過去をふりかえり、未来へ

思い出せるだけのことを思い出し、書き綴る場所

『SPIRIT』

2006-03-30 21:29:00 | Weblog
本日見てきました。

感想は、ただただ・゜・(ノД`;)・゜・

格闘家の主人公フォ・ユァンジャ(ジェット・リー)が
辛い経験を通じ、本当の「強さ」とは何かを知ることが、
この映画のテーマだったと思います。

その象徴的なシーンが、クライマックスとなる大会前の
日本人格闘家田中(中村獅童)との邂逅でした。

日本の銘茶を勧める田中に対して、ユァンジャは
「茶には優劣などない」と語る。彼によれば、それは
多彩な分野にわたる武術も同様だという。

そんな彼に田中は「ではなぜ武術家は勝敗を競うのか」を問います。
ユァンジャは「それは武術の優劣を競うのではなく、
己の技量の熟練度を確認するためのもの」と語ります。

これには劇中の田中同様、深く納得させられました。

さて、ジェット・リー
多くを語らずとも、表情で表現してくれるすばらしい俳優さんです。
有名な人だったのに、これまで全く知らなかった
自分の不明を恥じるばかり。

『巨人軍論』

2006-03-23 23:00:00 | Weblog
野村克也『巨人軍論』(2006年、角川書店)
やはり今回仙台往復中に新幹線中で読んだ本です。

今年から楽天監督に就任した野村氏が巨人軍を主題にして
組織と伝統について論じています。

野村氏といえば、選手、監督として超一流の実績を
残しつつも、本人が「月見草」と自称するように、常に
巨人という存在の脇役に追いやられていたことを
コンプレックスとしていた人物。

マスコミを通じて出てくる彼の言葉は、そういった側面が
誇大化された印象を受けてましたが、本書において野村氏は
コンプレックスの源となった巨人という存在
(ここではV9時代の川上政権)を積極的に評価するところから
始めています。
6章構成のなかの1~4章がそれで、残りの5、6章では
野村氏独自の組織論、伝統論が論じられていました。

印象に残る記述
・川上哲治の言葉の引用から
 「人間はつい自分ひとりで生きていると錯覚しがちだが、
  現実はそうではない。他人からの恩恵をさまざまな
  かたちで受けている。野球選手も同じである。成績を
  挙げるためには、いつもほかのチームメイトの協力が
  なければいけない。満塁ホームランはランナーが三人
  いるから生まれる。完封勝利はエラーをしなかった野手が
  いてはじめて実現する。自分が打った、投げた、という
  だけではいけないのだ。」(P135)
⇒エラーする野手がいても完封はできると思うけど、
満塁ホームラン云々はなんか納得させられます。

あと、阪神での監督の失敗を野村氏なりに分析し、反省する
記述もあり、それが楽天(当時の阪神以上に惨々たるチーム状況)で
どのように生かされるか興味深いところです。

『レベル7』

2006-03-22 23:00:00 | Weblog
昨日までの仙台への往復で、宮部みゆき『レベル7』
読了しましたので、その感想です。

今回の作品では、科学的裏付けこそ行われていますが、
人間を故意に記憶喪失にしてしまう、というような
現実離れした設定はよく見られる宮部みゆき独特の手法です。

さて、この物語。中心人物となる男女に最初、名前がありません。
しかも彼ら自身が自分がどうしてこの場所にいるのか、といった
基本的なことすら全く分からない。
しばらくは彼らが不安感の中、自分自身のことを探っていく
記述が続きまして、読んでいるこちらの方も居心地の悪さを感じ、
場面をなんとか把握しようと、戻っては進み、
ということの繰り返しでした。
物語は途中から都合よく進んでしまう感じですが、まさにこの前半の
薄気味悪さに物語の魅力があります。

物語と関係ありませんが印象に残った記述
・興信所の蓮見加代子(この作品中ではチョイキャラ扱い)が
 本人への身上調査は断る理由について語る場面
 
 「客観的な答えがほしい。そう言いますよね。でも一人の
  生きている人が『どんな人間であるか』なんていう質問に対して、
  客観的な答えがあるでしょうか。
  一週間前には夫婦喧嘩をした。だからといって夫婦仲が悪いとは
  決め付けられないでしょ?いえ、喧嘩ばっかりしてるけど、
  本当は仲のいいご夫婦だっているはずです。
  たとえば近所の人たちに聞き込みをするとしますね?
  結果は見事なまでにバラバラです。ご主人の浮気に悩まされている
  女性にきけば、その人は、隣のご主人も浮気してるみたいですよ、
  と答えます。父親と子供がうまくいかなくて悩んでいる人は、
  隣の家のお子さんも反抗的ですからねって言います。
  これ、本当なんです。
  結局、みんな、自分の目を通してだけ見てるんですから、
  そうなって当然なんですよ。」
  
