chaos in hollow

雑多なものの感想

残り全部バケーション/伊坂幸太郎

2016-04-25 13:32:25 | 
評価:D+

久しぶりの伊坂。
軽い内容ですらすらと読めた。
相変わらず、破天荒な登場人物と軽妙な会話を書かせたら巧いのだが、それだけ。
自分の読解力の無さが良くないのがいけないのだが、各章の繋がりがよく分からず。。初出の雑誌も出した年も全然異なっているので、各章はほとんど独立していると考えてよいのか。理解に苦しむ。
基本的には娯楽小説で、内容が無いに等しい・・毒にも薬にもならない。
それにしても、『残り全部バケーション』という表題の元となった作中のやり取りもあまり印象には残らず。総じて何が書きたいか分からない作品であった。



犬憑きさん(上)(下)/唐辺葉介

2016-04-18 19:56:08 | 日記
評価:D+
雑感:何というかこの作品に至っては特に書くことがほとんどない。つまらなくはないが、薄いのだ。
小説版CARNIVALを除いた、瀬戸口廉也=唐辺葉介、の作品を網羅した訳だが、瀬戸口作品への高評価は感性の鋭かった7年程前にプレイしたための過大評価であったのか。唐辺作品に見るべきものは特にない。繰り返すが、つまらなくはないのだが。エッセンスと呼べるものはPC作品に詰まっているし、それらもやはり、絵と声で評価を上乗せしてしまっている面は否めないのか・

これを機に、他の18禁ゲーム出身ライターの文庫本に手を出すかは不明。入院生活のおかげで紙媒体の活字に多少は戻ってきたが、そうなると、溜めてしまった伊坂幸太郎や高村薫の作品が気になってくる。
そして、18禁ゲームも溜まっている。

このブログは、小説、ゲーム、音楽、映画、何でもありのブログにしようかとも思っていたが、それも再考中。
退院したら、それどころじゃなくなるのか。それも分からない。

死体泥棒/唐辺葉介

2016-04-14 16:50:11 | 日記
星海社から出ている書き下ろしの恋愛小説。
恋愛小説と銘打っているのだが、個人的にはその要素はあまり感じなかった。というより、それにしたら描写が浅いように思う。

テーマが何なのか、登場人物の台詞にそれを匂わせる部分はあるのだが、判然とはしない。
一つ、気づいたことと言えば、作中にも「ソクラテス式問答法」と出てきているように、筆者は主人公と登場人物を対置させ語るのが上手いということ。
主人公には何らかの主張や信念ーそうまで行かなくても人生観のようなもの、があるのだが、それを特徴ある人物との会話によって深めていっている。この作品では大前という人物がそれを担当しているように感じる。
そして、この手法は、『SWAN SONG』等でも顕著であった。

ただ、『SWAN SONG』が群像劇の色彩が強かったのに対して、本作ではあくまでもメインの主人公は一人なので、他の登場人物はただの道具にすぎなくなっている。つまるところ、分量の関係もあり、対置される登場人物の造詣が浅い。
これはシナリオノベルと比較すると致命的な欠陥となっているように思われる。そしてそれはこの作品に限らず、紙媒体の作品全てにおいてである。

・・・とまあ、氏の18禁ゲームへの復帰を願う自分はどうしてもあら探しのような批評をしてしまうのであった。
ここまで5作読んだが、大体、どの作品にも死の存在が色濃く出ていて、筆者はそれと懸命に向き合っているし設定も面白いのだが、重厚さで言えば、どれもゲームに及ばない。
他の18禁出身のライターの著作では、登場人物の描写の相対的浅さ、これをどこまで克服しているのかが気になるのであった。


つめたいオゾン/唐辺葉介

2016-04-08 19:38:30 | 日記
評価:C-

(以下、どうでもいい前置き)
ある著者の作品は正しく批評するためには、その著者の作品を時系列順に読む方が望ましい。
というのも、著者の文章表現やテーマ設定並びに物語の構成の変化や上達が明確に分かるからである。
唐辺葉介、瀬戸口氏の作品においてはそれをしていない。

だが、小説に移行したのはPCゲームの後であるのは間違いないから、ゲームと比較するのは間違ってはいないだろう。
媒体は違えど。

瀬戸口氏の作品には通奏低音として、人間の内面にある
空洞とそれへの抵抗ー人間性の発露、があると前に書いた。
それは実存主義的であり、作品が絶望的に展開していくなかでも最終的には読み手に幾ばくかの希望を与えるものであった。
しかし、小説に移行して以後はその傾向は薄れてしまったように感じる。一言で言うと、耽美的になりすぎているのだ。
『電気サーカス』においては、生々しい人間性の描写が見られた。だが、この作品においては、二人の主人公が綺麗に描かれ過ぎている。歴代の主人公と比較しても、魅力的に映らない。
架空の病ー一種の思考実験、に話の主眼を置きすぎているのだと思う。そして、それは著者の物語の持つ魅力ではない。少なくとも私はそう感じる。
この程度の設定でこの程度の物語の展開なら、職業作家ならさして難しいものではない。繰り返し言うと、そこに作者の持つ魅力はない。

まあ、それでも、最低ラインは超えてるし、抵抗なく読める。ので、この評価。
やはり、形はどうあれ、18禁作品に戻ってきてほしいのであった。その方が、人間性を濃密に描写出来る著者には合っている。





ドッペルゲンガーの恋人/唐辺葉介

2016-04-06 20:14:26 | 日記
評価:C-

感想用のメモを紛失してしまったのだが、この作品は何を伝えたいのか理解に苦しむ。
設定からSFとしてはライトSFとしても中途半端で、恋愛小説としても薄っぺらい。
というのも、主人公を含めた登場人物全員の描写が浅く、感情移入出来ないからだ。今までの作品の根底に流れていたテーマ性も読み取れない。

まあ、そもそも薄く分量の少ない本なのである種の実験的な作品なのかもしれないが。。
読ませる力は健在なのでこの評価。