少し(だいぶ?)寄り道をしていましたがLove Situation完結編です。
Love Situation 6
高校時代はいつもイライラしていた。
授業にも
学校行事にも
課外活動にも
休み時間にも
ワイワイはしゃぐ声にも
盛り上がってキャッキャと騒いでいる声にも
何もかもがイライラして
ムカついて仕方がなかった。
ここのオフィスは高層階にあって
そこからは大きな空と、緑と、都会の街並みが見渡せる。
そしてオフィスの南側にある大きな窓の外には、広いテラスがあって
そこには小さいながらも様々な木々や花が植えられていて
季節ごとにその時その時の顔を見せる。
そしてそこに植えられている木々や草花は、こんな都会にありながらも
そしてこんなこんな高い場所にありながらも、
地面に植えられている木々と同じように紅葉したり花を咲かせていた。
とはいっても別に自然とか植物が好きだった訳ではない。
ただ就職してようやく仕事にも人間関係にもなれ、周りが見えるようになって
自然と外の風景まで感じられる余裕ができただけの事だ。
それをぼんやりとながめながら、高校の中庭にも
同じような草木や花々があったことをふと思い出す。
高校は第一希望の高校ではなかった。
だから入学してからずっと、不本意な結果をとなってしまった事に
ぶつけようのない苛立ちがあった。
そして、何より切り替えができず
いつまでもウジウジしている自分に一番ムカついていた。
だから大学ではこんな思いは二度としたくはないと
死ぬほど勉強をし希望の大学へと入り
そして必死に就職活動をし希望の会社へと入社した。
そして今。
ようやく仕事にも慣れてきて周りが見えるようになった時、
なぜか思い出すのはなぜかあの高校時代の事だった。
あの頃。
やることみることすべてがくだらないと思っていた。
今となっては高校生なのだしバカバカしいと笑えることが
あの時の自分にはそう思えなかった。
そう思える心の余裕がなかった。
周りのみんなが楽しく騒いでいる声にも
キャッキャいってふざけあっている事にも
無性にムカついていた。
そんな時、松潤と大野が付き合っているという噂が流れた。
本人たちにはそのつもりはないのかも知れないけど
二人がくっついていると周りがキャーキャー言う。
それなのに顔をわざと近くに寄せたり肩を抱きよせたりして
ますます女の子たちがキャーキャー言った。
それが無性にイライラして仕方がなかった。
そしてその怒りの矛先は自然と同じクラスの大野に向かった。
その顔を見るだけでもイライラして目が合えば睨み付ける。
気にしなければいいのだろうけどどうしても気になってしまうその存在。
今となっては逆恨みのようなものだけど
あの時は自分をイライラさせる大野の存在が許せなかった。
だから大野に拾ってもらったパスケースも
お礼もちゃんと言わず引ったくるようにして受け取った。
でも。
その日から。
大野と俺の間には見えない壁ができた。
もともと仲がいいというわけではなかったけど
それでも大野の態度が明らかに変わったのがわかった。
それまで何となく感じていた大野の視線はなくなり
自分の存在は空気のようになにもないものとしてあつかわれた。
そして。
そのまま一度も口をきくこともなく卒業した。
「何渋い顔してんの~」
「え?」
そんな時に受け取った同窓会のお知らせ。
「あ~私もあった。大学卒業して丁度落ち着いたころに来るんだよね~」
「そんなもんですか?」
遅くなってしまった社食を一人で食べていたら
丁度食べ終わってお盆を片付けていた青山さんが話しかけてきたので
同窓会のお知らせが来たことを話す。
「そうよ~中学とかだと成人式であったりするけど、高校はバラバラだから」
「あ~確かにそうですね」
「でも櫻井くんならモテて大変だったんじゃない?
