、会計事務所の繁忙期は一般的に5月くらいまでと言われています。
…確かに5月は忙しかったです_| ̄|○


さて、気を取り直して、今日は株式会社についてお話しします。



【株式会社とは何か】
株式会社とは、会社債務について間接・有限に責任を負う株主により所有されている会社のことをいいます。
出資者(株主)は出資の見返りとして株式を引き受けますが、出資義務を果たした後は、その出資額以上の義務を会社に対して一切負いません。(会社法104条)



【株主に適用されるルール】
株主とは株式会社に出資している人をいいます。
株主は会社の所有者でありますが、必ずしも経営者ではなく、出資のみというのが認められます。これが所有と経営の分離という考え方です。
株主にもいくつか基本ルールが決められています。

◯ 資本制度と譲渡自由の原則
株式会社は「資本制度」というものを採用しています。これは「資本金の額に相当する財産を常に確保しておかなければならない」という考え方です。
勘違いしている方も多いですが、必ずしも現金で確保しておく必要はありません。資本金は建物や運転資金に形を変えて常に会社に確保されているのです。
この資本制度とは、「株主やめるから株式を払い戻ししよう」という株主の勝手を禁止している制度となります。これは会社の利害関係者保護の観点からできた制度です。

では株主が株式を精算したい場合はどうすればいいのでしょうか。
株式を精算するためには株式を他人に譲渡しなければなりません。したがって会社法には資本制度とセットで株式を自由に譲渡できる「株式譲渡自由の原則」というものが存在します。(会社法127条)

◯ 株主平等の原則
株主は法的にその有する株数や株式の内容に応じ、平等に扱われるという考え方を株主平等の原則と呼びます。(会社法109条)
あくまで株数などに応じた平等であり、全員が同じ利益を受けれるという意味での平等ではないことに注意してください。

◯ 自益権
自益権とは株主が会社から自らのために利益を受けることができる権利のことをいいます。
剰余金の配当を受ける権利、会社を清算した際の残余財産の分配を受ける権利などが代表的な自益権となります。

◯ 共益権
共益権とは株主が会社の管理運営に参加し、会社の経営を監督することができる権利です。
共益権には1株でも持っていれば行使できる単独株主権と一定数以上株式を持っていないと行使ができない少数株主権の2種類が存在します。
この持株割合等の要件がある少数株主権は、いわば株主平等の原則の例外規定と思ってください。
単独株主権の代表的なものは、取締役の行為差止請求権(会社法360条)や株主代表訴訟(会社法831条)があります。
少数株主権の代表的なものは株主提案権(会社法303条)や株主総会招集提案権(会社法297条)があります。



【持分会社との相違点】
では最後に持分会社(合同会社)と株式会社の違いを整理します。もし会社を設立する際に参考にしてみてください。
◯ 出資者のパワーバランス
株式会社は株主平等の原則により出資額や所有株式の内容により決まります。(大株主有利)
これに対して合同会社は出資者同士の話し合いにより利益の分配額や発言権も変わってきます。例えばお金はないけど会社にとってはなくてはならない存在のような人に多く利益を分配することが可能となります。
◯出資持分(株式)の譲渡
株式会社は基本的に株式譲渡自由の原則により自由な譲渡が認められています。
合同会社は持分の譲渡には出資者全員の承認が必要となるため閉鎖的な組織作りには向いています。
○内部組織
株式会社には株主総会を作らなければならない義務があり、意思決定はそこで行われます。したがっていい意味で慎重、悪い意味で意思決定が遅くなります。
合同会社ではそのような機関は存在しないため割と自由に組織作りを進めることができ、意思決定も早いです。
また合同会社には決算説明の義務がありませんので、いろんな意味で自由です。
◯設立費用
合同会社は株式会社に比べ設立費用がグッと安いです。

結論的に言えば、仲間内で組合的な組織作りをしたいのであれば第三者が介入しづらい合同会社がよく、資金集め的なものも含め合理的に組織を運用したいのであれば株式会社にメリットがあります。


それぞれのメリットを見極めながら最適な意思決定をしていきたいものです。
それでは、また。

所得分類及びその計算方法

2016-05-30 20:35:36 | 税務
すみません、日中WEBが使えない環境にいたため、更新が遅くなってしまいました。


今回、消費税の軽減税率について具体的なお話をしようと思っていましたが、31年10月へ消費税増税の再延期が行われそうなので、また増税の期日が迫ってきたら詳しくお話ししようと思います。



