缶詰が好きです

以前のプロバイダーが閉鎖になるので、Gooブログに引っ越してきた、缶詰が好きな、ダメ料理人のブログです。

太平洋の向こう側

2022年07月24日 | 固ゆで料理人
太平洋の向う側 7」  固ゆで料理人

Chapter5 缶タッチャブル

Mr・アームストロングと取り換えた54年製のダッジのトラックの荷台からガタゴトと揺られながら見る田舎町の風景は、この国の本質を眺めているような気がする。どんな国でもその国の本質は田舎にあるのだろう。ニューヨークやパリやモスクワやトーキョーやバンコク・・・そこにはその国の本質は無い。
俺も自分の国の本質に触れることなく生きてきたような気がする。都会に住むとはそういうことなのかもしれない。俺は今度の仕事でそんなことを考えるようになってきた。
旅は人に考えさせるものなのかもしれない。

ようやっと俺たちはウィチタの裁判所に着いた。期日に間に合った。裁判は午後からだ。
裁判所はなんだか臭かった。いや、裁判所の周りも臭かった。廷吏に「この裁判所はいつも臭いのか?」と訊くと、定理は笑って指差した。指差した先を見るとトラックが何台も停めてあり、荷台には大量の牛糞や豚糞で作られつつある堆肥が積んである。
なんでも農業補助政策の変更に対する農民のデモだそうだ。警護の保安官達も遠巻きに観ている。
この国では市庁舎や郡庁舎の中に保安官事務所や裁判所があることが多く、ここもその例に漏れない。だから市庁舎への抗議のトバッチリを裁判所が蒙っている訳だ。
観ていると、麦藁帽を冠った農民たちが運転する堆肥を満載したトラックがジワジワと市庁舎ににじり寄ってくる。
何トンもの糞がジリジリと迫ってくるのだから下手なホラー映画よりも恐ろしいかもしれない。

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俺たちは口で息をしながら証拠品の缶詰を裁判所に運び、廷吏を呼んで証拠品の缶詰のケースを預かってもらった。廷吏たちは匂い対策で鼻の下のメンソレータムを塗っていた。
見渡すと、裁判所の中も、その周りも、あらゆる人間がメンソレータムを鼻の下に塗りつけている。鼻の下がテラテラしている生物の惑星みたいだ。

とにかくこれでコウ兄弟が軍隊でも連れてこない限り証拠品を奪うことはできない、先ずは一安心だ。

もう一つの心配は俺自身だ。連中はせめて証人としての俺をなんとかしたいと思っている筈だ。
なんとかしたいという点では、ヤツラにとってジョニー・ザ・ハンサムよりも証人の俺の方が優先順位が高いと言えるだろう。おまけにコウ兄弟の片方に手下の前で恥をかかせたのだから尚更だろう。

裁判まで時間があるので近くのコーヒーショップで時間をつぶすことにした。
コーヒーを注文しながら窓の外をフッと見ると、古いルノーが見えた。

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さて、この車がここにあるという事は、やつらなんとかここまでたどり着いたということか?それとも他の車か・・・?確かめるべきだろう。

俺がエルウッドに顎を杓ってルノーを指すと、エルウッドは誰かと話すように独りごちた・・そしてその顔は困惑に変わり、足首のホルスターのホックをはずしてすぐに銃を抜ける用意をした。そして俺に向かって頷いた。
そういうことなら俺が観に行かねばならない。
腕の立つエルウッドを護衛に残して席を立ち、全員に気をつけるように目で合図して席を立った。何にでも反対の秘書のフェリックスも珍しく反対をしなかった。

車に近寄りながらズボンのバンドに挟んだワルサーの発砲の準備をしようとしたが・・・しまった、裁判所に入るためにGUNは車に置いたままだ・・・今の俺は丸腰だ・・・丸腰と言うのは心細い。
良く言うところの「まるでズボンを履き忘れたみたいな心細さ」だ・・・
俺は今までの人生でズボンを履き忘れたことがあったかどうか思い出してみた。そんなことは一回もなかった。この国の言い回しの表現には非現実的なモノが多いとつくづく思わされる。
俺は今度の仕事でそんなことも考えるようになってきた。

