これは先生にチェックを受けて、修正する前の作品です。
久々に書いたので、修正する前にアップしようと思います。
かなり字が詰まっているので、これはキツいと思ったら回避してください。
タイトル
『マイノリティーな女』
世界は科学の発達や産業の繁栄によって、リストラはなくなり人々の懐も豊になった。貧乏人も減少した。次第に人々は更なる金と欲に目が眩み、本物の「価値」を見落とすようになった。そして人は、次なる価値をあるモノに見出す。
それはポイント制。堪ればタダで何かが貰える魔法の響き。
現代人はその魔法の響きに魅了されていた。そして人が動けば世界も変わる。
キャッシュカードもポイント制。お店の会員カードもポイント制。ジュースや煙草の自動販売機もポイント制。この世にある「モノ」全てにポイントが付いてくる。消費と代価。その代価となる景品が豪華になるにつれ、老若男女問わず、人は紙幣よりもポイント数によって様々な特典が付いてくるカード重視の生活へ変動。そのため、財布の中にはぎっしりと色鮮やかな「夢」が詰まっている。
それが現代人のスタンス。
そんな時代の最中、とある町では一人の女が小汚い服装で、毎朝熱心に道端の空き缶を拾い続けている。時代にはそぐわない風貌。袋いっぱいに詰め込まれた缶クズ。道行く人々は皆、缶クズ同様、ゴミを見るような軽蔑の眼差しで女を嘲笑う。
『またゴミを拾ってるよ』『ゴミにいったい何の価値があるんだ』『ゴミ屋敷でも建てるつもりか?』『きっとダンボールハウスだ』『この町一番の屋敷とはえらい違いだな』『あはは』『汚らわしい』『空気が腐る』『帰れ』『そんなに空き缶が欲しいならくれてやるよ』『うっ、や、止めてください』『おお、ゴミ女がしゃべったぞ』――。
心ない言葉。罵詈雑言の嵐。女が道を歩くだけで、ヤジやゴミが飛んでくる。それでも女は懸命に空き缶を拾い続ける。いつものことなのだ。
そんな小汚い女とは無縁のように思えるポイントカードには、人々を魅了する様々な特典がある。二泊三日の日本または海外旅行。ギブソンのギターやグランドピアノ。果てに一軒家などなど、挙げればキリがないほどのバリエーション。
ギャンブルや宝くじなどよりもずっと効率的。とにかく金を消費して貯め続ければ欲しいモノがタダで貰える。狂い始めた人間の思考。そして人々は景品の豪華さに踊らされ、ポイントを貯めることに熱心になって気付いていない。人が動けば世界も変わる。世界が変わるということは、人がそれを動かしているということ。
全ては社会を動かす人間の欲によって回っている。その貪欲さを利用して、口座に潜む「数字」を貯める人間も然り。利用されている。たとえその法則に気付いていたとしても――貯めずにはいられない――それほどまでにポイントには魔性の魅力が備わっていた。
「偽りの価値に、ワタシは惑わされない」
誰にも聞こえないようにそっと女は呟く。そして今日も小汚い格好で空き缶を拾い続ける。決して楽な行動ではない。汚れた言葉で罵られ、紫煙を顔面に吹きかけられ、吐き出された唾が無遠慮に服や手足に降りかかる。辛い……でも、止められない。
女は缶を集めるために、次々と場所を移動していく。町の各所に配置された公園のゴミ箱。駅周辺のゴミ缶入れ。そして雑草が伸びきった河川敷。実は川原こそが女にとっての穴場。少し歩くだけで、ゴロゴロと地面に転がる無数の無機質たち。拾っても拾っても無くならない。次の日にはしっかりと、在るべき存在のように心ない人間が投げ捨てた空き缶たちが横たわっている。それを愛おしそうに拾い上げ、女は心躍る思いでビニール袋へ缶を投げ込む。瞬間、罵声を発する者たちの顔が浮かび、つい笑ってしまいそうになるが、
「ここにおったんですな」
不意に背後からかけられた声に、女の顔が強張る。振り返る。そこには小奇麗な格好の老人がいた。老人の口ぶりからして、以前から女の事を知っているようだ。
女は老人に愛想笑いをする。老人は何か言いたげに口を開く。しかし女の方が早かった。
「私は空き缶でこの町一番の屋敷を手に入れました。でもプールがまだないので、次はそれを貰うことにします」
この世の法則を覆す行動。それは消費せずに正真正銘のタダで景品を頂くこと。それこそが本物の「価値」なのだ。空き缶一つにも価値がある。
この世にある「モノ」全てにポイントが付いてくる。
「それは良いとしても、その格好は何とかならないんですかな? お嬢様」
「この格好の方が、空き缶の価値がわからない愚かな人間の反応を窺いやすいわ。ふふふふふっ」
この女が一番、ポイントに取り付かれていた。
この作品について、何かコメントを頂けるとありがたいです。
