茶飲みばなし2

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光る君へ第28回「一定二后」を見る

2024-07-24 15:22:40 | 大河

道長の「一帝二后」作戦の回でした。
行成が説くように「出家した定子では中宮の神事ができない」のは問題だし、
といって、后は定子一人という帝の意志が変わらなければ、どうにもなりません。
しかし、それが近年の災厄の原因ならば、帝も「一帝二后」をむげに否定できません。

この間、帝が彰子に笛を聞かせ、中宮になりたいかと尋ねたのも上手い作劇で、
「笛は聴くもので見るものでない」からは、
彰子が深く考えるゆえに言葉が出ないことが見えます。
ならば「おおせのままに」の連続も、愚かさゆえではないのでしょう。
「少しかわいそう」
帝の心が動きました。

「一帝二后」を決意した帝の背中を押したのが最愛の定子というのも上手く、
定子の聡明さと政治的センスをうかがい知ることができます。
このあたりも、ドラマの軸としてまひろとききょうを対比する中で、
道長と定子を絶対善として描きぬくという強い意志が見えました。

なんとか彰子中宮を実現したものの、心労からか道長が倒れます。
行成の前で予兆があり、明子の屋敷で寝込み、
まひろの念が目覚めさせたというのも、道長の内心の何かを表しているようです。
一家総出で出迎える倫子の気持ちもわかりますが、かえって息苦しさも感じます。

というあたりで十分に満腹だったのに、
ドラマは定子の最期、というよりも定子と清少納言との別れを描きます。
麦の青ざしと「君ぞしりける」の歌、つい唱和する「いつもいつも」の記憶、
枕草子の一場面を原作として、なんとも美しく切ない場面を2.5次元化してくれました。

定子の覚悟は、秘かに遺されていた歌からも感じることができました。
(無事だったときにはこっそり回収するとしても)
やはり出産は死と背中合わせの大きな仕事でありました。
そして、聖なる存在ゆえに死から遠ざけられた帝にとっては、
あの歌が定子の唯一の手掛かりとなったのでしょう。

というわけで、今回の秀逸は、
愛していたつもりの帝の「好きなもの」に心当たりのない詮子の支配的な子育てでも、
「父が死に、母が死に」と告白する定子で思い出した(伊周からみれば)「妹」でも、
実資の説明セリフに強烈な説得力となごみを発生させる道綱の「だよね」でも、

何も言わずに「子ができた」と報告する宣孝の大人の交渉術でも、
「あれ、宣孝は長期出張中だったはずじゃないか」と気づく道長の心当たりでも、
オープニングの「光る君へ」のタイトルに重なるまひろの表情が、
「え、道長の子を妊娠したの? やべぇ」に見えたことでも、

疫病の時に道長が徹夜でまひろに呼びかけた「逝くな」に呼応するような、
危篤と聞いたまひろから発せられた「逝かないで」返しでもなく、
確実に明子には「まひろ」と聞こえていたことを思うと、
「これが倫子の前だったら」と恐ろしくなる、という色恋沙汰で回っていく平安の歴史。


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