ルノーに近づいて確かめて見る。エルウッドの撃った弾痕があるし、俺たちの車がぶつかった痕もある。間違いない・・・ヤツらも来ている。
多分、もう裁判所に入っているのだろう。
俺はコーヒーショップに戻り、皆に話した。
たとえ奴らが待ち伏せしていようと、出廷しなければならないであろうと結論が出た・・・フェリックス以外は・・・。

エルウッドとジョニーは時間ギリギリに裁判所に入ることにして、俺だけ一足先に裁判所で様子見をすることになった。丸腰だがしかたがない。せいぜい大声を出して助けを呼ぼう。

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裁判所は市庁舎の3階にある。俺は階段の上からで見張ることにした。
見張っていると農夫の女房らしき出で立ちの女性が年代物の乳母車を引っ張りながら階段を上ってくる。

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相当重い赤ん坊らしく、ハァハァ言いながら登ってくる。エレベーターは壊れているのだろうか・・・?手を貸すべきだろうか・・・・?
やはり手を貸すべきだろう。俺は女のそばに行き、一緒に乳母車の手すりを掴み、赤ん坊を引き上げるのを手伝った。
「ありがとうございます」
「いえ・・・」
「重いでしょう?」
「ええ・・・」
俺はどうも初対面の女と口をきくのが苦手だ。なんとか失礼の無いように無理やり話題を降ってみた。
「男の子?それとも・・・」
「ええ、ええ・・オスやらメスやら・・いろいろと・・・」
なんだか変な答えだった。そのとき階下から年老いた廷吏が二人がかりで俺たちの証拠の缶詰のケースを運んできた。
そこに二人の保安官が通りかかり、年老いた廷吏に話しかけて、代わりに缶詰のケースを運び出した。南部の保安官は親切だなと思いながら見ていると、俺は妙なことに気付いた。付帯の保安官はアジア系の男だが、妙なのはそこではない。二人の保安官の鼻の下は乾いているのだ。
今、この建物の中にいる人間は全員と言っていいほど鼻の下のメンソレータムを塗っている。
しかし、この二人のアジア系保安官は鼻の下にメンソレータムを塗っていないのだ。
しまった、あいつら保安官に化けて潜入したのだ!
俺は大声で缶詰を置くように叫んだ。その瞬間、横から手を怪我したコウ・ニョウサンが現れた。
「構わないからヤッチマイナ!」

その命令で保安官に化けたコウ兄弟の手下は腰の銃を抜きこちに向かって撃ちだした。そう、保安官に化ければ銃を持ち込むことも容易だったのだ。
こちらは丸腰で隠れる場所がないどころか、赤ん坊と母親を庇わなければならない・・・不公平だな。
足もとや後ろに9mm弾がはじける。俺はなんとか急いで乳母車を引き上げようと焦るがなかなか上がるもんじゃない。
コウは大笑いしながらこちらを見ている。そのとき、俺の手を9mmがかすめた。思わず乳母車の取ってから手を放してしまうと、乳母車はガタンガタンと一段一段階段を下がりだす。
俺はその乳母車を追いかけるがもう少しで手が届かない。
そして起こってはいけないことが起こった。弾が一発乳母車に当たった。
俺はその場に凍りついた・・・俺のせいだ・・・・・
母親はそれを見て
「おや、まァ・・」
とだけ呟いた。
乳母車は今ではスピードを上げて階段を下っていく。ガタンガタンガタンガタン・・・
奴らの手下はいまや六人に増えている。コウの拳銃も入れれば7丁の拳銃が俺を狙っている。

もう、俺は観念した。こんなことなら・・・赤ん坊を巻き添えにしたのだから・・撃たれた方がマシだ。

そのとき奴らの横からエルウッドが右手に銃を持ち、左手になにやら光る金属板を掲げてジョニーと一緒に飛び込んできた。
「警察だ!警察だ!伏せろふせろ!」
今度はエルウッドが警察に化けて突っ込んで来たのだ。
エルウッドは俺を狙っている拳銃を撃ち飛ばしながら突撃してきたが、エルウッドの銃は5連発。5人倒しても2人残る。