ということで本日は、所得税の10種類の所得分類及びその計算方法についてお話ししようと思います。

【所得税は10種類の所得に分ける】
所得税は全ての所得を10種類に分類します。これは同じ収入でも、どのようなプロセスで得た収入かによって担税力(どのくらい税金を負担できるか?)が異なるという考え方からきています。

例えば毎年給与で1,000万円もらっている人と、40年間働いて退職金として一度もらった1,000万円。
どちらも会社からもらう1,000万円ですが、退職金は退職後の生活の基盤となるお金ですから、給与でもらっている人と同じ税金を負担させるのは公平とは言えませんよね。

このように所得税では、所得を10種類に分けて、それぞれ異なった計算方法を採用することにより、垂直的な公平を確保しているのです。


【10種類の所得とは】
所得税は全ての収入を以下の10種類に分けるところからはじまります。
・利子所得・・・公社債、預貯金の利子などの所得
・配当所得・・・剰余金の配当などによる所得
・不動産所得・・・不動産の貸付による所得
・山林所得・・・立木を伐採、譲渡したことによる所得
・譲渡所得・・・資産を譲渡したことによる所得
・事業所得・・・不動産貸付業以外の事業を行ったことによる所得
・給与所得・・・給与として得た所得
・退職所得・・・退職金などの所得
・一時所得・・・上記8つ以外の一時に生じた所得
・雑所得・・・上記9つ以外の所得


名前を見てもらえばなんとなく想像がつくと思います。
なお、一時所得と雑所得に関しては所得税の基本通達というものに具体例が載っていますので、一度確認してみてください。(所得税法基本通達34-1、同35-1)

【所得の計算方法】
区分した所得については、それぞれ計算方法が違います。
先ほども申し上げたように、この計算方法の違いにより垂直的な公平を担保しています。
・利子所得・・・収入金額
・配当所得・・・収入金額-借入金の利子
・不動産所得・・・総収入金額-必要経費
・山林所得・・・総収入金額-必要経費-50万円
・譲渡所得・・・•○土地・建物  収入金額-取得価格及び売却経費-特別控除額
         ○株式  収入金額-取得価格及び売却経費
         ○その他  収入金額-取得価格及び売却経費-50万円(特別控除額は最高50万円)
         ※5年超所有しているものについてはさらに優遇措置あり
・事業所得・・・総収入金額-必要経費
・給与所得・・・収入金額-給与所得控除額
・退職所得・・・(収入金額-退職所得控除額)×2分の1
・一時所得・・・(総収入金額-必要経費-50万円)×2分の1
・雑所得・・・  ○公的年金等 収入金額-公的年金等控除額
○上記以外   総収入金額-必要経費


【担税力の違いについて】
では所得税法は担税力がある所得かどうかをどのように判定しているのでしょうか。
実は所得税法において担税力がある所得かどうかは、2つの判断基準が存在します。
(1)労働力の対価としての所得か、投資としての所得か(投資として所得のほうが多く税金を負担できる。)
(2)反復性のある所得か、臨時的な所得にすぎないか(反復性のある所得のほうが多く税金を負担できる。)


(1)がもっともわかりやすいのは取得5年以内の土地・建物を譲渡した場合です。
この場合通常よりも税率が高くなるという措置がとられています。これが(1)の典型ですが、実は投資としての所得については国の政策的な配慮により様々な特例が作られており、実際にはむしろ税額が安くなるという矛盾が生まれているというのも事実です。(国は投資を促進して国に経済を回してほしいので・・・)
(2)については一時所得を見てもらえばわかります。一時所得は50万円の特別控除の後にさらに2分の1課税という優遇措置が設けられています。
これは一時所得の臨時的な側面に着目したものです。退職所得や譲渡所得についても同じことがいえます。

【明日の税金を安くするために】
それでは最後に明日の税金を安くするためになにをすべきか考えましょう。
それはズバリ、より優遇措置が大きい所得に移行する努力をすることです。
例えば給与を100万円もらっている社長がいるのなら、80万円にして退職積み立てをしましょう。退職所得に回れば税金が半分以下になります。
また保険を使って一時所得へ移行するのもよいです。
税金に詳しくなるということは、所得を自由にコントロールすることなのです。