以上です。
ではっ
久々に書いたので、修正する前にアップしようと思います。
かなり字が詰まっているので、これはキツいと思ったら回避してください。
タイトル
『マイノリティーな女』
世界は科学の発達や産業の繁栄によって、リストラはなくなり人々の懐も豊になった。貧乏人も減少した。次第に人々は更なる金と欲に目が眩み、本物の「価値」を見落とすようになった。そして人は、次なる価値をあるモノに見出す。
それはポイント制。堪ればタダで何かが貰える魔法の響き。
現代人はその魔法の響きに魅了されていた。そして人が動けば世界も変わる。
キャッシュカードもポイント制。お店の会員カードもポイント制。ジュースや煙草の自動販売機もポイント制。この世にある「モノ」全てにポイントが付いてくる。消費と代価。その代価となる景品が豪華になるにつれ、老若男女問わず、人は紙幣よりもポイント数によって様々な特典が付いてくるカード重視の生活へ変動。そのため、財布の中にはぎっしりと色鮮やかな「夢」が詰まっている。
それが現代人のスタンス。
そんな時代の最中、とある町では一人の女が小汚い服装で、毎朝熱心に道端の空き缶を拾い続けている。時代にはそぐわない風貌。袋いっぱいに詰め込まれた缶クズ。道行く人々は皆、缶クズ同様、ゴミを見るような軽蔑の眼差しで女を嘲笑う。
『またゴミを拾ってるよ』『ゴミにいったい何の価値があるんだ』『ゴミ屋敷でも建てるつもりか?』『きっとダンボールハウスだ』『この町一番の屋敷とはえらい違いだな』『あはは』『汚らわしい』『空気が腐る』『帰れ』『そんなに空き缶が欲しいならくれてやるよ』『うっ、や、止めてください』『おお、ゴミ女がしゃべったぞ』――。
心ない言葉。罵詈雑言の嵐。女が道を歩くだけで、ヤジやゴミが飛んでくる。それでも女は懸命に空き缶を拾い続ける。いつものことなのだ。
そんな小汚い女とは無縁のように思えるポイントカードには、人々を魅了する様々な特典がある。二泊三日の日本または海外旅行。ギブソンのギターやグランドピアノ。果てに一軒家などなど、挙げればキリがないほどのバリエーション。
ギャンブルや宝くじなどよりもずっと効率的。とにかく金を消費して貯め続ければ欲しいモノがタダで貰える。狂い始めた人間の思考。そして人々は景品の豪華さに踊らされ、ポイントを貯めることに熱心になって気付いていない。人が動けば世界も変わる。世界が変わるということは、人がそれを動かしているということ。
全ては社会を動かす人間の欲によって回っている。その貪欲さを利用して、口座に潜む「数字」を貯める人間も然り。利用されている。たとえその法則に気付いていたとしても――貯めずにはいられない――それほどまでにポイントには魔性の魅力が備わっていた。
「偽りの価値に、ワタシは惑わされない」
誰にも聞こえないようにそっと女は呟く。そして今日も小汚い格好で空き缶を拾い続ける。決して楽な行動ではない。汚れた言葉で罵られ、紫煙を顔面に吹きかけられ、吐き出された唾が無遠慮に服や手足に降りかかる。辛い……でも、止められない。
女は缶を集めるために、次々と場所を移動していく。町の各所に配置された公園のゴミ箱。駅周辺のゴミ缶入れ。そして雑草が伸びきった河川敷。実は川原こそが女にとっての穴場。少し歩くだけで、ゴロゴロと地面に転がる無数の無機質たち。拾っても拾っても無くならない。次の日にはしっかりと、在るべき存在のように心ない人間が投げ捨てた空き缶たちが横たわっている。それを愛おしそうに拾い上げ、女は心躍る思いでビニール袋へ缶を投げ込む。瞬間、罵声を発する者たちの顔が浮かび、つい笑ってしまいそうになるが、
「ここにおったんですな」
不意に背後からかけられた声に、女の顔が強張る。振り返る。そこには小奇麗な格好の老人がいた。老人の口ぶりからして、以前から女の事を知っているようだ。
女は老人に愛想笑いをする。老人は何か言いたげに口を開く。しかし女の方が早かった。
「私は空き缶でこの町一番の屋敷を手に入れました。でもプールがまだないので、次はそれを貰うことにします」
この世の法則を覆す行動。それは消費せずに正真正銘のタダで景品を頂くこと。それこそが本物の「価値」なのだ。空き缶一つにも価値がある。
この世にある「モノ」全てにポイントが付いてくる。
「それは良いとしても、その格好は何とかならないんですかな? お嬢様」
「この格好の方が、空き缶の価値がわからない愚かな人間の反応を窺いやすいわ。ふふふふふっ」
この女が一番、ポイントに取り付かれていた。
この作品について、何かコメントを頂けるとありがたいです。
以上です。
ではっ