やはり観念しようと思ったとき、そばにいた母親がポケットから携帯電話を取り出し、エイッとばかりにボタンを押すと・・・
乳母車がボン!と音を立てて爆発した。そして乳母車の前方に堆肥を撒き散らした。
乳母車には赤ん坊ではなく抗議用の堆肥が少量の指向性爆薬と一緒に積んであったのだ。母親はこれを市役所内で抗議の為に爆発させて堆肥を撒き散らす計画だったのだ。

ヤツラは、オスやらメスやらの糞まみれになった。
そこへ本物の保安官が飛び込んできて、ヤツらに銃を向けながら逮捕した・・決して手錠を掛けようとはしなかったが・・。
エルウッド自分は警官で、ずっとこいつらを追っていたのだと保安官にウソをついたが、エルウッドの南部訛りのおかげで保安官は簡単に信じてくれた。

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結局、裁判所がトイレより臭くなったのと、原告が全員逮捕されたので、もう勝ちも負けもなく、この裁判自体が無くなった。

コウ・ニョウサンとその手下たちは、裁判まで仮釈放は認められず、市庁舎の掃除を命じられた・・南部や中西部では判事のチカラは神をも上回る。
オレンジ色の囚人服を着てこびり付いた堆肥を掃除するコウ・ニョウサンを思い浮かべると思わず笑みがこぼれた。

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仕事は終わったので俺たちは別れることになった。
エルウッドは南部の自宅へ、ジョニーは同じ方向だがドン・コレステローレが飛行機を用意していた。俺も一緒に乗るか?と訊かれたが、折角だがバスに乗ってみたいと断った。
「変わった野郎だぜ」
ドンはこう言うともう証拠として必要が無くなった缶詰めを俺にボーナスとしてくれた。
重いので断ろうと思ったが、折角なのでフェデックスで送ることにした。

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そして俺は今、自分のオフィスでワルサーに弾を込めながらこの一週間を振り返っている。
振り返ってきて思うのだが、コウ兄弟の狙いは他に合ったのか?
そういえばタナカサンとドロテの帰りが遅いな。俺は少しだけ嫌な予感がしてきた。

「太平洋の向う側 8」  固ゆで料理人
Chapter6 Madican

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夜がお決まりの音を纏ってこの街にやってきた。パトカーのサイレン、盗品を観光客に売りつける物売りの声、世界の終末が間近に迫ってる警告の声、女が男を罵る声、たまに神の声や銃声がそれに混じる。
向かいの安ホテルの看板が点く。古い警告灯がジージーと音を立てている。今夜も空き部屋はあるらしい。

タナカサンとドロテが帰ってこない。少し心配になった俺は、外は暗くなってきたが、兎に角タナカサンとドロテを探すことにした。
コバヤシ丸という日本の缶詰加工船の船長に会いに行くと言っていたので、波止場へ行くことにした。
ちょっと急ぎなので自分のイタリア車で行くことする。

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この国の標準では小さい街の部類に入るこの街では、4輪車よりもスクーターが便利だ。
駐車場は要らないし、どこでも止められる。
それに俺は調理人ではあるが、私立探偵でもある。
ロンドンでもトーキョーでもエドでも、私立探偵や万事屋はこのヴェスパスクーターに乗ることになっている。勿論この街でも探偵はヴェスパに乗ることになっている。
尾行にも便利で、浮気の調査には持って来いだ。これを使うと、尾行の対象が「Follow Me」と言ってくれているように思えるほど簡単になる。
ただし、フリーウェイは走れないが・・・

因みにローマでは王女でもヴェスパに乗るらしい・・。

霧の多いこの街では、スクーターに乗るときはレインコートが必需品だ。俺はヴェスパとおそろいの水色のレインコートと、同じ水色のハンティング帽を冠り、足首に黒いワルサーを括り付け、ポケットにおやつのマカロンをしのばせ、ヴェスパとお揃い色のショルダーバックにいつでも食事が摂れるように缶詰をたくさん詰め込んで、スクーターの足もとに括り付けた。

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これだけあれば、張り込みをしながらも素晴らしいお食事が摂れるという訳だ。
装備を用意し、身なりを整えた俺はヴェスパを波止場へと走らせた。

