じりりりりりりりりりり。
(・・・うるさい・・・)
じりりりりりりりりりりりりりりりりり。
(早く止めろ・・・)
じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり。
(というより、何の音だ・・・?)
そこまで考えてからはっと意識が覚醒する。ばっと目を開けた瞬間に視界に入ってきたのは金の髪。
だがそれはアリスのものではなく、気まぐれで我侭でそれでも絶大な情報量を誇る商売仲間兼常連客のユージンのもの。
そういえば昨夜、ユージンに誘われて久しぶりにやったんだっけか。
腕を伸ばしたけたたましく鳴り響く目覚ましを3つほど止めてから起き上がろうと身体に力をこめる。・・・痛い。
この野郎・・・若いだけあって手加減を覚えてないらしい。
(サルが・・・。)
心の中で毒づいてから無理やり起き上がろうとした瞬間、ぐいっと抱き寄せられた。ユージンの腕だ・・・生憎と本人はまだすやすや眠ったままだが。
呆れてため息をついてから俺を抱き寄せる手を解こうとするが、なかなか解けない。普段力はないくせに、妙に硬く手を握ってやがる。
「ユージン。」
「んにゃ・・・。」
「起きろ、ユージン。」
仕方なく適当に身体をゆすってやると、寝ぼけた声が口から漏れる。しばらく繰り返していると、やがてユージンが目を開いた。
「あれー・・・ジオー・・・?」
「起きたか?」
「んー・・・眠い・・・。」
「眠ったの明け方だったしな・・・、ほら離せ。」
(全く・・・こういうところはガキらしいけどな。)
そう思いながらユージンの腕から逃れようとする、が。
ユージンの腕が解かれる気配はない。
「・・・ユージン・・・?」
「あと10分ー・・・。」
「・・っ、テメェは母親に起こしてもらってるガキか!つか、寝ててもいいから俺を放せ!」
「抱き枕ー・・・。」
「誰が枕だ!」
いい加減切れてベッドから蹴り落とす。むにゃむにゃと何だかよく分からない寝言を呟きながらユージンは不満そうに起き上がった。
「何だよー、昨夜はあんなに可愛かったくせにー。」
「だーれーが、可愛いんだ?」
「誰ってそりゃ、ジオだろー?」
「馬鹿言ってんな・・・。」
最早突っ込む気力すら起こらずにため息を突いて立ち上がり、伸びをしてから服を出そうと箪笥に向かう。
後ろではユージンがまだ何か喚いている。
「つれないなー・・・。んな可愛げないとまーた黒ウサギって呼」
最後まで言わせずに、頭を思いっきり殴る。いい音がした。
早く(少なくともアリスが帰ってくる前までには)こいつを追い返して、仕込みをして、開店準備に取り掛からなきゃならない。
ぐりぐりとユージンを足蹴にしながらそんな事を考え、身体の痛みに再びため息が零れた。
(ジオラルドもといエイド+ユージンもといミシェル)