それでは、また。


行動経済学(3) 保有効果とは

2016-05-26 17:08:04 | 戦略
保有効果というものがあります。
保有効果とは、「自分が保有しているものに対して、本来の価値よりも高い価値を見出す現象」のことをいいます。
例えば自分の愛用品を想像してください。仮にその愛用品を売りに出す場合、あなたはいくらの値段をつけますか?
多くの場合、あなたが考えたその値段は第三者がつける適正な値段より高く設定されているはずです。そのためものを売りに出すときに「全然値段がつかないなぁ」と感じることが多いのです。

この現象を伝統的な経済学はアノマリーとして放置していました。しかし行動経済学において、その答えの一つが提示されました。

それが前回お話しした「価値関数」の説明で出てきた損失回避性という考え方です。
「価値関数」とは人は失うことを得ることよりも約2倍嫌がるというものでした。その傾向から、人は損失を回避する行動をとりやすいというのが損失回避性というものです。(詳しくは行動経済学(2)をどうぞ。)
保有効果はその損失回避性という性質から発生しているのではないかというのが行動経済学における保有効果に対する答えです。


この保有効果をビジネスに置き換えると様々な場面で応用できます。
例えばあなたがなにかとてつもない良いアイディアを考え付いたとします。どんなに考えてもこれ以上のアイディアが浮かびません。これ以上ないアイディアだ!でもそんな時こそ一回冷静になってみてください。
人は保有したものが形のないものでも保有効果が生まれることがわかっています。つまりあなたが思いついたアイディアについても保有効果が生まれていると考えられます。保有効果が生まれたアイディアはなかなか捨てにくく、違うアイデイアを人から提案されても、自分のアイディアのほうが良く思えてしまうことでしょう。
あなたの思いついたそのアイディアは人からすればそこまで評価するようなアイディアでもない可能性があることを常に頭に入れておいてください。


また、よく「一度使って気にいらなかったら返金します!」といったキャンペーンが行われることがありますが、これも損失回避性を利用した手法です。
人は一度使ったものに対して保有効果が生まれるので、「うーん、まぁ悪いものでもないしなぁ」などと勝手な理由付けをして保有を継続する傾向があります。
サンプルを渡したり、試しに使ってもらったりするのも同じような効果があります。


もう一つ保有効果と損失回避性の発展形として現状維持バイアスというものがありあす。
人はなにか必要に迫られない限り、現状維持を選択します。この傾向のことを現状維持バイアスといいます。
例えばあなたが今通っている床屋(美容室)を想像してください。
その床屋のすぐ近くに腕がいいけど今より高価格な床屋と、腕が悪いけど今より低価格な床屋ができたとしましょう。あなたは床屋を変更しますか?
ほとんどの方は変更しないでしょう。あなたが床屋を選ぶ基準が「品質」なら高価格の床屋に変更するべきです。逆に「価格」で選ぶのであれば低価格の床屋に変更するべきです。
しかし人は特に変更する強い理由がない限り変更をしないのです。

この特性を戦略に組み込むことも可能です。
例えばスポーツクラブの会員になったきり、お金だけ払って全然いってない人はいませんか。この会員制というのが現状維持バイアスを使ったビジネスのやりかたです。このような会員制のビジネスは口座振替を指定することが多いと思います。口座振替であれば金銭負担をしている感覚が少ないため、損失回避性が働かず現状維持バイアスを引き起こしやすいからです。


人の行動に理由を求めて、その理由を逆手にとった戦略をとることで、驚くほどの効果が得られることがあります。
それでは、また。

労働している状態とは

2016-05-25 12:28:13 | 労務
前回お話ししたように、ノーワーク・ノーペイの原則により労働をしないと賃金は受け取れません。
では労働をしている状態とはどのような状態でしょうか。

労働をしている状態(労働時間)についての定義は労働基準法で明文化されていませんが、過去の判例から判断すると「実際に労働に従事している時間のみならず、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことを労働時間と定義できます。
つまり実際に作業を行っていなくても、その場にいることを強制されていたり、時間的、場所的拘束を受けているような場合は労働をしている状態となります。
例えば店舗スタッフが裏で待機しているような状態でも、お客さんが来たら対応をしないといけない状態であれば労働時間に含まれます。つまりその状態でも賃金は発生しているのです。