 つまり、『自分はどういう人間か』って聞くことは、
 逆に答えから相手の人間性を知る手がかりになる、ってことなんですね。
 なんとなく納得。

次は同じく宮部みゆき『理由』、直木賞受賞作品です。

横浜帰還と『国宝 天寿国繍帳と聖徳太子像』

2006-03-21 20:28:00 | Weblog
大体午後4時過ぎに到着しました。

仙台を8時半ごろ出て、そのまま11時前に上野着。
本当は鹿島神宮とかに立ち寄ってみようかとも思いましたが、
強風のためか常磐線が予定通りに運行していなかったので断念。
でもそのまま帰るのも味気ないので、行ったことのなかった
東京国立博物館、法隆寺宝物館へ
3月14日~4月9日まで開催予定の『国宝 天寿国繍帳と聖徳太子像』展示を
見るためです。

まず、法隆寺宝物館について
案内によると、ここに収蔵されている宝物は、
明治11年(1878)に法隆寺から皇室に献納され、戦後、国に移管された
319件の作品で構成されているそうです。
で、今回の特別展では、常設展示プラス、奈良、中宮寺所蔵の
『国宝、天寿国繍帳』と法隆寺所蔵の『重文、聖徳太子像』
そして館所蔵の『国宝、聖徳太子絵伝』が特に注目の
展示として紹介されていました。

印象に残ったこととしては

・7~8世紀作成の仏像の表情、体型は案外ユニークたった。
 (頭が大きい、手が長い、いろんな顔がある)

・『聖徳太子絵伝』について、
 ⇒案内によると、延久元年(1069)の作品です。
 (この年は上記の円快作『重文、聖徳太子像』が作られた
 年でもありましたので、聖徳太子への信仰の高まりが
 あったのでしょうか?)
 同じ構図の中に異なる時期の異なる出来事が描かれている
 点が興味深いです。

・『絵伝』の案内プリントについて
 ⇒場面ごとの聖徳太子の年齢と、具体的な紹介が載っていて
  便利でした。しかしよく見ると私が記憶する年代と
  2年ずつずれるような・・・・
  例:33歳 17条憲法を制定する(31歳だったはず)
  全体的にそんな感じなので、典拠を聞くと『聖徳太子伝暦』という
  史料とのこと。初めて知りました。
  『国史大辞典』によると10世紀ごろ成立の史料だそうで
  伝承を物語化した傾向が強い、とのことで、こちらが
  採用する生年だと西暦572生まれ。ただし、実際には
  『日本書紀』をはじめとする各種史料で西暦574年生まれ
  と推定されてますので、それで2年ずれたわけです。
  
それにしても東京、暖かかった(暑かった)です。
仙台では普通に着ていたコートを脱がねば行動
できないほどでした。

その影響からか、NHKの7時のニュースによると、
本日、昨年より7日早く桜が開花したとのこと。
(靖国神社の桜が目安になるとのことです)
気象予報士の半井さん、セーターをピンク系にしたのは
やっぱり狙ったのかなあ。

『龍は眠る』(ネタバレ)

2006-03-18 21:53:00 | Weblog
本日読了。

宮部みゆきミステリーの特徴である、特種能力者を扱ったお話です。
ハラハラドキドキ感を得ようとするお話というよりはむしろ、
登場する能力者が、自身の能力についてどのように悩み、
自分なりの解決方法を導いていくか、そして周囲の
人々とどのように接していくか、が物語のテーマだと考えます。
主題の扱い方は、私が前に読んだ「クロスファイア」とそっくりです。

ただし「クロスファイア」の場合、能力者である青木淳子の
結末は悲しいものでしたが、「龍は眠る」の織田直也は、
死を賭した結果、同じく人や物の真実が読めてしまう能力に
苦しむ後輩の稲村慎司を導き、周囲の人々を助けることができた
点で救われる物語でした。

さて、登場人物の村田が主人公の記者高坂に伝えた言葉より

「ときどき思うんですがね・・・・・。ことによると、我々は
本当に、自分の中に一頭の龍を飼っているのかもしれません。
底知れない力を秘めた、不可思議な姿の龍をね。それは眠って
いたり、起きていたり、暴れていたり、病んでいたりする」
(中略)
「我々にできることは、その龍を信じて、願うことぐらいじゃ
ないですかね。どうか私を守ってください。正しく生き延びる
ことができるように。この身に恐ろしい災いがふりかかって
きませんように、と。そして、ひとたびその龍が動きだした
なら、あとは振り落とされないようにしがみついているのが
精一杯で、乗りこなすことなど所詮不可能なのかもしれない。
なるようにしかならんのです。」(p428)

