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わがままじいさんの日記

日ごろの記録をなんでも書きます。

施政演説

2013-03-01 | 編集手帳

◆「損」を「益」に変えた人がいる。すご腕の社長ではない。江戸期の貝原益軒である。「損軒」と名乗っていたのを、「益軒」と改名した。

◆企業業績や家計簿の損(赤字)を益(黒字)に変える。民主党政権の稚拙な外交が残した“国損”を国益に改める。安倍内閣のする仕事とはつまりそういうことで、益軒先生と縁がなくのない。きのうの施政演説で首相はその人の挿話に触れた。

◆大切に育てていた牡丹を過って折ってしまった若者を、益軒は許す。「牡丹を植えたのは楽しむためで、怒るためではない」と。

◆われわれは何のために国会議員を志したのか。政局や足の引っ張り合いではなく、お互いに寛容の心で建設的な議論をし、結果を出すことが使命だ―と演説は説く。寛容の心。そう、野党に良識を問いながら自身を戒めてもいよう。支持率はいよいよ高く、内閣としても傲りの虫に用心していい頃合である。

◆益軒先生の語録より。<聖人を以てわが身を正し、聖人を以て人を正すべからず。凡人を以て人を許すべし、凡人を以てわが身を許すべからず>これもいい。

2013.3.1 編集手帳


豪雪

2013-02-28 | 編集手帳

川端康成の『雪国』で駒子が島村に言う。「そうよ。これから、地吹雪が一晩中荒れる時に、あんた一度、来れないでしょう。雉や兎が人家のなかへ逃げ込んで来るわ」

◆会話文のなかとはいえ、あの文豪も“ら抜き表現”(来れない)を使ったのですね・・という感想はさておくとして、豪雪である。小説は新潟県だが、八甲田山系の温泉地として知られる青森市・酸ケ湯(すかゆ)の雉や兎も人家に避難したい心境だろう。

◆一昨日の午前4時、現在ある気象庁の観測地点では過去最大の積雪566㌢を記録した。

◆道を歩いていた人が屋根に落ちて負傷した―式の話が豪雪地帯ではしばしば語られて旅人を驚かせるが、その積雪量ならば起きても不思議ではない。北国では雪も大切な観光資源で邪険にはできまいが、事故や災害にはどうか用心の怠りなきように。

◆<二月には / 土の中にあかりがともる>。石垣りんさんの詩『二月のあかり』の一節にある。明かりとりとは伊吹のことだろう。海外の、国内の出来事に心を凍らせた2月もきょうで終わる。雪の下の、土のなかにともった明かりが恋しい。 2013.2.28 編集手帳

 


作家の命日

2013-02-20 | 編集手帳

読売新聞に「編集手帳」というコラムが毎日、記載されています。

その中には「そうだな」とか「いや、違うかな」とか「関心の引く」問題提起があります。

そんな中に「おもしろい」こともあります。

作家の命日にちなんだものがあったので転載します。

◆作家の命日には人によって特別の呼び名がある。多くは筆名や代表作などにちなんだ命日で「桜桃忌」(太宰治)や「河童忌」(芥川龍之介)、「菜の花忌」(司馬遼太郎)などがよく知られている。

◆なかには背筋が冷たくなる呼び名もある。<胸底の枯野ひろがる虐殺忌>(角川春樹)。小林多喜二の命日を「虐殺忌」といい、単に「多喜二忌」ともいう。特高警察の拷問で虐殺されたのは80年前、1933年(昭和8年)のきょうである。29歳。

◆代表作「蟹工船」が5年前にブームを呼んだ。「おい、地獄さ行ぐんだで!」から始まる少しも古びていない文書に触れて、若いフアンも生まれただろう。

◆母セキが多喜二を偲んだ手書きの紙片が残っている。小学校にも通えなかった母は監獄の息子に手紙を書くために必死で文字を学んだという。新潮社『日本文学アルバム』から引く。<あーまたこの二月の月かきた ほんとうにこの二月とゆ月か(二月という月が)いやな月 こいをいパいに(声をいっぱいに)なきたい・・あーなみたかてる(涙が出る)めかねかくもる>

◆書き写していて、小欄の眼鏡も曇る。 (2013.2.20)