では、具体的に労働時間に該当するかどうかを見ていきましょう。
・仮眠をしている場合
仮眠をしている場合は、その間に時間や場所が拘束されているかどうかが論点となります。例えばなにか起こった場合には出動しなければならない場合などは、例え仮眠していたとしても労働時間に含まれます。逆に3時間好きな場所で仮眠とってきていいよーの状態は労働時間に含まれない休憩時間にあたります。
・セミナー参加
セミナー参加については、強制力があるかどうかで判定するのが一般的です。
そのセミナー参加自体が業務命令である場合や、参加しないと罰則があるような場合などは労働時間に含まれます。
逆に自主的に参加しているようなセミナーは業務に関係があっても休憩時間に含まれます。
・朝の掃除の時間、朝礼の時間
朝の掃除がルール化されている会社もあると思います。また朝は必ず朝礼が義務となっている会社も多いと思います。
これらの本業以外の雑務についても労働時間に含まれます。
また、制服に着替えたりする時間についても厳密には労働時間に含まれます。


なお、労働基準法第41条において以下のような規定があります。

労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次のいずれかに該当する労働者については適用しない。
林業、水産業などの一定の事業に従事する者
事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


これが「管理職は休憩などの規定が少し違って割増賃金などの適用がなくなる。」といわれる根拠の条文となります。名ばかり管理職の問題などはこの条文が適用されるかどうかが争点となるのです。
なぜこのような規定があるのかというと、実質的にほとんど休憩とかわらない待機を行っている業種や地位の人間まで労働している状態であると認めることは、不当に賃金を得る人間を認めることなるからです。。
これらの労働者については労働時間の考え方が原則と異なりますので、注意が必要です。

それでは、また。

持分会社について

2016-05-24 19:25:15 | 法務
会社には色々な種類があります。
会社法上、「会社」とは、商行為を行う法人の事をいい、具体的には株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の4種類のどれかの事をいいます。(会社法第2条他)
そのうち株式会社以外の3つを総称して「持分会社」と呼びます。

なお、たまに見かける有限会社は会社法施行後は設立が認められていません。しかし昔から有限会社であった会社に関しては特例として存続が認められています。このように特例的に存続が認められている有限会社の事を「特例有限会社」といいます。

では、各会社の特徴をまとめます。
【合名会社】
合名会社とは社員の全員が会社債務について直接・無限に連帯責任を負う会社の事をいいます。(会社法第576条第2項)
ここでいう社員とは出資した人の事をいいます。これは持分会社全て共通の用語です。
会社債務について直接・無限に連帯責任を負うとは、会社債務について出資者が「直接」、出資額に関係なく「無限に」責任を負うことを意味します。つまり出資額に関係なく会社の債務は個人の債務となり得ます。
合名会社のもう一つの特徴として、原則的に他の社員全員の承諾なしに持分の譲渡ができない点は注意が必要です。

【合資会社】
合資会社とは、会社債務について直接・無限に責任を負う無限責任社員と直接・有限に責任を負う有限責任社員から構成されている会社をいいます。(会社法第576条第3項)
直接・有限にとは会社債務について出資額の範囲内でのみ責任を負うことを意味します。
合資会社も合名会社同様に原則的には持分の譲渡に社員全員の承諾が必要ですが、業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員の全員の承諾のみで譲渡が可能な点は合名会社と違う部分です。

【合同会社】
合同会社とは、会社債務について間接・有限に責任を負う社員のみで構成されている会社をいいます。(会社法第576条第4項)
間接に責任を負うとは会社債務については、出資の完了したのみが弁済の原資になり、社員に直接請求が来ることがないということです。
したがって株式会社によく似た体系ですが、所有と経営が分離されていない点で株式会社と異なります。

【持分会社のメリット】
持分会社を選択するメリットはいくつか存在します。(なお合名会社・合資会社についてはあまりメリット以上のデメリット(無限責任)が存在するため、あまりオススメではないですが…。)

・設立費用が半分ほどで、手続きも簡単
・資本制度が適用されないので、まとまった元手が不要
・個人事業の発展系であるにもかかわらず社会保険に加入できる。
・資本金が5億円を超えても大企業扱いにならないため、税務的に株式会社より有利
・株主総会等の開催義務がないため迅速な意思決定が可能


次回は株式会社を詳しく説明します。
それでは、また。