若手総合法務アドバイザーの備忘録

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みなし労働時間制(2) 企画業務型裁量労働制〜概要編〜

2016-06-29 10:12:11 | 労務
今回は、みなし労働のうち、企画業務型裁量労働制について見ていこうと思います。
とてもややこしい制度なので、まず今回は全体的な内容をなんとなく掴んでみてください。



【概要】
厚生労働省の出している企画業務型裁量労働制の趣旨は次のようになっています。

経済社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等が進む中で、活力ある経済社会を実現していくために、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得る環境づくりが必要となっています。
労働者の側にも、自らの知識、技術や創造的な能力を生かし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性を持って働きたいという意識が高まっています。
こうした状況に対応した新たな働き方のルールを設定する仕組みとして、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした「企画業務型裁量労働制」が平成12年4月より施行されました…以下省略。

とても回りくどい書き方をしていますが、要約すると、「企画立案などの労働時間と成果が必ずしも一致しないような業種の労働者については、労働者が働きやすいような職場を作ってあげるのも時代の流れだよね。」といった感じです。



【労働基準法の規定(労基法38の4)】
労使委員会が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、一定の範囲に属する労働者を当該事業場における「対象業務」に就かせたときは、当該労働者は、対象業務に費やしたと算定される時間労働したものとみなす。

○対象業務…事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務

○対象となる一定の労働者…対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であつて、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるもの


条文を読むとややこしい言葉に引っ張られますが、要するに「使用者が労働者の労働時間や業務の細かなルールを管理しない等の要件を満たせば、その業務を達成するに通常必要な時間を労働者が労働したこととして労働時間を計算していいよ」というルールってことですね。


【企画業務型裁量労働制の導入の流れ】
企画業務型裁量労働制の導入にあたってはいくつか段階を経なければなりません。

(1)対象業務が存在する事業場かどうかの確認。

(2)労使委員会を組織する。
※労使委員会とは、労働者を代表する委員と使用者を代表する委員で組織された委員会となります。人数の制限はありませんが労働者側の委員を半数以上入れなければなりません。(労使1人ずつは不可)
労使委員会では、賃金や労働時間等の労働条件を調査審議し、事業主に対して意見を述べます。

(3)企画業務型裁量労働制の実施のために労使委員会で決議をし、労基署へ届け出をする。

(4)対象労働者からの同意を得る

(5)企画業務型裁量労働制の実施→労基署へ半年以内毎に報告

(6)期間満了→継続の場合(3)へ戻る



(1)〜(6)にも細かなルールが存在します。
そちらは次回以降で見ていきます。
それでは、また。

相続の基礎知識(1) 基本項目と相続人

2016-06-28 14:16:05 | 法務
相続税の基礎控除の減額など、何かと注目を集める相続税ですが、相続税の理解のためにはまず民法を理解する必要があります。
そこで民法に規定されている相続関係の基礎知識を何回かに分けてまとめていこうと思います。



【基本項目】(民法第5編 第1章総則)民法882条〜885条

民法の第5編が相続関係のブロックとなっていまして、その第1章で基本項目が定められています。
ここで言われていることは大きく3つです。

・相続は死亡により死亡した者の住所により開始する。
・相続権を回復するための請求権は、相続権を侵害されたら、侵害されたことを知った日から5年以内又は相続開始から20年以内に回復の請求をしないと消滅する。
・相続財産についての費用は、相続財産から支払うこと。



【相続人について】(第2章 相続人)民法886条〜895条

第2章では相続人についてのアレコレが規定されています。


○相続人とは
民法における相続人の定義は次のようになっています。
(1)相続人とは子供です。もし子供がいなかったり、欠格や廃除などの一定の事由により相続人とならない場合には孫が相続人になります。ちなみに胎児でも相続人になります。
(2)子も孫もいない場合は親や祖父母(直系尊属)が相続人になります。複数いる場合は親族図でより近い者を相続人とします。(例えば親と祖父母がいる場合は親が相続人)
(3)直系尊属もいない場合は兄弟姉妹がなります。
(4)配偶者は常に相続人になります。

簡単にまとめると、子又は孫→直系尊属→兄弟姉妹の順で、配偶者は常に相続人という感じです。


○欠格と廃除
相続人となる資格があるにもかかわらず相続人になれない場合があります。そのものが欠格事由又は廃除事由に該当している場合です。

(欠格事由に該当する者)
・故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
・被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
・詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
・詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
・相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(廃除事由に該当する者)
推定相続人(相続人となる予定の者)が、被相続人に対して虐待、重大な侮辱を加える、その他の著しい非行等があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。
また、被相続人は遺言にて意思表示をすることにより、推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求させることができます。
この場合に、裁判所にて廃除が認められると、その推定相続人は相続人になることができなくなります。
なお、被相続人は裁判所に請求して、廃除をいつでも取り消すことができます。


次回は相続の効力についてお話しします。
それでは、また。

生計を一にするとは

2016-06-27 19:13:51 | 税務
所得税法では、しばしば「生計を一にする」という言葉が使われます。
例えばみなさんに一番身近なものとして「配偶者控除」や「扶養控除」という項目があります。
≪配偶者控除≫
居住者が控除対象配偶者を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から38万円を控除する。
控除対象配偶者とは居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもののうち、合計所得金額が38万円以下である者をいう。(所得税法83条、2条33項)

≪扶養控除≫
居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族一人につき38万円を控除する。
控除対象扶養親族とは16歳以上で、居住者の親族等でその居住者と生計を一にするもののうち、合計所得金額が38万円以下である者をいう。(所得税法84条、2条34項)