いろいろ甘酸っぱい恋の思い出がたくさんあるでしょ?」
そういって懐かしそうに笑って言ってるけど、甘酸っぱいって…
「そんなのないですよ」
「そうお? でも高校時代って体育祭とか文化祭とか色々楽しい思い出が盛り沢山でしょ」
「あ~まあそうですね」
そう言って、青山さんに合わせるように答えたけど
本当は文化祭にも体育祭にも楽しい思い出なんて一つもなかった。
「あの頃ってくだらない事でもバカみたいに夢中になっちゃうんだよね。
手間暇惜しまず夜も寝ないで凄い労力つかったりして~」
「そうですよね」
確かに周りは文化祭ともなると連日大盛りあがりだった。
毎日どこからともなく段ボールを運んできては大作を作りあげ
ペンキを使っては他のクラスや部活には負けじと
趣向を凝らしたものを演出したりしていた。
でも内申が上がるわけでも成績が良くなるわけでもない。
そんな風にみんなが盛り上がっているのを
ただ冷めた目で見ていただけだった。
そんな思い入れも思い出もない文化祭だったけど
ただ一つだけ、大野のダンスが凄いと学校中で噂になった事をなぜか覚えていた。
それはもともと目立つのが嫌いなタイプで出る事を嫌がっていた大野の
そのダンスパフォーマンスが、凄いレベルの高さだったため
しばらくその話題でもちきりだったからだ。
見た人たちはみな天才だ神だと盛り上がっていたが
実際は教室で一人遅くまで練習しているのを知っていた。
確かに生まれ持ったダンスの才能はあっただろう。
でもそれ以上に練習をしているのを、
同じようにいつも一人、残って図書室で勉強していたから知っていた。
でもあの時はなんでただの高校の文化祭にこんなにも一生懸命に
なれるのだろうと不思議で仕方なかった。
「悩んでいるなら行ってみたら? 意外と思わぬ収穫があるかもよ」
そんな事をふと思い出していたら
青山さんはそう言ってふふっと笑った。
思わぬ収穫がある。
そんな言葉を信じた訳ではないけど
なぜか俺は何の思い入れも思い出もない高校の同窓会へと足を運んでいた。
色々な人から話かけられながらもずんずんと会場に入っていくと
一際目立つ集団が目に入った。
そのなかでも特に目立つその存在。
松潤だ。
松潤はその容姿からスカウトの話が来て
モデルとなったらしいという噂をきいたことがあった。
そのせいかその場所だけ何だかキラキラしていて空気が違って見える。
そして。
その松潤の隣にはあの時と同じように大野がいた。
そしてあの時と同じように松潤に肩を抱かれていた。
その姿を見て、また、ムカついた。
ずっと忘れていたこの感情。
もう何年もたってるというのに、なぜかまたその二人の姿を見て、ムカつく。
そしてその事に自分自身が一番驚く。
視線を感じたのか大野こちらを見る。
視線が合った。
でも。
その視線は一瞬にして外された。
あのときと同じ。
そしてあの時と同じように胸がちくっと傷んだ。
あの時自分自身でそう仕向け、そしてお互い空気のような存在となり
そしてその状態に清々していたはずなのに。
それなのに。
なぜだか泣きそうだった。
もう何年もたっていて忘れていたはずなのに
あの時と同じように
やっぱり泣きそうな気分だった。
そして今。
俺は大野が働いているというバーの扉の前に立っている。
自分でもなぜここにいるのかわからない。
高校時代全く話もせずお互い空気のような存在で
そして同窓会で話さえ、いや視線さえも合わない状態だったのに。
それなのに今、大野が働いているという場所を聞きつけここにいる。
心臓はばくばく言っている。
緊張して顔はこわばり手は震えている。
その震えている手を見ながら一体何をしているのだろうと自分自身に笑う。
そして一体自分は何をしたいのだろうとも思った。
そんな事を考えながらその扉をあけると、扉についている鐘がカランコロンとなって
カウンターの中にいた大野がそれに気づいてこちらをみた。
そしてすぐに俺だと気付くと驚いて目を大きく開く。
でもすぐに何もなかったようにバーテンダーとしての顔になり振る舞う。
だから俺もただの客としてその中に入っていく。
そしてカウンターの一番奥の席に座った。
店の中には数人の客がいて
落ち付いた店内には静かな音楽が流れている。
雰囲気がいい店だなと思った。
「何にいたしますか」
大野が何事もなかったかのように。
そして俺という存在をまるで意識してないかのように聞く。
だから俺もただの客として振る舞う。
そして注文をするとその手から自分の為に作られるカクテルの出来上がる様子を見ていた。
「どうぞ」
そういってその差し出された綺麗な手。
その差し出された手にあの時、ひったくる様にして
受け取ったパスケースの記憶が蘇る。
そしてそれからもずっと自分たちの間には何もなかった。
ただのバーテンダーと客でそれ以上でもそれ以下でもなく
事務的な会話以外、何も話さない。
高校時代もそうだった。
そう、自分がしむけた。
それなのに俺はなぜかここにくる。
そして大野の作ってくれたカクテルを見つめながら
自分は何をしているのだろうと思う。
事務的な会話だけで何もない。
ただの同級生でそれ以上でもそれ以下でもない。
それでも、