ここに特種能力に対する作者の解釈が表れておりまして、
他の特種能力を扱う物語でもこの視点は共通しています。
フロイトの精神分析学風にいうと、この物語における「龍」とは
イドのことを指すのでしょうね。



『MUNICH』

2006-03-10 23:00:00 | Weblog
水曜日(8日)、横浜相鉄にて見てきました。
表題は邦訳「ミュンヘン」
監督はスティーブン、スピルバーグ

1972年9月5日、パレスチナゲリラ「ブラックセプテンバー
(黒い9月)」が、イスラエルのオリンピック選手・コーチを
人質にとり、暗殺した実際の事件に対して、その後のイスラエル側の
報復(モサド:イスラエルの諜報機関:によるテロ首謀者11人の暗殺)の
様子を描いたものです。

参考⇒ttp://www.geocities.com/inazuma_jp/munhen.html


感想は…凄惨の一言に尽きます。

主人公アヴナー(エリック=バナ)はモサドのメンバーと
して、指令のもと、仲間とともにゲリラ首謀者暗殺を行って
いきますが、そのシーンのひとつひとつ(爆破、銃撃戦)の
描写が生々しい。全体的に暗い画面で、映像もクリアーでは
ありませんが、それが返って雰囲気を重くしています。

ストーリー的にも見るべきところがいくつかありました。
(以降ネタバレあり)
・主人公アヴナーと仲間の任務に対する葛藤
 ⇒終盤に差し掛かってきたときに仲間の1人は思いを口に
  します。
   首謀者11人を葬ることができても、結局その後を
  引き継ぐものがある限り、任務は終わったといえるのか?
 アヴナーはその問いかけに対し、殺し続けるだけ、と
 答えたと思いますが、そう語る彼の表情、口ぶりに、
 そうすることの虚しさが漂っていました。
・アヴナーと家族
 ⇒彼は任務のために置き去りにせざるを得なかった
  妻と娘(任務中に誕生)を本当に愛しています。
  任務をひと段落させて家族と邂逅を果たしますが、
  そんな彼の周辺には彼を狙う影が・・・家族を思い、
  彼は影に苦しみ、苛立ちを表に出します。守るべきもの
  を背負った人間の弱さを感じるとともに、そのことが
  人間を人間たらしめるのかなあ、と考えたりしました。
・情報屋
 ⇒アヴナーは任務遂行のためにフランス人の情報屋ルイ、
  そしてその背後にいるパパからターゲットに関する
  情報を得ます。パパ曰く「我々は情報を売っている、
  だが政府と仕事はしない、覚えておけ」アヴナーは
  律儀にその存在を上司の尋問からもひた隠しにします。
  しかし情報屋は商売のために、敵方にアヴナー達に
  関しての情報も売っていました。いわば敵味方分隔て
  なく武器を売る戦争商人のように。
  パパはアヴナーに対して「我々から(君を狙うことは
  しない」とまでも言っています。見てた当初はあまり
  気にしていませんでしたが、彼らに焦点をあてて、
  様々なシーンを見返してみると新たな発見があるかも・
  そして実世界においてもこういった存在がどれだけ
  暗躍していることか・・・・

繰り返しますが、実話をベースにしている話であり、本当に
重い話です、つくづく自分が平和な社会に生きていることを
痛感させられます。それだけになんの背景知識もないまま
1回映画を見ただけでは把握し切れない点がいろいろ出て
きますが、少なくとも興味ある人にはお勧めできる映画です。

それにしてもスピルバーグ、改めて魂のある作り手です。


『博士の愛した数式』

2006-03-01 23:50:00 | Weblog
本日、18:45~渋谷東急クロスタワーにて見てきました。
映画の日という事もあり、混んでるかなあと思いきや、
恵みの雨?もあり、幸いそれなりに座席が残ってました。

映画は原作にはない、教師となったルート(吉岡秀隆)が
冒頭から登場し、教壇から生徒に対して、自分がなぜルートと
呼ばれるようになったか、自分の子供時代と博士(寺尾總)について
語っていく、といった形で物語が展開していきました。

原作と違う点は、上記の教師ルートと、設定が1985年であること、
だからといって阪神のペナントについては全く触れられないこと、
などが 挙げられます。

しかしながら原作の魅力である、博士の数学に対する愛情、そして
家政婦(深津絵里)やルートなどとのふれあいなどについては充分
生きており、楽しめました。その他が原作のイメージぴったりの
義姉(浅岡ルリ子)、少年野球の背番号ルートなどの工夫は
なかなか見所でありました。

感動感動!というような映画ではなく、あくまでしみじみとした
作品ですが、見て損はしません。5点満点なら4点はつけます。