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コバヤシ丸が停泊しているのはどこの埠頭か判らないので、フィッシャーマンズワーフに行き、そこからノースビーチへと探しながらヴェスパを走らせる。
フィッシャーマンズワーフを追い越し、海に向かっていけば、黄昏がゴーグルを金色に染めて広がるが、右に競馬場は無いし左にビール工場も無い。ピア39は昔ながらの海岸遊園地だ。
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子供が大好きなベタベタと甘い食品が山のように売られている。この国の食生活の貧しさはこのような施設から始まっているのかもしれない。ここは甘い以外に味は存在しない世界なのだ。

海を見るとアシカが沢山生息居ている。ピア39の沢山のアシカが寝転んでいる姿を見ると、今度生まれるときは、アシカかナマケモノになりたいと願うようになる。

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やがてコイトタワーが見えてきて、遠く沖合にはベイブリッジが見えてくる。そして古い倉庫が見えだしたらそこが埠頭だ。

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しばらく走ると港湾事務所があったので、そこでコバヤシ丸がどれか訊くことにした。

事務所は古い木製で、絶えず潮風に当たっているせいかペンキもはげかかり、湿った木の匂いがする。
おれはスプリング式のドアを押して中に入った。
一瞬誰もいないのかと思ったが、受付カウンターの向こうからうめき声が聞こえた。
俺はカウンター越しに覗き込んだ。
そこには初老の男が頭から血を流して倒れていた。
俺は駆け寄って声をかけたが返事はなく、ただ呻くだけだ。
兎に角警察に電話をかける。
電話をきってから男に声をかけ続ける。このかけ続けるというのが案外大事らしいが、何故かまでは習わなかった。今度消防署で教わって来よう。

やがて救急車が到着し、救急隊員たちがテキパキと応急処置を始める。
2分くらい後に警察車が到着した。降りてきたのは初老の刑事一人だけだ。
この刑事、まるで1950年代からタイムスリップしてきたのか、黒のスーツに細身の黒のナクタイ、そして黒のソフト帽を冠っている。そして顔も昔風の怖い顔だ。
警察バッジを持っていなかったら、凶悪犯罪者と思われても仕方ないような冷酷な顔立ちで、特にブルーの眼が氷のような冷酷さを放っている。車椅子の老婆を、瞬きひとつせずに階段の上から突き落とすことが出来そうな冷酷さを滲み出している。

「オイ、オマエ!」
俺は自分のことを指差し、オマエとは俺の箏か?と言う顔で刑事を見た。
「そうだ、オマエだ。オマエが見つけて俺たちを呼んだ、それで間違いないな?」
俺は頷いた。
「ウン?待てよ・・・お前の顔、見たことあるな・・・お前、よくホットドッグ屋台に来てるな?」
俺は教授と呼ばれている情報屋のホットドッグ売りだとすぐに判った。
「俺は隠してもしょうがないので、名乗って、そして事のいきさつを話した。」

すると刑事は関係あるかどうかは判らないが、先ずそのコバヤシ丸を探そうと言い、すぐに制服警官に何事かを命じた。
数分後、コバヤシ丸の停泊場所がわかり、俺は刑事の車に乗ってコバヤシ丸に行った。

コバヤシ丸はブルーの船体に白いラインの入った加工船で、船と言うより、海底油田のプラットホームと言う方が的確な双胴船だ。船体中央部と後部に巻き網の巻き上げ機やクレーン等が配置されている200メートルほどの大きな船で、釣り上げた魚を一気にさばいて缶に詰めて缶詰めにしてしまうという工場のような巨大加工船だ。
船籍はJapan。所属はObamaとなっている。なにやら我が国の大統領のような地名だ Yes We 缶!