仕事が終わるとここに通った。
この日は土砂降りのせいか店内には珍しく自分以外に客はいなかった。
静かに音楽だけが流れている。
そしていつもと同じように自分の頼んだものを大野が作ってくれるのを見つめる。
そして出来上がると綺麗な手が伸びてきて
そして
どうぞ、とカクテルが差し出される。
はずだった。
「もうこれでここに来るのは最後にしてください」
「え…」
でも、違った。
大野が静かにそう言った。
確かに自分がここに来るたびに大野が微妙な表情になるのを知っていた。
そして二人の間には何とも言えない空気が流れていることも知っていた。
でも。
「…他にもたくさんあるでしょう? なぜわざわざここにくるの?」
確かに同じようなバーは数え切れないほどある。
それでも。
自分でもわからない。
「ごめん、迷惑だったら来る頻度を減らすから…」
高校時代はムカついてずっと睨んでいて
そしてお互い空気のような存在となって清々していた。
でも。
ずっと気になっていた。
気になる存在だったから
だから松潤と二人でいる姿にムカついた。
だから二人がくっついているのを見て周りがキャーキャー言う事にいらついた。
だから松潤とキスをしている姿に衝撃を受けた。
だからいつも気になってその場所を通るたびに見ていた。
だからいつも見ていた木々や草花を覚えていた。
だから何の思いれもない高校の同窓会に出席した。
だから必死にこの場所を突き止め
そして、ここに通った。
でもその言葉に、大野は真っ直ぐな眼差しを向け
そして静かに首を横に振った。
それは、明らかな拒絶だった。
おまけ。
すごーくすごーく前に書いたVSの話が下書きに残っていたのでそれをアップです。
が、いつのVSだったかよくわかりません。それでもよければ↓ すみません💦
VS嵐
『大野さんの事を凄いお褒めになっていた』
その言葉にその人は意外そうな表情を浮かべた。
『カッコいいでしょ天才でしょあの人って』
そして。
凄く嬉しそうに見つめたかと思うと
そのまま、抱きついた。
「あ、落ち込んでる人がいる」
「……」
楽屋で一人でいたら、ニノがそう言って入ってきた。
「ふふっまあ大野さんの事だとは思いますけどね」
「……」
そして嬉しそうにそう言った。
「だったら気にする事はありませんよ」
「……え?」
だから何も言えず見つめていたら
なぜか気にすることはないと言う。
「あれはね、意外な条件が重なったせいです」
「意外な 条件?」
「そ」
「どういう事?」
そう言ってニノは笑ってるけど意味わかんない。
「まずね、意外な人からの情報であったという事」
「まあ」
確かに意外な人からの情報ではあったけど…
「そしてその話の内容が意外な内容であったという事」
そしてまさかあの状況から、そんな話が出るとは思わなかったけど。
「そして、その話が3年も前の話であったという事」
「……」
「そしてそれを言ったのが松本さんであったという事」
「何だよーやっぱ、それが大きいんじゃん。俺だっていつも言ってるのに~」
でもそれなのにあんな嬉しそうな顔して、抱きついて。
「何でかなあの人ってあんなにかっこよくて天才なのに
昔から自己評価が低くて自信がないんですよね。
だから俺らがもっとたくさん褒めてあげればいいんだろうけどしないでしょ?」
「わかってるなら、もっとほめてあげればいいでしょ~」
「嫌です」
「何でぇ?」
「調子に乗りそうだからです」
「ひでええ」
「でもだからこそ翔さんの存在は貴重なんです」
そう言ってニノはおかしそうに笑っているけど
やっぱりあんな顔をさせる松潤が羨ましくてちょっとだけ妬ましく感じた。
「でもあれってハグなのかな?」
そんな事を思っていたらニノがぼそっと小さくつぶやいた。
「いやどう見てもハグでしょ?」
「ま、いいや」
「え~何だよ?どういう意味よ?」
意味わかんない。あれがハグじゃなかったら何なわけ?
「まぁ、オンエアで見たら翔さんの気持ちも変わるかもよ?」
オンエアで見たら変わる?
やっぱり意味わかんない。
そう思いながらもオンエア後、気になって録画してあるものを見ると
そこにはやっぱり嬉しそうな顔をしている智くんの姿が映し出されていた。
で、このまま大野さんが抱きつきに行って…
あれ?
確かに何か違う?
そう思いながら巻き戻しもう一度同じ場面を見る。
何というか身体と顔の向きがあっていないというか。
身体だけは寄せていってるけど顔は別の方向に行ってて
何だか不思議な体勢というか。
「……」
そんな事を思いながら繰り返し見ていたら
お風呂に入っていた智くんが頭をふきながら出てきた。
だから確かめるように立ち上がって智くんに向かっておいでという風に手を広げる。
智くんは不思議そうな顔をしながらも
素直に手の中に納まるようにすっぽりと入ってきた。
目の前には大野さんの洗ったばかりの髪の毛があって
いつものシャンプーのにおいがする。
その頭に手をのせ、やっぱ俺の時はこうだよね?と、思いながら
口元が自然と緩む。
智くんは何だろうと不思議そうに顔を上げる。
だから何でもないよと言ってその身体をぎゅっと抱きしめて
そしてその唇にちゅっとキスをした。