では「この生計を一にする」とはどのような状態のことをいうのでしょうか。

【制度趣旨から読み取る】
生計を一にするものに対する各種の優遇規定は、所得税が個人の担税力に帰属するのでなく、経済生活単位の担税力に帰属することを表しています。
平たく言えば「財布が一緒であれば、ひとまとめにして担税力を考えよう」ということです。
この考え方に立って考えれば、「生計を一にする」とはどちらかが金銭的な援助等を受けている方が扶養という考え方ではなく、また必ずしも同居を要件とするものでもないということです。

【基本通達から考える】
所得税基本通達2-47では、「生計を一にする」の意義を次のように説明しています。

法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。(所得税基本通達2-47)



つまり明らかに独立して生計を立てている場合以外は同居していなくとも「生計を一にする」と解釈してよさそうです。

【まとめ】
「生計を一にする」に該当するかどうかは、各親族の収入や財産管理の状況、独立して生計を立てているかどうかによって判断が分かれます。
同じ財布で生活していると認められる場合、例え別居していても「生計を一にしている」と判断できることになります。
ちなみに離婚して養育費を払う場合も、一定の要件を満たせば扶養控除等を受けることが可能です。(悲しい話ですが、税金は安くなります…(笑))

医療費控除など「生計を一にする」という要件は税法でよく使われます。
しっかりと整理しておきましょう。
それでは、また。

コンコルド効果と機会損失

2016-06-23 19:13:59 | 戦略
コンコルド効果というものがあります。
これは埋没効果の別名で、ある対象に一度投資をすると、その投資した金銭的又は時間的コストが無駄に終わることを恐れて投資を止められなくなる現象のことです。
例え続けても損失が出ることが明らかな場合でも、止められなくなるところがこのコンコルド効果の恐ろしいところです。
わかりやすいのがギャンブルです。
今やめれば損失は最小限だとわかっていながら止められない。これがコンコルド効果の典型です。


もう一つ、コンコルド効果とセットで考えなければならないものが、機会損失という考え方です。
あなたが3時間のギャンブルで1万円損した場合、損失額は1万円でしょうか?
答えはNOです。あなたは現金1万円と3時間という時間を損したのです。
3時間働いていれば5000円くらいにはなったかもしれません。あなたは3時間という有効な機会を失ったのです。


私は職業柄、たくさんの会社の数字を見てきました。会社の数字にはたくさんのコンコルド効果が詰まっています。
特に不採算部門についてはその傾向が強いです。明らかに黒字化する見込みのない部門についても、なかなか清算する選択肢を選べないのが恐ろしいところです。
このコンコルド効果を回避するためには、客観的な判断が必要となります。
改善の見込みがないのであれば、その時点でやめる方がよっぽど経済的ということを理解してください。


全てを思い込みや直感だけで判断しないで、数字や論理的思考をもって判断することが損しない一番の方法です。
それでは、また。

みなし労働時間制

2016-06-22 15:35:29 | 労務
労働時間の例外である変形労働時間制についてお話ししました。
今回はもう一つ労働時間の例外である「みなし労働時間制」についてお話しいたします。

【みなし労働時間制】
近年のサービスの多様化や技術革新などを背景に、使用者の指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難である場合や、労働者の裁量により業務の遂行を委ねたほうが効率的な事業場のマネジメントができる場合など、通常の方法により労働時間の算定をすることが適切でない状況が多く発生するようになりました。
こういった状況でも正しく労働時間の算定ができるように設けられた制度が、みなし労働時間制です。
みなし労働時間制は大きく分けて3種類存在します。
○ 事業場外労働に関するみなし労働時間制
○ 専門業務型裁量労働制
○ 企画業務型裁量労働制


【事業場外労働に関するみなし労働時間制】
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。(労基法38条の2)

この条文を適用するには2つの要件が存在します。
○ 事業場外で業務に従事し、使用者の指揮監督が及ばない業種であること
○ 労働時間を算定するのが困難であること
例えば新聞や雑誌の記者は社外で仕事する時間が圧倒的に長く、またその行動一つ一つについては個人の裁量に任されていることがほとんどです。
このように使用者の指揮監督が及ばない状況で労働をすることを事業場外労働といい、このような場合にはみなし労働時間制の対象となります。


みなし労働時間制を採用している場合、一日中外で仕事をした場合にも、原則的にはその日は所定労働時間労働したものとみなされます。(一部事業場で労働した場合にも同様です。)しかし事業場外労働が、所定労働時間を超えて労働することが明らかである場合には、通常その事業場外労働を行うに必要な時間分労働をしたものとみなして、労働時間を計算します。


【専門業務型裁量労働制】
使用者が専門業務型裁量労働制の対象となる一定の業務について、労働時間として算定される時間等を定めた場合において、労働者を当該業務に就かせたときはその定めた時間労働したものとみなす。(労基法38条の3)


専門業務型裁量労働制の対象とんすることができる業務は厚生労働省において限定列挙されています。
○ 新商品、新技術の研究開発、人文科学、自然科学に関する研究の業務
○ 情報処理システムの分析又は設計の業務
○ 新聞、出版の事業における記事の取材、編集の業務、放送番組の制作のための取材、編集の業務
○ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
○ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー、ディレクターの業務
○ その他厚生労働大臣の指定する業務(公認会計士、弁護士、税理士、システムコンサルタント等)

また専門業務型裁量労働制を採用するためには次の事項を、労使協定にて定めなければなりません。定めたのち、所轄労働基準監督署に届け出ることにより、採用することが可能となります。
○ 対象となる業務の内容
○ 1日当たりの労働時間数
○ 業務遂行の手段や時間配分を使用者が具体的に指示しないこと
○ 健康や福祉を確保する措置を使用者が講ずること
○ 苦情に関する措置を使用者が講ずること
○ その他一定の事項


長くなりましたので、本日はここまでです。
次回は企画業務型裁量労働制についてお話しします。
それでは、また。