刑事が船を見て小さく口笛を吹いた・・・
「たまげたな、航空母艦なみの大きさじゃないか・・これどこから入るんだ?・・判るか?」
俺は首を振った。船に沿って歩いてみると、船首部分に小さな開口部があり、渡り板がかけてある。
覗いて見ると、またも男が倒れているのを見つけた。
刑事は腰のケースから銃身の短いリボルバーを抜いた。

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古いコルトの38口径だ。今時こんなGUNを使っているとは、どこまでオールドファッションな男なんだ?
刑事が応援を呼ぶ電話をかけてから俺に訊いた。
「オイおまえ、なんか武器はあんのか?」
俺は足首から小型のワルサーを抜いた。
刑事が笑った
「古いGUNだな、オマエ、オールドファッションな奴だな」
失礼なことに、自分のGUNをさて置き、俺のGUNを古いと笑った。ところでこの刑事、笑い方も怖い。

そして俺たちは船の中へ入って行った・・・でもなんで俺がいかなくてはならないのだろう・・・ま、イイカ・・。

船の中は一応明るいのだが、日本製のホラーゲームのようで、今にも歩く死体が襲いかかってくるような気がする。
俺はああいうゲームが大嫌いだ。だって・・・すごく怖いじゃないか。

いくつかの防水扉を通り抜け、いくつものラダーを上り、いくつも通路を間違えて、やっと艦橋に到達すると、そこには幾人かの日本人乗組員が縛られていた。

通訳が来るのを待ち、乗組員たちに話を訊くと、武装した数人が乗り込んできて、日本から運んできた缶詰6ケースと、船に来ていた日本人とフランス人の女の子と船長を連れて行ったとのことだった。
盗まれたのはサンマの缶詰。
変に思った俺がどんな缶詰か訊いてみると、俺たちがウィチタに運んだのと同じ缶詰だった。
そうなれば犯人の見当は付くと言うものだが、しかし、何故という疑問に答えは出ない。

あとは警察が現場検証をやることになったので、俺たちは退散することにした。
刑事はマディカンと言う強盗殺人課の警部補で、相方は只今胃潰瘍で入院中だそうだ。
この刑事と組むと胃がおかしくなるのかもしれない。

タナカサンとドロテのことが心配だが、今はなにも手掛かりがない。今は心配するだけで慌てずに待ちの時間だ。俺でもこういう時は、あたふたしないで心配でもじっとしていることが大切だと知っている。
俺はマディカンにヴェスパのところまで送ってもらい、いったん事務所に帰って、少し腹ごしらえをすることにした。腹が減っては・・・だ。

このところサンマばかりだったので、今日はサーディン缶を開けることにしよう。
パンの上に砕いた茹で卵とサーディン、パセリにマヨネーズ、それと少量のヨーグルトでカンタンなオープンサンドを作ろう。

そのとき、タナカサンのロールスロイスがどこにも無いことに気が付いた。
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おれはマディカンに黄色いロールスロイスを探すように手配を頼み、事務所までヴェスパを走らせた。

事務所に着いた。いつもの様に俺だけだ。
秘書がいれば少しは明るくなるのだろうが、誰かが留守をしているなんて・・・考えるだけでも嫌だ。それにどっちにしろ雇う余裕もないしな・・・・

今夜の夜食の缶詰を選ぶ。
たまにはフランス製のお洒落な缶詰を選ぼう。
オリーブオイル漬けのサーディンが美味そうだ。
先ずは茹で卵を作り、缶詰めを選ぶ。
茹で卵はカチカチに12分茹でる。6分とか9分とか半熟卵なんかは作らない。
何故かは判らないが、ハードにボイルするのが俺たちの仕事の伝統なんだから仕方がない。
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コンヌタブレのサーディンがお気に入りだ。
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開缶すると4匹の鰯がオリーブオイルのプールに浸かっている。
オイルのプールとは健康に良さそうだ。
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サーディンを皿に盛り、トマトをあしらう。
次に茹で卵を適当に崩して皿に盛る。
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冷蔵庫で干からびる寸前の緑系の野菜を発見したら、それも盛ってやる。
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マヨネーズ、レモン、ペッパー、ドレッシング、なんでも好きなものをかける。
その際、魚の匂い消しに大いに有効な醤油も2~3滴かけると良い。
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最後に缶に残っているオイルをかけてやる。何事も無駄は良くない。

今夜は白ワインくらいで止めておこう。
マディガンも今日は真夜中でもなにかあったらたたき起こすから酒を控えろと言っていた。
果たして明け方4:30に電話は鳴った。マディカンだった。
「おい、クリフハウスで見つかったぞ!」
岬でタナカサンの黄色いロールスロイスが見つかった。


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